切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

《 ロシアによるウクライナへの侵略という暴挙 》 ⑪  2022.3.16

2022-03-16 23:52:35 | 社会
◆ プーチン大統領に勝ち目はあるのか・・・ジェノサイドは?



 ロシアがウクライナに侵略戦争を仕掛けてから3週間経った。国境沿いの中小都市ではかなり悲惨な状態になりつつあり、実質上壊滅した都市もあると報道されている。すでにそういったところでは「ジェノサイド」つまり一般市民皆殺し、という状況が発生しつつある。旧ソ連邦時代に西側諸国との抗争に備えて、各建物には地下シェルターがあるというのでそこに避難して、なんとか生き延びてる人もいると思われるが、それでも生きていくために必要な水と食料が決定的に不足しているという。

 同時にロシア軍にとって最大の目標地である首都キエフに対して、主として3方向から陸軍部隊が10数㎞から20 km あたりにまで迫っている。しかしウクライナ軍の予想以上の反撃によって、ロシア軍もかなり損害を出し疲弊しつつあり、態勢の立て直しを余儀なくされている。このような状況になってくると、焦りの色を濃くしているプーチン大統領は首都に対して無差別攻撃を指示する可能性が大きくなってきていると思われる。
 つまり首都キエフの無差別全面攻撃であり、首都壊滅を狙うということだ。そこには軍人も民間人も関係がない。このような攻撃は首都に接近しつつある陸軍の戦車部隊だけではなく、遠く離れたロシア本国から中距離のミサイル攻撃をすれば、相当な破壊は可能だろう。その一方ロシアは経済的な脆弱さを持ち合わせており、近代的な最新兵器をそう簡単には使えないという弱点を持っている。そのために精度の低いミサイルで攻撃せざるを得ないという側面がある。



 となればプーチン大統領としては一刻も早く、ウクライナのゼレンスキー大統領が交渉の場でロシア側の要求を飲むように仕向けることが重要な課題となる。そのために有効なのが当然のことながら、「戦術核兵器」ということになる。所謂中距離射程の小型核兵器ミサイルであり、これをどのように使うかで動きも変わってくるかもしれない。欧米の研究所が予想しているのは、直接キエフに打ち込むのではなく、ロシアの沿岸地域の海上に発射してその爆破の威力を見せつけて脅す、というやり方が一つだ。もう一つは直接ウクライナの平原地帯に打ち込んで恐怖心を煽り、一気にウクライナを落とすというやり方だ。後者についてはその後のリスクも非常に大きく、事と次第によってはウクライナ以外の西ヨーロッパ諸国やロシア本国への放射能の影響も大きな可能性が出てくる。
 更にこのような方法を使うことによって、場合によってはロシアが取り返しのつかない立場に追い込まれることも十分に考え得る。すでに核ミサイルを使うか使わないか以前の問題として、ロシアそのものが今や「北朝鮮化」しつつあるという分析が、かなり浸透し始めている。北朝鮮は国交の面ではごくわずかの国しかなく、事実上1ヶ国で孤立無援に近い状態にある。一人の独裁者が国民の生活をないがしろにして、核兵器開発に莫大な資金を投入してアメリカを振り向かせようと懸命になっているのだ。ロシアそのものがこのような状態になるのではないかと予想する研究者は多い。

◆ その一方新たな動きも様々な場面で顕在化してきている。

 つい先日ロシア国営放送のニュース番組の中で、女性キャスターがニュース原稿を読み上げている時にその背後で、戦争反対ロシア国民は騙されている、と記された大きな紙を持った女性が画面に映り、彼女はそれを読み上げながら訴えた。しばらくして放送画面は他のものに切り替えられたが、 SNS で共有されあっという間に全世界に広がった。無論その女性は警察に拘束され罰金刑が言い渡されている。おそらくこの罰金だけでは済まないことになるだろうと思われる。それにしても極めて勇気のある行動であり、この放送局の場にいたメンバーたちは全員がこのことを承知の上で実行したものと考えられている。この行動は世界中で大きく賞賛されている。
 またロシア国内で侵略戦争反対の具体的な示威活動を行っている人々が、次々に拘束されその数は15000人に及ぶという。こうしてロシア国内での動きも、様々な方法で撮影され国外に流されている。



