kirekoの末路

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物書きさんへ漢字100のお題ラスト

2009年02月23日 01時58分10秒 | 末路話
拳銃もつなら、やってみるかい?@kirekoです。

>よし

今日もリハビリ生活、やるゾォー!


081:被害妄想

「被害妄想にとりつかれているだけの嫌な女には、なりたくないの」
 そういって彼女は、僕の部屋を出ていった。
 そこらじゅうに浮気の跡が残っていた、僕の部屋を。

082:空白

 この空白の五年間は、人間としての苦しみと、その耐え抜いた記憶と同時に、新しい感覚を自分に与えてくれた。
 機械のように働いた自分が、疲れを知らない、本当の機械の体を手に入れたのだ。

083:微熱

「微熱だから、風邪だからなんて嘘ついて、学校休むなんてママは許しませんよ。薬飲んだんでしょ? はやく、学校へいってきなさい」
 ママがそういうから、私は気だるい体調と、強い咳ばらいを数度繰り返しながら、無理して学校にいった。
 翌週、クラス単位の学級閉鎖が始まった。
 インフルエンザとは恐ろしい。

084:現実逃避

「あ、あなたは。一時の感情に任せて現実逃避しているだけよ……」
「いや、僕はもっとも現実的だと思うけどね」
 結婚指輪を向けられて顔を赤くする女の前で、男は平然と言いきった。
 女は、「馬鹿ね、本当に」と言いながら、ちっぽけなダイヤモンドで飾られたその指輪を、自分の薬指に通した。

085:粉雪

 全ての準備が整ったクリスマス。
 しかし、僕の渾身の告白は、彼女の心を射止めることはなく、これからの計画も、人生設計も、全て飲み込んで、もろくも、あっけなく崩れ去り、敗れ去った。
 街には、雪が降っていた。
 今日のためにと買った黒い革靴に降りかかり、靴の底で踏みしめた粉雪が、僕には、とても重く感じられた。
 
086:白銀世界

 トンネルを抜けたら、そこは文字通り白銀世界だった。
 全てが銀とプラチナに支配されていた。
 建物、木々、山、海、人や動物さえも。
 ここは銀色しか存在しない……してはいけない世界だった。

087:白昼夢

 頭はくらみ、胴は歪み、足が沈み、手は砕け、己の肢体は感覚を失う。
 人間よりも仕事を優先させた結果、睡眠を完全に断って四日間。
 白昼夢というのがあるなら、これのことではないだろうか。

088:神無月

 他の地域が神無月の時、出雲では神様が集まるから神在月というらしい。
 なんで神様が集まるのかって?
 そりゃ、一年間のご挨拶と、一月の間、飲み食いするためさ。

089:裸体

 この殺人事件は、目撃者なし、凶器なし、容疑者なし、まさに謎だらけの迷宮入りの事件だった。
 唯一の手がかりは、裸体で重なった男女二人がいたことだけ。
 ある日、本庁から老練な刑事が一人現場にやってきた。
 そして、すぐに「事件は解決した」と言った。
 周りの若い刑事が、「この事件はそんな簡単な事件には思えませんが」と疑問を露にしたが、老練な刑事は続けてこう言った。
「今時珍しい。男女そろっての腹上死とは」

090:耳朶(みみたぶ)

 僕には、耳朶を触る癖がある。
 恥ずかしかったり、本当の事を言いたいとき、とっさに触ってしまう悪い癖だ。
「おはよう。元気?」
 後ろから、はつらつとした若い女の声が聞こえる。
 えもいわれぬ体中の安息と、何故だか知らない期待が募る。
「お、おはようございます」
 挨拶をして、今日もまた、耳朶を触る癖。

091:最終電車

 強く抱きしめあう二人。
 発車ベルが、けたたましくなり続けるホーム。
 最終電車が出てしまう。
 互いに心の中で思うことは、同じ。
 この時間、この瞬間が、永遠であればいいと。

092:月見酒

「お父さん、何をやっているの?」
「今夜は月が綺麗だろう。だから、綺麗な月を見ながら、一杯やってるのさ」
「ふーん、オジンくさい」
 娘は、そう言いながら携帯でメールを打ち始めた。
 なまじ娯楽の多さに慣れてしまうと、たまにしか見れない月の綺麗さも、かすんで見えてしまうものか。
 父は、月にむかって乾杯した。

093:弾丸

 雑踏の音の間に、銃声が響く。
 ばらまかれた弾丸は、次々に無関係な人を巻き込み、雑踏は色を変え、悲鳴が悲鳴を呼んだ。
 悲鳴の間に入り、飛び散る鮮血と、憎たらしい笑みを浮かべる犯人は、その後、飛び込んできた機動隊員に押さえつけられながら、こう言った。
「うるせえんだよ。てめえらの足音が。どうしようもないぐらいに」

094:自由自在

 難病にかかった少女が、世紀の大手術を前にして執刀医と対面した。
「手術が成功したら、何か欲しいものはあるかい?」
 執刀医が優しくそう聞くと、少女は自嘲気味に言った。
「自由自在に飛びまわれる鳥のような翼が欲しい。でも無理でしょうね。この手術はきっと失敗するし、私はもうすぐ死ぬ」
 執刀医は、ふてくされた心で手術に向かう少女に、強く言い返した。
「たとえば翼を手に入れても、必死に羽ばたかせようという気持ちがなかったら、鳥も空を飛べずに、大地に落ちてしまう。君のそういう気持ちが、1%の可能性を削っていくんだ。しっかりしたまえ」
 少女は、真剣に話す執刀医の言葉を聞いてもまだ、自嘲気味に口元を緩ますだけだった。

095:加速

「また加速しているね」
「ん、何が?」
「僕と君との距離が、どんどん離れていく気がするよ。速すぎるんだ。君はいつも」

096:蜃気楼

 砂漠にきっかりと見えたはずのオアシスの蜃気楼は、砂漠を歩く旅人に絶望を与える。
 今年の新卒採用は、まさに蜃気楼のようだ。
 大手企業に内定をもらっても、景気が悪くなったので断られる。
 直面した彼らにとっては、オアシスの蜃気楼に似たものがあったのではないだろうか。

097:春夏秋冬

 春は、苺のタルト、甘いショコラベリー。
 夏は、スイカのジェラートに、メロン。
 秋は、甘栗のモンブランに、柿のプディング。
 冬は、雪見だいふく。
 どうやら彼女の春夏秋冬は、甘いものだらけのようだ。

098:類似品

『類似品にご注意ください』
 そう書かれた注意書きの横には、同じような柄のシャツが、半値で叩き売られていた。

099:遺書

 ある老僧が、老い先短い資産家の相談を受けて、落ち着き払った態度でこう言った。
「確かに家族に遺書を残しておく事は大事です。けれど、本当の問題は、あなたが生きている間に、遺書に見合った家族関係を取り戻す事なのではないでしょうか」
 資産家は、老僧に言った。
「遺言書に、資産を全て何処かに寄付すると書けばいいんだな」
 焦る資産家の口ぶりから、家族のトラブルが深刻であると察した老僧は、顔をしかめた。

100:愛人

「僕とは恋人でなく、いつまでも愛人でいてほしい」
 独身の彼は、独身の私に向かって、真顔でそういった。
 意味はわかるし、言いたいこともわかるのだが、プロポーズにしては、余りにもピントがズレている。
 彼と結婚したいのに、どうしても踏み切れないのは、こういうところがあるからだろう。



====終わり====


>雑感

なげえーって感じと、
常用ネタにしないような漢字がバンバン出てきて焦った。
良いリハビリになったけど、今後はひかえようとおもう。