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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

3.フランス人形

2018年07月09日 | 家族
 私が子供の頃、叔母ちゃん家に泊りに行くことになった。2階建ての大きな家に一人で住んでいた叔母は、快く迎えてくれた。玄関先には、吹き抜けがあり、入り口の所にフランス人形が50体くらいあった。金色の髪、青い大きな目、ドレスを着た人形が、ずらっと並んでいる。一度も結婚することもなく、一人暮らしが長い叔母は、子供もいなくて、その寂しさをフランス人形で補っているようだった。
 私が「どうして人形集めるの?」と聞くと、「全部、私の子供たちだから。」と叔母は、勝ち誇った顔をしていた。
 私からすると、青い目の人形は、今にも動き出しそうで怖かった。見ていると、目が動いた感じがした。
 その夜、お風呂のシャワーを浴びていると、お風呂ドアをトントンと小さな音が聞こえてきた。振り返ると、ドアの所に小さな影があった。
 びっくりして、体が固まった。フランス人形が動いてきたに違いないと思って見ていると、影が見えなくなった。
 体の続きを洗っていると、また、トントンと叩くような音がして、振り返ると、また、小さな影がいた。
 私は、怖かったので、お風呂で潜った。一時して、叔母が見に来て、早く上がるように言った。
 私が、「人形が動いて来たよ。」と言うと、「いたずら好きだから。気にしない。気にしない。」と答えた。まったく、叔母は頭がおかしくなったのかと思ったが、そういう事もあるかもしれないと思った。
 寝ている時も、どうも寝れなくて、結局、父から迎えに来てもらって、自分の家へと帰った。
 叔母が死んで、もう10年たつがあのフランス人形たちがいなかったのを思いだした。
 自分が死ぬと分かった時点で、叔母が処分したか。または、それぞれの家に、夜な夜な自分の家へと帰って行ったのかもしれない。
 大人になった今考えると、ドレスを着た目の青い人形が「よいしょ。よいしょ。」と家の窓を登り、泥にまみれて、自分の家に帰る姿を想像したら、叔母が言うように怖くないかもしれないなと思った。
  
 


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