 西側諸国による経済制裁の影響が少しずつ表れており、スーパーなどから様々な商品が品切れ状態になりつつあることに、ロシア国民も異変を感じるケースが増えていると伝わる。このことが場合によっては大きなうねりとなり、プーチン大統領への圧力となって政権を崩壊させる動きにまでいたる可能性も、なきにしもあらずだ。現時点においてはあくまでもロシア政府発表で、プーチンの支持率は70%と言われているが、実際のところどうなんだろうかという感じがする。
 確かに年配者は旧ソ連時代の生活を懐かしみ、穏やかだったという思いからアメリカと対抗していた強いソ連というものへの郷愁があるのだろう。だがしかし、今や世界は大きく変わっている。特に中年層から若者にかけては、事の真実を少しずつ知る中でロシアという国がこのままであっていいのかどうか、考え始めてる人も恐らく多いのではないかと思われる。そういった意味ではロシアに対する経済制裁を、より一層強めることによって、国の経済が破綻するという事態にまで至る可能性が十分にあり、国民の間に様々な疑問が生まれ、それが政権への不信感となって高まっていくことになるだろう。



 周知の通り、ウクライナを攻めあぐねているロシアは、つまりプーチン大統領はシリアから傭兵を雇って戦場に投入することを始めている。怪我をしたらいくら、死亡したらいくら、とまるでアルバイト代のように価格を決めて雇っているのだ。シリアも非常に貧しい国であり、個々人については働く場もなかなかないような実態だから、多くの人々がこの戦争に参加してきている。
 同時にプーチン大統領は中国の習近平氏に対して、武器と食料の援助を申し出たと言う。この事実はロシアという国が、経済的に厳しい状態にあることを如実に示している。武器はもちろん最新鋭の戦闘機、ミサイルが中心となるだろうが、ロシアの最新鋭戦闘機は世界でも最高水準とも言われているにもかかわらず、中国に援助を仰ぐというのは、性能面でいくら優れた兵器を所有していても、実際に使うには燃料は必要だし弾薬も多く必要になる。整備にも時間と費用がかかる。そしてまた一定の兵器の数というものが重要になる。逆に考えれば高性能な兵器を開発し実戦配備していても、事実上稼働できるものは案外少ないのではないかと考えられる。
 習近平氏がどのように判断するかはまだ結論が出ていないが、少なくともこれまでの国連での姿勢を見る限り、どちらかといえばロシアのしていることに理解を示しているという面がある。そういった点からは何らかの援助はする可能性があるのかもしれない。

 ところがそんな時に、中国国内でも一目置かれる有名な大学教授である上海交通大学の 胡偉教授が 中国の立場を完全に否定する論文を発表した。すぐに当局によってネット上から削除されたもののあっという間にこの文書は世界中に広まったのだ。
 すでに日本でも全文が翻訳されてネット上で公開されている。



 「ロシアとウクライナの戦争の起こりうる結末と中国の選択」全文を読んでみたが、非常に冷静な立場から状況分析が行われており、ロシアがしていることの問題点や中国がそこにどのように関わっているかということの分析を通して、決して中国にとってみればいいことはひとつもなく、直ちにプーチン大統領とは手を切るべきだと結論付けている。この論文は世界中で大きな反響を呼んでいる。胡偉教授がかなり名のある人物であるだけに、その影響も大きい。しかし世界中にこの文章が広まっても、中国国内においては果たしてどうなんだろうか。またこの論文、教授を中国政府はどのように扱うのか。場合によっては中国の秩序を乱した罪で逮捕され、禁固15年が科せられる可能性だって考えられる。あくまでも胡偉教授は中国という国のために、そして世界から中国が大切に思われるようにといういわば一種の老婆心のようなところから発信してるような雰囲気の文章でもあった。

◆ 結局、プーチン大統領は持たないだろう・・・

 こうしてロシアによるウクライナ侵略、そしてキエフへの総攻撃開始は寸前のところまで来ているが、世界の動きも非常に活発になってきている。そんな中でプーチン大統領がいつまで自分の我というものを押し通すことができるというのだろうか。このところロシア政府の内部崩壊説があちこちで取り沙汰されている。まだまだ機は熟してはいないとは思えるが、たとえキエフを無差別総攻撃で陥落させたとしても、その先ウクライナを支配するだけの経済力というものが、今のロシアにはないと断言できる。仮にウクライナの臨時政府が他の場所にできたとしても、ロシアがウクライナ全土を支配して、ウクライナに傀儡政権を自立させるということは、形式的には行なったとしても、それを維持することはできないだろうと思う。必ずウクライナ人は祖国を取り戻し、傀儡政権はすぐに倒されることになるのは明らかだ。
 そういった意味では今進行中のウクライナ侵略戦争は結局、無差別に民間人を殺しただけで、ロシアが世界から孤立するという事実を作り出すだけで終わることになる。全く無益で無意味なプーチン大統領の一人芝居に終わる可能性が極めて高いのだ。


