kirekoの末路

すこし気をぬくと、すぐ更新をおこたるブロガーたちにおくる

リハビリ感想(春・花小説企画)編

2009年04月14日 03時21分00秒 | 企画感想物
懐かしやこの匂い、この痛み。我はまた生きてあり。@kirekoです。

>リハビリ感想編

というわけで、四月も相当進んでしまって、更新も先年と比べるとまばらになってきた末路なわけですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
(意訳:元気にしてたか小僧ども)

で、近藤さん経由でるうねさん主催の企画依頼を受けたものの、HPを見る限り、企画作品が仕上がるまでは少々時間がありそう。
となると、何か違う作品の感想の一つでも唱えておかないと読む力がなまる。

=(イコール)

いっちょ手ならしに他の企画作品の感想でもやってみようじゃねえか

というわけで、今回のkirekoリハビリ感想編のターゲットになるのは……


■春・花小説企画
http://juhee.web.fc2.com/hanasyousetsu.html

これだ!!

ちょうど、今唯一感想ブログ活動されてる一読者さんも、企画の感想してることだし……

そして、

花にまったく興味のないkirekoだからこそ、この企画を読む価値がある!(断言)

ただし、kirekoも日常生活の時間がタイムなので、企画内で読むのは短編のみとする。
また、選考は、
http://juhee.web.fc2.com/tanpen2.html
に乗っている↓からの投稿順とする。

ええい、世の中は花より団子なんだ!わかってくれ!
んじゃ、いっちょ、いってみっか!


*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり


============はい開始==============

ライラック ジャンル 恋愛 作:尚文産商堂

:あらすじ
美術部とは、美術にほれた人たちの集まり…では無い。だが、それでも私は好き。

:感想
休日返上の部活動で、時間を絵に費やす高校二年生の主人公、その主人公の周辺でグースカ寝てる美術部二人の話。一人称で進む話というのは、いかに主人公の視点で想像できるか、それを読者に伝えられるか、という難しい部分が焦点になってくるが、簡潔に説明されている設定部分以外の事を想像するには、今作品は本文の短さもあり、やや中途半端で、薄い印象を受ける。男側が『どうして好きになったのか』なんていう動機の部分もしっくりこないし、告白のタイミングとしては唐突過ぎる気もする。油絵、美術用具などに関する説明も少ないし、あと、全体的に周囲の環境が描写されていないため、背景、場景の動きなども淡白で、物足りない人には物足りないと言える。ただ、本文を読むのは難しくない。個人的には、恋愛想像入門編と言ったところ。ようするにシーンを想像し、いわゆるそのシーンに「ニヤニヤできるか?」というのが本小説の旨味ではないだろうか。だが、企画の概要にもある花言葉に関しては、少々蛇足というか、こじつけに感じてしまったのが残念な一因だ。


アムネジア/アルストロメリア ジャンル 文学 作:chap.

:あらすじ
白昼の教室で目覚めた“彼”。目覚めない“彼女”。何が起きて、何が起きなかったのか?――『花言葉企画』出展作品。

:感想

SF的な語り口で書かれた、ホラーとでも言えばいいのだろうか。「何が起きて、何が起きなかったのか」それは読者が一番言いたいことなのでは、と読後に思ってしまった。こういう事を言いたくはないが、書き手のイメージがダイレクトに書かれ過ぎててしまっていて、せっかく統制のとれた文章体が台無しな気がする。内容はクエッションマークだらけなので言ってもしょうがないが、文章に関する質問があるとすれば文章中の「/」と後半の意図的に改行しない台詞の意味。地の文をナレーション的に脳内再生しながら読むkirekoとしては、テンポを重要にする台詞劇という印象を受けた。だが、その旨味たる台詞の意味が読者にわからなければ何の意味もない。読者が想像し、理解するには、もう少し説明らしい説明が必要だったのではないだろうか。


寧日 ジャンル 文学 作:イリ

:あらすじ
雪がとけ暖かな日差しが私たちに降りそそぐ。幼少の頃の思い出が、ほんの僅かな事で素晴らしい思い出に変わるなんて私は知る由もなかった、今日までは――。

:感想
父と母の墓参りをするために出かけた主人公と、その主人公の娘の話。描写が丁寧で、均整がとれている文章もそうだが、全編通して説明に不足なく、最後はドラマ的であり、とても綺麗な話だと思った。テーマ小説というのは、どうしても主要にやりたいことが作者の中で固まってしまい、そのテーマ性が失われる事が多い。だが、この作品は主人公が育った生家に対する懐かしさと同時に、負のイメージとして刷り込まれたハルジオンという花を読者に印象付けさせて、なおかつ物語の主軸、オチにまでその要点を欠かさずに、最後まで書ききった、そういうブレない物の書き方が素晴らしいと思った。個人的に気に入ったのは、やはり娘と主人公の対話と、話している間にすかさず入ってくる周辺の描写だろう。話の導入部ですでにズバズバ直感的にものを言う主人公の娘と、それを苦々しく思いながら納得してしまう主人公。二人が会話をしつつも農道を走り騒音を耳に入れるトラックの描写や、主人公の母校のセーラー服が、いつの間にか洒落たブレザーに変わっていた事など、過去とは違う周辺の風景、主人公が感じた時の移り変わりなどの描写は、読んでいて想像するに容易いものであり、読みやすかった。一番良いシーンだなとおもったのは、墓参りの前に主人公たちが訪ねた八重子の家を出るとき、娘がハルジオンを摘みだすシーン。そしてそれに続く本文中の
「何してるの実穂! おじいちゃんの花は駅で買うって言ったでしょう!」
 窓を全開に私は声を大にして叫んだが、実穂は私の言葉を無視し作業をする手を止める事をせずにまた一本、とハルジオンを摘むのだ。頼むからこれ以上、私を苛々させないでほしい、と車から降り、花壇に入ろうとしたその時に実穂は振り向きハルジオンを私に見せつけた。
「お母さん! どうしておばあちゃんとおじいちゃんがハルジオンを大切にしてたかわかったの」

