
満月が太平洋に浮かぶのを背に
浜辺で神楽を演じるという。
突如思い立って出かける。
オレンジ色の月の光が波の水面に一筋の道を描く。
奏でられる篳篥、鉦、笛、太鼓の音色。
ひんがしの海原、月に照らされみちびく極楽への道。
音色にのせて波間にキラキラと揺らめくオレンジの光、御霊がたのしげに、
踊りながら笑いながら駆けまわりながらスキップしながら
あちらに向かって歩みを進めていくようで。
あちらの世界に向かう魂をお見送りしているようで、
あぁ、どうか。
手を合わせる。
涙が溢れてとまらない。
神楽の音が消え、気がつくと月は高くのぼり、光の道は波間に消えた。
九十九里の猛々しい波音が戻ってきた。