 (以下続く)  (画像はTVニュースより)

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2022年 京都の梅 興正寺 京都市下京区

2022-03-15 22:10:56 | 撮影
  

『真宗興正派 本山興正寺

 当寺は、阿弥陀如来を本尊とし、親鸞聖人を開祖とする真宗興正派の本山である。
 興正寺の寺号は、日本に仏教をひろめた聖徳太子の事績にちなみ、「正しき法を興しさかえさす」との意味が込められている。
 創建は鎌倉時代にさかのぼり、京都の東、山科の地に建立されたと伝えられている。
 南北朝時代、寺基は、山科から渋谷へと移り、その際、阿弥陀仏の放つ光明にちなみ、寺号を 「佛光寺」と改めた。 佛光寺は多くの門徒をかかえ、隆盛を極めた。
 室町時代、蓮教上人は、本願寺蓮如上人と歩みを共にし、佛光寺を弟に譲り、再び山科に 「興正寺」を興した。
 その後は、本願寺と歩調を合わせ、度重なる移転にも行動を共にした。桃山時代、現在の地 へ移転したのも本願寺との深い関係を示している。
 明治九年(一八七六)には、真宗興正派の本山となり、現在も「興隆正法」という願いのもと興正寺の歩みは続けられている。
   京都市』  (駒札より)

  

 興正寺は京都駅から北のほうへ徒歩約10分。西本願寺の南側に隣接している。同じ浄土真宗のお寺ということで、今はこの地にある。
 歴史は古く上記駒札にある通り鎌倉時代といわれる。細かな創建年代については諸説あるが、親鸞聖人が建暦2年(1212年)に山科の地にもとになるお寺を開いたのが始まりと言われる。後に移転を繰り返し、最終的には桃山時代終わりの頃に、現在の西本願寺の南側に移転し今に至る。
 その後、明治時代になってその後期に火災によって、ほとんどの伽藍を焼失。現在の阿弥陀堂、御影堂などは、その後に再建されたものだ。西本願寺の阿弥陀堂などは国宝に指定されているが、この興正寺のものも当時の建築であれば、同様に国宝になっていたかもしれない。真宗派の大きなお寺であり、各お堂も巨大なもので、境内も広く迫力がある。大半の人は西本願寺の一部だと勘違いして、こちらにはなかなか入ってこないようだ。

   

 興正寺の梅は山門を入ったすぐのところに、左右対になって2本の木がある。それぞれ紅梅と白梅であり、巨大な建物と広い境内の割には正直、これだけかと思うかもしれないが、何でもかんでも数多くあればいいというものではない。わずか2本の紅白が意外と目立つポイントになっていて、しかもこれが山門の外側から少し見えているので、それに引かれて入ってくる人もいるようだ。
 特にこれといって梅の名所というわけではないが、お寺の存在感とともに、梅がいい役割を果たしているので、ちょっとした穴場という感じがした。

    
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2022年 京都の梅 水度神社 京都府城陽市

2022-03-13 23:15:52 | 撮影
  

『延喜式内社  

水度神社ご由緒

一、ご祭神
 天照皇大神
 高皇産霊神
 和多都美豐玉姬命

二、境内小宮社(十社)