気に入りのスニーカーを汚しながら、摘む作業をやめない娘と、摘むのをやめろという主人公の掛け合いは、読んでいて凄くドラマティックだなと思った。これは、主人公がすでに子持ちの大人であることを考えると、どうしてそこまで言わなければならなかったのか、なかばトラウマ的に植えつけられた花に対する苦い思い、それに対する強い拒絶感が見えてくる気がする。その拒絶感が、娘の行動と、八重子の語りによって解消されて、主人公が本当の意味でハルジオンを摘まなかった両親の気持ちを知るシーンは、本文の一番の旨味だと思う。一点、主人公がやや納得するのが早すぎる気もしたが、前述した通り、文章全体は綺麗に纏まっているし、描写が丁寧であることは、読んでみればわかることだろう。秀作!


春、浅き春 ジャンル 文学 作:古都ノ葉

:あらすじ
お久しぶりです。僕を覚えていますか。今、迎えにゆきます。

:感想
大病を負った末期患者たちが集まり、延命よりも自然死を目的とした病院に入院した癌を患う祖母。そんな祖母が入院以来とても元気だった理由とは……という話。話の導入部が祖母に宛てられた手紙であり、中盤に孫の会話があるが、後半も手紙で締めくくられているカタチで、本文の内容も目的に向かって一本調子であるためサクサク読める。ただし、やはりサクサク読めてしまうのが災いしてか、読後感は「ありがちな話だな」だった。疑問に思ったというか、想像した点は、手紙の相手が実際祖母を迎えにいったのか(相手=祖父)だったのかどうか?というぐらいで、その他疑問に思う点は無かった。おそらく作者は、必要以上を書かないことで、物語のエピローグを読者の想像の範疇に任すという手法をとったと思うが、伝える情報量というか、小説全体のボリュームが少なく、手紙の内容が殆どであるため、もう少し情感を揺さぶるような演出、味付けというか、ドラマがあっても良かったかなと思った。桃のツボミを食う少女時代を想像するところに若干の面白さは感じたものの、花言葉に関しても、やはりまだ蛇足の粋を抜けていない印象を受けた。もう少しこの小説のテーマにあった花が、他にあったのではないかと思える部分も感じてしまったのは否めない。


カクマの子 ジャンル ファンタジー 作:光太朗

:あらすじ
とある願いを叶えることができると伝えられる、カクマの子。二人の男が、彼に出会う。それぞれ罪を犯した二人が、カクマの子に何を願うのか……──☆★☆「春・花小説企画」参加作です☆★☆

:感想
カクマの子と呼ばれた少年に、人を殺したと訴え出る二人の男。毛色というか、タイプは違うと思うが、読後すぐに感じたのは、善玉悪玉の出る童話とか、まんが日本昔話に近い雰囲気だった(一方と一方で、仕置きの沙汰が違うという手法)。伝承のような詩風の文章をはさんでいるため、本文はとても短い。が、その短い文章の中にも、カクマの子、それが為す「うつろい」の表現方法など、若干不透明な部分があるが、十分にファンタジー作品としての雰囲気、本質はある気がする。ただ、kirekoがファンタジー作品で重要視する世界観に関するものは、全体のボリューム不足もあり、さして感じられなかったのが残念だ。カクマの子がこの世界においてどういう存在であるのか?なんてのも、読者想像に任せるには、余りにも広大すぎる設定だと思った。視点を変えて、企画の概要である花という捉え方で、この小説を読むとするにしても、やはり言葉の意味よりも、カクマの子という設定に追随し過ぎてしまっている気がする。


========終わり==========

>リハビリを終えて

ふう。
昔言ったことかもしれないが、テーマというのは基本、縛りプレイをしていることと同じだと思う。
テーマ一つ絞っても、それだけ制限がついてまわるのだから、書き手がどこまで機転を利かせて、テーマに沿ったオリジナリティある作品を書くか、という部分が、面白い、面白くないという感想にも反映されている気がする。
ジャンルとテーマの相性、それに対する書き手の相性、読者の相性なんて考えてると、とても難しいものを感じた。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ついに復活! (一読者(ハナタレ小僧))
2009-04-15 21:32:19
リハビリとは思えぬ切れ味鋭い感想でした。流石です。
キレコさんのはホント分析力がスゲー!自分なんかぶっちゃけ好きか嫌いかしか書いてませんからねえ、お恥ずかしいorz
まあ、何はともあれ本家本元が帰ってきてくれて嬉しいですよW

閑話休題。
それにしても春・花小説企画は、なかなか上手な人が多かったですよね。ガチで楽しめました。
ひょっとしてキレコさん、続きの短編も感想されます?
ちょっと期待しつつ、このくらいでおいとまいたします。では。
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おっす (kireko)
2009-04-20 22:48:35
おっす、ドラゴンボールZ改をまだ一回もリアルタイムで見ていないkirekoです。こんちわ。
一読者さんが忙しい中、感想頑張ってるからという理由は、仮面ライダーチップスのオマケカードみたいなこじつけものですが、一人で頑張るより、頑張りたい仲間がいたほうが張り合いが出るでしょ的理由はなきにしもあらずです(結局何がいいたいんだかわからなくなってますが、そのへんは察してくれ!)

>続き

もちのろん、やるよ!
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