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恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

17.恋の温もり

2006年01月20日 | せつない恋
 心で何度叫んでも君に届かない。毎朝電車ですれ違う。君は降りて私は乗る。その瞬間に恋をしてしまった。
 毎日同じ時間、同じ車両の所で顔を合わせる。
 彼女と肩と肩があたりそうになるが彼女とは決して触れ合う事はない。目と目が合って時間が止まる事があっても彼女は私の方をふりむく事はないだろう。
 大きな目が私の肩に突き刺さっても彼女は知らぬ顔で電車を降りていく。
 通りすがる時、シャンプーのいい香りがする。
 私はサラリーマンをしている。毎朝彼女の姿を見る事が一日の楽しみだった。
 彼女は、私が住んでいる町で降りるから、多分勤めている会社があるのだろう。
 一度後をつけたくなったがストーカー扱いされるのであきらめていた。
 なぜ彼女の事をこんなに想っているのか。不思議でしょうがなかった。ただ一目会った時から、前世からずっと逢っている様な感じがしていた。
 きっと前世でお世話になった人なのかもしれない。惹かれる運命なのかもしれない。前世で何かあったのなら彼女の方も私に何かしら感じているはずだと思った。
 次の朝。いつもの時間。いつもの車両。駅のアナウンスが電車がホームに入ってくる事をつげていた。
 電車がホームに入る。電車がゆっくりと止まる。私はドキドキと胸が高鳴る。電車のドアが開く。彼女が静かに降りてくる。
 彼女が通り過ぎる時、時間が止まる。約30秒。その30秒は彼女と私だけの時間のような気がした。
 周りにいた化粧が濃いOL、にぎやかな女子高生二人、体格がいいおじさん、男子学生の集団が視界から消え、彼女と私だけになる。
 周りの人達が見えなくなり、彼女だけに視線がいく。
 音という音も無くなる。さっきまで聞こえていたアナウンスや電車の音が宇宙の果てのように音がなくなってしまう。
 彼女の姿を見ると胸が苦しくなる。声をかけたいが、彼女は知らぬ顔で通り過ぎていく。
 私のすぐ側を通り過ぎているのに、彼女の甘い香りがするのに、目と鼻の先にいるのに、触れ合う事が出来る距離なのに、けして触れ合う事はない。君は知らぬ顔で通り過ぎていく。
 今日も声をかけられず、満員電車に乗り込み、手すりに掴まって、車窓から見える景色をボンヤリと見ながら、景色と時間だけがただ流れていた。
 
 


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