天満宮社 日吉神社
太神宮社 加茂神社
八幡神社 嚴島神社
松尾神社 稲荷神社
春日神社 竜王神社

三、神社のご由緒

 当社は、平安時代に編集された「三代実録」によれば、清和天皇の貞観元年(八五九年)に従五位下の神位が授けられ、「延喜式」神名帳にのせられた官社 (「式内社」)であります。
 また、「山城国風土記」逸文に「久世の郡の水渡社 祇社」とあることから、少なくとも奈良時代(八世紀の初め)には確実に存在し たことがうかがえます。
 明治六年(一八七三年)には村社、同十五年(一八八二年)には郷社、同四十年(一九〇七年)には府社に昇格、現在は神社本庁に属する宗教法人水度神社と称しています。
 社伝によれば旧社地は境内の東に往古、鴻が巣を結んだという 鴻ノ巣山の峰つづきにあたる大神宮山であったと伝えられており、鎌倉時代の文永五年(一二六八年)に、旧地より現在の地へ遷し奉り、今日に及んでいます。
 本殿は正面一間、側面二間の一間社で、屋根は切り妻造りの正面側を前に伸ばした流造りという形式をしています。 屋根正面には、千鳥破風という三角形の装飾屋根がついており、簡素にして優美な建物です。
 本殿造営の棟札 (重文指定)によれば、室町時代の文安五年(一四四八年)の建立とされ、造営年代が明らかな建物としては城陽市内最古の建物であります。
 その後、檜皮葺替えの修理が重ねられ、令和元年(二〇一九年)に 三十七年ぶりの改修をおこない現在に至っております。
 本殿は、国の重要文化財に指定されています。

四、神社の大祭
 例祭 九月 三十日
 大祭 十月二日

五、文化財

 水度神社本殿 【国指定重要文化財】室町)
 おかげ踊り図絵馬 【京都府指定登録文化財】 (江戸時代)
 大般若経【城陽市指定文化財】(鎌倉時代)
 鉄湯釜【城陽市指定文化財)(宝町時代) 』
  (説明書きより)

      

 比較的近いので何度も訪れている。境内はかなり広く、第一鳥居から第二鳥居までの間は市道がそのまま走っているようなところだ。第二鳥居から本格的な参道となり、途中苔むした祠がいくつか建っており、また赤い鳥居が集積したところもある。しばらく上っていくと目の前に拝殿が見えてくる。そして国の重要文化財に指定されている見事な本殿が姿を現す。その周囲に白梅を中心とした梅の木が、少しではあるものの花を咲かせ、反対側には紅梅が咲いていた。
 由緒ある神社であり、普段から参拝に訪れる人が多く、なんでもない普通の日でも、三々五々一人で、あるいは二人で参拝にやってくる人が絶えない。
 説明書きにある通り平安時代からこの神社はここに建てられており、優に1000年以上の長い歴史を誇る。周りを取り囲む鎮守の森も非常に静かで鳥のさえずりが聞こえる。ここから北のほうへ少し歩けば、同じく国の重要文化財に指定されている久世神社の本殿がある。この辺り一帯には同時に大きな寺院の跡や古墳などもあり、太古の昔から人々の生活が営まれていた。そういったことから非常に重要な土地であったことは確かだ。



 (本殿 重要文化財)
      
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《 ロシアによるウクライナへの侵略という暴挙 》 ⑩  2022.3.12

2022-03-12 23:38:34 | 社会


◆ イギリス国営放送 BBC の分析について・・・今後のシナリオ

 今回のロシアによる侵略戦争に対して、世界中のメディアが様々な報道をしているが、中でも際立っているのがイギリス国営放送 BBC だ。ただ単に現地からのライブ放送だけではなく、ウクライナとロシアの会談にも鋭い質問を浴びせ掛け追求をしている。さらに放送局として独自の分析を行い、それを明らかにしている。同じ国営放送とはいっても、日本の NHK とは大違いだ。根本的にマスメディアが、国民に対してどういう役割を担うのかということを十分に理解しており、また責任を持っているということだ。 NHK のように権力に忖度し一部迎合し、都合の悪いことは口を濁すような腰抜けのメディアとは明らかに異なる。さらに日本の民放に至っては特に東京のキー局において、扱う内容も量もどう考えても不十分としか言いようのない事実が目の前に流されている。イギリス BBC がいかに国営放送とはいえども、独立した主権的な意識を明確に保持しており、それを国民に示していることそのものが、メディアとしての本質を世界に見せているということが言える。

 数日前に BBC がこの侵略戦争に対して、今後考えられる5つのシナリオを検討した。
(1) 短期決戦
(2) 長期戦
(3) ヨーロッパ全域戦争
(4) 外交交渉による解決
(5) 内部崩壊、プーチン大統領の失脚

 以上の5点だ。それぞれに予想の分析を加え、今後の方向性の道筋を考えている。総論的にはどのシナリオにおいても困難さが伴い、単純なシナリオでは済まないだろうと言っている。1から5のいくつかが複雑に混ざり合って、あらぬ方向へ向かうことも考えられるというのもあった。大まかな形でまとめると、確かに上に掲げた5点が主なシナリオになることは確かだろうと思われる。
 2月24日に侵略を開始したその日から数えて2週間余が経っている。当初プーチン大統領が描いていた短期決戦において、ウクライナの首都を制圧し大統領を交代させて、ロシアによる傀儡政権を樹立し、親ロシア派の政権が誕生する、というシナリオはプーチン大統領としてもあまり考えていなかったのではないかと思われる。それほどにウクライナの人々の心意気は高かったのだ。



