きりのみやこ

ソプラノ歌手「みやこ」の音楽する日々

シューベルト

2012年03月27日 | 音楽のこと
実は私、シューベルトはあまり好きではない、とずっと思ってきた。
シューマン、ショスタコーヴィッチ、シェーンベルグなど、「シュ」がつく音楽家は全部好みじゃない、なんて公言していた事もあったほど(笑)。

歌手として、シューベルトとシューマンが好みじゃないって言うのもおかしいけれど、
実際、シューベルトは有名曲(野ばら、ます、など。)数曲、
シューマンに至っては、一曲しかレパートリーがない。。。

何だこの曲、さえないなー
と、思うとシューベルトの作品だったりして、何でこのシューベルトという人は、歴史に残っているんだろう?くらいに思っていた。

それを覆す演奏に、出会った。
テレビで放映された、ポール・ルイス日本公演。
イギリス人である彼は、12歳でピアノを始め、20歳のときに巨匠アルフレッド・ブレンデル氏の目に留まり、直接手ほどきを受けたといい、シューベルトを得意とするピアニスト。
私はイギリスに住んでいたので、名前や顔写真は見たことはあったけれど、コンサートに足を運んだ事はなかった。(ブレンデル氏の演奏会には何度行ったかわからないのに!!)
たぶんプログラムがシューベルトばっかりだったからだろう(苦笑)。

彼の演奏するシューベルトのなんとすばらしい事!!
何よりもまず、シューベルトの音楽に対する深い、本当に深い理解と、愛情を感じる。
「これこそがシューベルトの音、これこそがシューベルトの音楽」
といえるほどの説得力。

シューベルトの音楽が、地味で単調だと思っていた自分の浅はかさをとことん思い知らされた。

最近の風潮として、自分も含めて、どうしても派手なほうに走ってゆく傾向がある。
演奏家も、観客も、舞台は華々しく、きらびやかなものを求めるものと思って疑わず、
派手な音楽を「どうだ!」とばかりに演奏して、拍手喝采を浴びることを目指している。

でも、音楽は決してそんなものではない。
もっと人間とは何か、心とは何か、人生とは何かを追求した、時間の「芸術」だ。
そう、シューベルトと、ポール・ルイス氏に教えられた。