賢太郎の物書き修行

IT系と政治関連の事件を中心にコラム風に書いています。趣味は舞台、だけど最近は殆ど観てないな~。

「郵貯の預入限度額引き上げ」について

2010-01-21 16:31:02 | ビジネス

通常国会が政局化する中、郵政民営化の見直し論議が進められている。この通常国会で提出されるかどうかは不明だが、政府が検討している中に「郵貯の預入限度額引き上げ」というものがある。

『民業圧迫ではないか』
20日の日経新聞に全国地方銀行協会の小川是会長(横浜銀行頭取)の会見内容が掲載されていた。郵貯の改革には「経営規模の縮小、公正な競争条件の確保、地域との共存の3点が重要だ」と発言したということだが、この発言に政府-特に、亀井大臣あたり-はどの様な反応を示すだろうか?その前日の19日に亀井大臣が「限度額撤廃検討」の会見を開いている。
以前より亀井大臣は「銀行が中小企業をいじめている」などとの発言を繰り返しており、むしろ民間金融業を縮小整理しようとしているのではないかと思う。
つまり、亀井大臣は確信犯的に「民業圧迫」を行おうとしているのではないだろうか。郵貯の民間への貸付は現在はほとんど行われていない。その貸付基準を緩和しようとしているのではないか。これが仮に進むとすれば、日本の金融市場が国営金融機関に支配され、海外からの投資が逃避し、自由経済の基盤の一つである金融市場は事実上崩壊するということになる。

『金融政策で中小企業は救えない』
亀井大臣は地方経済の活性化や中小企業への融資強化といったことをしきりと言っている。昨日は日銀の白川総裁とも会談をもったということだ。亀井大臣は白川総裁に「こうした中小企業の厳しさが日本経済全体の悲観的な見方につながっているのではないか。それとも、大企業が大丈夫だが、中小企業はもう構わないということなのか。そのあたりはどうなんだ」と迫ったというが、これは産業政策の問題であって金融政策の問題ではないので筋違いの議論である。亀井大臣は意図的に混同させて白川総裁をやり込めようとしたのかもしれない。
いま金融出動が中小企業に有効でないのは、亀井大臣自身が言及したように資金需要がないからだ。それは中小企業に成長余力がないからで、企業自身の「イノベーション」の問題であって民間が自身で解決しなければいけない部分が多い。それを日銀総裁に迫ってもキョトンとされるだろう(パフォーマンスとしては銀行の親玉をやり込めるというのは意味があるだろうが)。だから、亀井大臣がやりこめるのであれば菅副大臣(経済財政担当)と直嶋経済産業大臣の二人だと思う。

『郵貯の地域分割を』
以前も書いたのだが、僕は郵貯はむしろ地域分割して地銀や都銀に譲渡した方が良いのではないかと思う。経済政策や産業政策は地方で実施される。その時の金融サービスは地銀や地元の信金などが担う。それらの金融機関が機動的な資金移動を行うためにも、地域の貯金を地域で運用しなければいけない。それには、郵貯が全国営業するよりも、それが地域毎に分割されているべきだ。

『官から民へを促進しよう』
郵貯を地域分割して地域金融機関に譲渡すれば、「官から民へ」というメッセージを強く訴えることが出来る。譲渡条件として、エリアごとのユニバーサルサービスを付与すれば、過疎地へのサービスが無くなるということはない。過度に巨大な郵貯(日本最大の貯金残高)を分割することは、巨大さゆえに停滞していた郵貯の改革を進めるだろうし、業界ナンバーワンの変化は他の金融機関にも良い影響を与える。民間の活力に郵貯のリソースが加われば、地域経済に良い影響を与えることは間違いないと思う。


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