 現在ロシア側の攻撃は主にミサイル、あるいは砲撃を使って中距離からの無差別攻撃を展開している。軍の施設だけではなく民間のアパートをはじめとする居住区や公的施設も攻撃され、民間人に多大な犠牲者を出している。もちろん小さな子供も含めたものとなっており、戦いそのものが悲惨な状況を呈するようになってきている。最新の情報では首都キエフにロシアの陸軍が、戦車隊を中心に三方から迫りつつあり、まもなく砲弾やミサイルを使った総攻撃を始めて一気に攻め込むのではないかと予想されている。
 おそらくそれに対してゼレンスキー大統領を始めウクライナ側は、徹底的に抗戦すると言明しており、ロシア軍がそう簡単にキエフを陥落させることは難しいと考えられる。これまでの経過を含めて考えると、 BBC のシナリオのうち最も考えられるのが(2)長期戦の可能性だ。
 ロシアはかつて中近東におけるイスラム教徒との戦いに10年間を費やした。そして結果は、多大な犠牲を出して引き上げざるを得なかったと言う苦い経験があるはずだ。にもかかわらずロシアは、そしてプーチン大統領は同じ轍を踏むのかと思ってしまう。
 かつてシリア内戦においてもロシアは痛い目に遭っているが、その時にロシア軍を支援した義勇兵達が大勢いて、今回プーチン大統領はウクライナ侵略に対して義勇兵の応募を始めた。おそらく親ロシア派の義勇兵たちが一定程度は集まるのではないかと考えられている。同時に実質上の同盟国である隣国のベラルーシから兵士を出すことにもなるだろうと考えられている。
 こうして始まるのがいわゆる市街戦。これは敵味方の兵士達が戦車などを伴いながら、地上戦を戦うという形をとり、特に攻撃を受けた側はいわゆるゲリラ戦法を取るケースが多い。そしてこれは予想以上に大きな成果をもたらす。かつてアメリカがベトナム戦争において、徹底的に空から爆撃を繰り返し市街地であれ山間部であれ、農地などを破壊し尽くしたにも関わらず、サイゴンなどの大都市を市街戦で攻略することができなかったと言う歴史的な事実がある。同時にこのような市街戦はお互いの兵士だけではなく、そこに居住する一般民間人にも多大な犠牲者を出すことになる。
 プーチン大統領はそのようなことを知識として持っていたとしても、成り行き上市街戦が長期化してもそれを続けることになるのではないかと予想する。ただこのような市街戦が長期化し先行きが見通せない状態に陥った場合に、プーチン大統領は地域限定の戦術核兵器を使用する可能性が十分にあるとも考えられる。



 しかし核兵器が戦術核である場合は、ヨーロッパとしても反撃はおそらくできないのではないかと思われる。 NATO 側はアメリカの核兵器を共同保有しているが、同時にイギリスやフランスは自国が核兵器の保有国だ。報復のための核ミサイルを発射するとすれば、ウクライナの戦場ではなく、直接ロシアの軍事施設に向けての攻撃ということになるだろう。つまりモスクワなどの大都会の一般市民を殺戮することは極めて選択しにくいということだ。だがヨーロッパ側の報復ミサイルの発射と同時に、ロシア側の核ミサイルはヨーロッパ主要国の首都を直接狙って発射される。こうなるとシナリオの(3)ヨーロッパ全域戦争、しかも核兵器による戦争でヨーロッパは甚大な被害を出す。そういったことを考えれば少なくとも、ウクライナの戦場で戦術核と言う地域限定の小型核兵器が使われるだけでは、とても反撃の核攻撃は決断できないと予想される。これはたとえ首都キエフ市内において使われた場合でも同様だろう。
 従ってウクライナとしても、少しでも市民達に犠牲が出ないように配慮して戦うということになれば、市街戦をゲリラ戦を戦うという選択肢しか考えられないのではないかと思われる。



