切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

『 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~ 』 京都市京セラ美術館  2022.3.29

2022-03-30 23:41:24 | 日記




 京都市立美術館において表題の展示会が行われているということで訪れた。ここに来るのは随分久しぶり。以前の建物は煉瓦造りの風格のある建物であったが、その上部は残しつつ正面を掘り下げて、そこに近代的なスマートなフロアが加えられた美術館にリニューアルしていた。
 ともかく「兵馬俑」というものに惹かれて、これは見ておかなければならないということで行った。この日は曇っていたものの陽気も良くて、岡崎公園一帯は車、観光バス、人々が大勢訪れていて、特に春休みともあって親子連れ、小さい子供連れといったファミリーも目立った。駐車場はどこも満杯で漸く京都市の岡崎公園地下駐車場に駐めることができた。
 美術館へ向かう。すっかり様子が変わっていた美術館と思いながら、2000円の入場料を払って入る。入る時には内部撮影が可能かどうかを確認し、不可のところと可のところがあるということで、撮影可能なところはおそらくレプリカが置かれているんだろうと予想しながら遠慮なく撮影することにした。

 テーマの副題にある通り、秦漢文明の遺産、つまり中国古代王朝の秦から漢にかけての様々な発掘物が展示されている展示会だ。
 中国古代王朝においては、実在が確認されているもので最も古いものが殷王朝であり、紀元前約1600年前後となる。その後に周が台頭してきて王朝ができる。その最中に一部分裂し春秋時代、戦国時代となり、そんな中から始皇帝が現れ、秦王朝が誕生する。この王朝は紀元前221年に滅亡し、代わって漢王朝が誕生。日本で言えばまだ弥生時代だ。古墳時代にすら至っていない。

 

 展示品はいくつもの部屋に区切って時代ごとに並べられていたが、最も古いものは、紀元前11世紀頃のものと思われている小さな青銅器があった。これはその測定が正しいとすれば殷王朝の頃のものとなる。それ以外のものは土器あるいは青銅器にしても、周時代のものがずらりと並ぶ。紀元前7~8世紀あたりのものとなる。やはり古いものほど青銅器にしても作りがやや粗雑で、年代を重ねていくと精巧な作りになっている。そして次第に日常生活用品では土器が少なくなり、青銅器が増えてくる。今現在家庭で使われてるような食器などとほとんど同じようなものが並んでいる。2千何百年も前のものであるが、基本的な日常品というのはこれだけの長い年代を経ても変わらないものだ、ということを改めて実感した。
 そしてしばらくすると最初の貨幣が青銅貨幣として誕生する。日本最初の貨幣と比べて全体的に薄く小さめのものが目立った。中には黄金のものも見られる。やはり様々なものの価値というものがごく当たり前に認識されるようになっているようだ。一つ一つに説明がついているが全部読んでいたらとても時間がかかるので、表題だけ見て次へと進んでいく。
 土器や青銅器の中には文字が彫られたものが比較的多くみられ、秦王朝時代の文字は明らかに漢字のひとつ前のものだということが明確に分かってなかなか興味深かった。
 入場者もかなり多くて少し待たなければならないものも多々あった。そして時代が周から秦へ至るあたりにようやく撮影可能なコーナーになっていく。やはり兵馬俑の巨大土器については基本的にはレプリカのものだ。従って中国の西安近くにある兵馬俑のものとは大きさが少し小さめとなっている。であってもやはり大きなものだ。背後には現地の発掘された写真が掲載されていたが、やはり要人が亡くなるととてもすごい副葬品が製作され、一緒に埋められるのだということが、権力に比例して墳墓として残される事がよく分かる。

   

 元々中国では殷王朝から周王朝にかけては基本的には殉葬と言って、亡くなった人がたった一人で埋葬されることを悲しみ、生きた人々が選ばれてそのまま埋葬されるという風習があった。それが秦の時代辺りから次第に人間に代わり、人間よりも少し大きめの土器を作ってそれを副葬品として埋めるという風習になったという。
 西安郊外で発見されたこの兵馬俑は、その最たるものと言えるだろう。レプリカとはいえどもやはり圧倒的な大きさと分量で迫ってくる。私の友人は今はリモートだが、コロナ前は現地の中国の大学で教えていた。休みの時には実際の兵馬俑を見学に行ったことがあると言う。発見当時は世紀の大発見と言われたものであり、日本でも大きく取り上げられたのをうっすらと覚えている。
 今からあえて中国まで行こうとは思わないので、今回の展示で私としては十分といったところだ。何分にも古代中国のことなので、この展示会を見に来た人もあまり詳しい人はいないようだ。私は一人で行ったが大半はカップルなりファミリーで訪れている。そんな人たちの会話の中身がよく聞こえてくる。本来なら中学校で学んでいるはずだが、殷周秦漢といった王朝をどれがどれだかよくわからないような人もあちこちにいた。中には少し詳しそうな人がいて、一緒に来た彼女に得意げに説明したりしている。美術館側も有料の貸し出しヘッドホンで音声説明を聞くことができるような対応はしていた。これはこれでまた時間がかかりそうだったので私は利用しなかったが。
 一通り見終えていろんな感想を持ったが、改めて古代中国の発展というものが、黄河文明以降の早い時期から、ハイレベルな文明が構築されている様子が感じられたということが大きい。その一方、展示物にやはり「本物」が欲しい。日用生活用品などでは本物が数多くあったが、やはりメインの本物の人物と馬の土器があればよかったのだが。でももしそのような展示をしようとすれば、かなりお金がかかり入場料2000円ではとても済まないだろう。最後に図録を購入して帰途についた。


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