きりのみやこ

ソプラノ歌手「みやこ」の音楽する日々

声のトーン

2009年06月11日 | 音楽のこと
先日、アイルランドの子守歌を聞いていて、こういう節があった

'My Mother sang a song to me
In tones so sweet and low. '
「母がこの歌を歌ってくれた
優しく低い声で。」

そういえば、私が良くコンサートで歌う「アニーローリー」にもこういう節がある。

'Her voice is soft and low'
「彼女の声は柔らかく低い。」

わざと直訳して「低い」と上記したが、翻訳に違和感を覚える人は多いだろう。

もし日本で母が歌を歌ってくれたら、その声をどう形容するだろう?
恋人の美しい声を文字にあらわすとしたら?

きっと、「高くて美しい声」とか、「透き通るような声」などだろうか?

ここには興味深い日英(あるいは日本とアイルランド)の、声のトーンに関する意識の違いが感じられる。

日本語では、丁寧に、優しく語りかけるときは声のトーンを上げる。
英国やアイルランドでは、特に正式の場などでは、逆に声のトーンを下げるのである。

いい例が電話。
我々日本人は、普段話す声よりも「もしもし」の声のトーンを上げる。
逆に英国やアイルランドでは、’Hello' はずっと声のトーンを下げる。

京は日本語と英語、両方話すので、日本語は自然に声が高く、英語は自然に声が低くなる。

文化の違いは、歌の歌詞にまで反映するのだから奥が深い。

そういえば、いつも歌いながら、これは絶対に西洋人には理解されないだろうなと思う節がある。

「中国地方の子守歌」の中で、母が子に、お宮参りで何を拝もうかと思案し、
"一生この子のまめなように”
と、歌う。

自分の子が「働き者」に育って欲しいと願う感覚は、日本ならではのものだな、と思う。