 本日のテレビのニュース情報番組の中で、最新のウクライナ国民の一人が泣きながら訴えている場面が放映された。彼女は次のように言った。
「なぜ私たちを助けてくれないの。どの国も何もしてくれない。国連も何もしてくれない。」
 まさしく悲痛な訴えだ。核超大国の一方的な侵略というのは、一歩間違えれば全面的な核戦争につながる可能性があるだけに、たとえアメリカであれそう簡単には手が出せないと言う難しい現実がある。不幸なことにロシアという国にプーチンという男が成り上がってきて、いつのまにか大統領の地位についてしまった。このような状況は誰もが、ナチスドイツのヒトラーを連想するだろう。彼もまた第1次世界大戦においては単なる一兵卒に過ぎなかった。しかし彼が政治の世界に足を突っ込み投獄されても、その中でドイツという国を今後彼なりに考えて、後にその巧みな話術で人心を煽り遂には総統の地位までに上り詰め、第2次世界大戦と言う取り返しのつかない事態を引き起こさせる結果になったのだ。
 もちろんヒトラー一人の責任だけでは済まされない。第1次世界対戦の戦勝国側のとった様々な行動にも問題があったのは確かだ。同じように考えれば1991年にソ連邦が崩壊した時に、西側諸国がただただそれをひたすら喜んだ。そしてロシアという名前が復活し一応は自由主義陣営の一国として再スタートを切ったということにはなるものの、いわゆる西側陣営のとるべき戦略が正しかったのかどうかということは、改めて考えておくべきだったんだろう。自由主義の国になったから良かった、だけでは済まされないロシア人の過去の長い歴史的な経緯と喪失感、あるいは敗北感というものが多くのロシア人の中に焼き付けられたというものがあったのではないか。そういったことに対するいわば手当てがほぼなされないまま、東西冷戦は終わったなどと言って安心した世界が、逆にこのような結果を招いている面があるのではないかとも思われる。


 (以下続く) (画像はTVニュースより)
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《 ロシアによるウクライナへの侵略という暴挙 》 ⑨  2022.3.10

2022-03-10 23:38:24 | 社会


◆ 戦術核兵器の使用はあるのか?

  ロシアによるウクライナへの侵略戦争は2週間を超えた。プーチン大統領の当初の思惑は大きくはずれウクライナ軍の抵抗が予想以上に激しく、首都キエフの包囲および陥落はいまだならずといった状態になっている。伝えられるところではこの状況にプーチン大統領はかなり苛立ちを見せており、側近の部下たちを怒鳴ったりしているという。何度かの交渉が持たれたが、いわゆる人道回廊も約束が守られず民間人への攻撃は続き、しかもその行き先は全てベラルーシ及びロシア国内と言う、誰が考えても受け入れ難い扱いとなっている。

★ トルコの仲裁・・・ロシアのアリバイ作り

 そのような中でトルコが両者の仲裁に入ることになり、10日トルコ国内においてロシアおよびウクライナの外務大臣が直接顔を合わせ話し合いに入った。無論トルコの首相も同席だ。トルコはロシアからの武器購入などを通して一定のつながりがあり、また同時にウクライナとも武器の技術その他での支援があって交流がある。そういった意味でどちらにも一定の顔が立つような立場にあるということで、トルコが仲裁に入ったということだ。

 しかし夕方のニュースでは少なくとも、ウクライナ側の外務大臣は話し合いになんら進展はなかったと明言した。ただ若干の変化として見られるのが、ウクライナとしては NATO への参加についてはしばらくはないだろうということ。また NATO 側としても参加したいからすぐにどうぞ、というわけにはいかない。少なくとも10年はかかるだろうとの見通しを発表している。ロシアのプーチン大統領が最も恐れていたのが、ウクライナという隣国が NATO に加わるという点があったので、そういった意味ではプーチンの安心材料にはなるだろう。だが結果的にはこの会談は、単に形式的なものであり、少なくともロシアとしては最初から何らかの有効な提案をするつもりもない、上滑りの見せかけのものでしかなかった。



 従ってあくまでも話し合いレベルの互いの探りあいの中での話であり、具体的に何らかの締結があったというわけではないのであり、パフォーマンスでしかなかったのだ。そういった意味ではプーチン大統領としては、ウクライナが完全に降伏するまで攻撃を続けると言う当初の目的には変わりないだろう。だがロシア軍の兵士の損失は想定を大きく上回るほどの損害を出しており、陸上部隊がそのまま首都キエフに突入するというのはさらに犠牲を増やす可能性が大きい。従ってこのところは戦闘爆撃機によるミサイル攻撃、あるいはロシア国内から地対地ミサイルで攻撃するという方法をとっている。使用されているミサイルは命中精度が低くピンポイントでの目標破壊はできないものだということで、目標をそれて民間施設や住宅街に次々に爆撃がなされる形になる。尤も、それだけに関わらず、意図的に民間施設へのミサイル攻撃が行われているのは間違いないところだ。
 その状況は被害を受けているウクライナ市民たちの、スマホによる SNS 発信で世界中に流され、日本でもニュース映像の中に一緒に流されている。産科婦人科病院がミサイル攻撃を受け病院そのものが破壊された。そのことはロシア側にもすぐに伝わり、会談のロシアの外務大臣はウクライナの作り話だと一蹴した。元産婦人科病院であったが今では軍が接収して、軍人の駐留基地になっている、とぬけぬけと喋ったのだ。こんな嘘は現地からの映像で簡単に見分けられるものであり、ロシア側の嘘の上塗りに一層信頼性を低下させることにしかならないものだ。



★ 戦術核兵器使用の可能性
 
 そんな中、欧米の軍事専門家筋の間では長引く戦闘状態に対して、プーチン大統領が戦術核兵器を使うのではないかとの議論が進められており、かなり具体的な危機的な問題として取り上げられている。
 言うまでもなく核兵器は第二次世界大戦中に、アメリカやドイツ、日本などが研究を始めていて、結果的にはアメリカが真っ先に実験に成功し、実戦に使用した。ドイツは完成間近ではあったが情報を掴んだ連合国側の攻撃によって研究所が爆破され、結局日の目を見ることはなかったのだ。日本はさらに遅れた状態であった。そのまま敗戦を迎える。この時アメリカが完成させた3発の原子爆弾のうち、1発が実験に使用され、残りの2発がそれぞれ広島及び長崎に投下され、何十万人と言う膨大な死者を出すことになった。正しく悪魔の兵器が牙を剥いたのだ。
 そして第二次世界対戦後、アメリカに続いてソ連が開発に成功。それ以降フランスやイギリス、インド。そして中国などが次々に原子爆弾を開発し保有するに至る。中には原子爆弾の威力をはるかに上回る水素爆弾も開発され実験に成功している。
 こうして核兵器による開発競争は東西冷戦の対立構造の中で、お互いに相手を威嚇しつつまた抑止力としての位置づけを与えられ、際限なく開発が進んで行くことになった。もちろんそんな中で核兵器をなくす運動も高まり、様々な核実験禁止条約や核拡散防止条約などが締結されてなんとか今現在に至っているのが現状だ。

 しかしそのような核兵器の開発競争において、様々な種類の核兵器が開発され、超大型水素爆弾から大砲の砲弾の中に超小型の核物質を込めた砲弾型核兵器。さらには劣化ウラン弾を使った、機関銃から発射する弾丸の中に放射性物質を挿入したものまで開発されている。実際に劣化ウラン弾は局地紛争などで現実に使われている。そういうものが実際に使われた結果、放射能の影響力はどのようになったのかと言ったところまでは、科学的な調査が場所がら難しく、大概は使用したという事実だけが残っているという状態だ。

 仮にプーチン大統領が核兵器を使用するという場合、考えられるのか劣化ウラン弾の弾丸、そしていわゆる戦術核。つまり小型の核ミサイルだ。これだと人口約250万といわれるキエフという大都市には壊滅的な被害までは与えないだろう。それでも都市の半分は壊滅すると思われる。ハリコフなどの人口100万あまりの都市だとほぼ壊滅するのではないかと考えられる。こうなれば完全にジェノサイドとしか言いようのない惨状となるのは確実だ。ジェノサイドというのは市民全滅、大量虐殺を表す言葉でまさしく軍人民間人関係なくすべてを蒸発させ殺戮するという意味になる。

 このような形で核兵器が使われた場合に、ウクライナはその瞬間に実質上降伏状態にならざるを得ない。それに対して核による反撃を行うことができるのかどうかという点では、恐らく難しいだろう。 NATO 側はイギリスやフランスが核兵器を保有しているものの、そしてアメリカの核兵器が NATO 諸国に共同保有されているものの、実際の反撃をするとなると、ヨーロッパは全体が核の戦場となり、消滅するだろう。そこまでの危険をおかして反撃することができるかどうかといえば、結論から言ってしまえば、できないということになる。例えヨーロッパからの核兵器がモスクワを殲滅したとしても、ヨーロッパ側の核兵器の数ではロシアの核ミサイルの数にははるかに及ばない。ロシアが保有する6000発と言われる核ミサイルは尋常なものではない。100発も撃てばヨーロッパは全滅する。いかにアメリカが対抗しようとも、まずヨーロッパがそこまでの危険をおかして反撃するのはやはり難しいだろう。
 結局は核大国に対しては手が出せない、というのが本当のところだ。無論プーチン大統領としても本当に核兵器を使ったならば、一定の反撃の核ミサイルをを覚悟するかもしれない。そういった意味では核の使用そのものはどこかで踏みとどまるのかもしれない。もちろん核兵器を使わないからと言って、今の戦争が許されることがないのは当然だ。



★ ABC兵器・・・ジェノサイドなのか

 そこで次に考えられるのが、すでにこれも欧米の研究機関で論議の課題に上がっているロシアによる BC 兵器の使用についての問題だ。
  BC 兵器とは何か。これは一般的には ABC 兵器としてまとめられて呼ばれてきた。 A というのはアトミック、つまり核兵器のことだ。 B というのはバイオロジー、 つまり生物兵器のことを言う。生物ってどんな生物か。要するに細菌兵器だ。今世界的にコロナウイルスが蔓延していて大勢の死者が出ているが、人工的に作り出した強力な細菌兵器がいくつかの国には保管されている。かつてイギリスで研究所からその一部が漏れて周囲に被害を出したということがあった。核兵器よりも強力で人類の最終兵器とも言われている。C というのはケミカル、つまり化学兵器のことだ。いわゆる毒ガスの類のものだ。
 第二次世界対戦後、世界のあちこちで地域紛争が実際に起こっているが、その中で B 兵器、C兵器が使われたのではないかとも言われている。特に C 兵器についてはこの日本でもオウム真理教によってサリンが使われた。実際に使われることになると、その兵器が目に見えないだけに恐ろしい結果を招くことになる。そして対象は無差別だ。軍人民間人関係なく死に至る。ある意味究極の兵器と言える。

★ プーチン大統領を阻止できないロシア国民の実情

 プーチン大統領が勝手に始めた大義のない侵略戦争によって、話はここまで来ているのだ。事と次第によっては人類滅亡などということも視野に入れておかなければならない。専門家の中には、あくまでもプーチン大統領の個人的な思いによる戦争であって、一般のロシア国民はメディア統制によって真実を知らされず騙されている、などと解説している人もいる。ロシア兵の中にも訓練だと言われて連れてこられた、自分はこんな戦争に参加したくない、などと言っている捕虜になった兵士もいる。だが現実はある程度の数の市民国民が、戦争反対の運動をしてもごくわずかな数であり、即警察権力によって拘束される。そしてほとんどの戦っている兵士や交渉に臨むロシア政府の高官たち、実際会議に出てきた外務大臣も含め、みんながプーチンの戦争に協力してウクライナを攻撃し、また自国民の反体制派を弾圧している。善良な市民の中には公共メディアの嘘の放送によってすっかり洗脳され、騙されている国民も多いと言われている。
 またプーチン大統領がそう簡単には大統領の座から引きずり下ろされることは考えにくいだろうと思われる。誰か気を許して相談する相手は政府高官の中でもごく一部と言われており、あとは政府系の民間会社で超大富豪となった人たちの支持がある。ただしこの人たちの中からも経済制裁によって損失を出すことが現実の問題となりつつあり、プーチンに一定の歯止めをかける必要があるという動きも出ているのではないかとも言われている。



★ 危機的な状況
 
 侵略戦争が始まって2週間。おそらくプーチン大統領の忍耐ももうこの辺で切れるだろう。トルコの仲裁も虚しく成果を全く上げることはできなかった。この後間違いなく一気に大攻撃を仕掛けてくることは間違いないと思われる。陸上部隊だけで首都キエフのを陥落が難しいと判断すれば、本当に核兵器を使う可能性があるかもしれない。その時ヨーロッパのみならず、アメリカも含めて世界はどのように立ち向かっていけばいいのか。経済制裁には時間がかかると言われていたが、それだけで済ますことのできる問題なのかどうか。事態は重大な局面に達しようとしている。


 (以下続く)  (画像はTVニュースより)
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