賢太郎の物書き修行

IT系と政治関連の事件を中心にコラム風に書いています。趣味は舞台、だけど最近は殆ど観てないな~。

書評:アインシュタインの夢

2008-04-07 14:53:13 | 書評
ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのかを読んでから、参考書として上げられている本を読みたいと思っていたが、時間とカネがなく、ずっとのびのびになっていたのをやっと読んだ。特殊相対性理論を生み出したアインシュタインが論文を書いた時期に「見たかもしれない」夢を現役物理学者がショートショート形式の小説として描き出した短編集。実に叙情的で、一篇一篇が詩のようでもある。訳者はさぞかし大変だっただろう。
テーマは「時間」である。さまざまな時間の「ありかた」がある。終わりが分かっている時間、逆転する時間、エントロピーが減少する時間などなど。星新一や筒井康隆の短編にも似た読後感があった。
自分の身の回りの「時間」だけでなく、色んな物事をあらゆる角度から見つめるヒントになると思う。

アインシュタインの夢 (ハヤカワepi文庫)
アラン ライトマン
早川書房
売り上げランキング: 25568
おすすめ度の平均: 3.5
4 さまざまな「時間」の世界
3 感性を刺激する詩的な側面よりも、科学的な疑問が勝ってしまいました。
3 ドラマ化されたら見てみたい
4 発想をオープンに
4 詩的で不思議な小説世界


書評 地頭力を鍛える

2008-03-21 14:09:09 | 書評
「フェルミ推定」という言葉に惹かれて読んだ。最初にフェルミ推定の問題があり、3分で暗算した。その後、「地頭力」判定のチェックシートがあり、見てみると全てクリア。・・・読むまでもなかったか。フェルミ推定を知っていたり、ロジカルシンキングなどが分かっている人には無用の本。ただ、ビジネスパーソンとして考える力を身につけたいと思っている人の入門編としては良いかも。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷 功
東洋経済新報社 (2007/12/07)
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おすすめ度の平均: 4.0
3 コンサルティング会社っぽい
5 麻雀も頭使わず負けてばっかだったけど
5 久々に面白いビジネス書を読みました

書評 V字回復の経営

2008-03-21 13:59:09 | 書評
古い本だが、三枝氏の他の本を読んで興味を持ったので読んでみた。

戦略転換にあたり、「力のリーダー」「知のリーダー」「動のリーダー」が揃っていることが必要という言葉は響いた。氏は「全てが揃っている人は少ないが、それぞれの要素を数人で満足させることは出来る」と書いている。確かに自分も含めてその様なリーダーシップを発揮できるかと言われると心もとない。だが、蛮勇を奮うことも、論理的に考えることも、具体的に動くことも、ビジネスパーソンとして重要なことなのだと思った。
ビジネスって面白い。

V字回復の経営
V字回復の経営
posted with amazlet on 08.03.21
三枝 匡
日本経済新聞社 (2001/09/17)
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おすすめ度の平均: 4.5
5 会社って面白い!
5 すぐ読めて経営と改革がわかる!
5 何度も読み返したい熱い本


書評 問題解決と意思決定のツールボックス

2008-02-24 21:11:47 | 書評
パラパラとめくりつつ、ちゃんと読んでいなかったのを漸く読んだ。

状況把握、問題解決の策定のための手順、潜在的問題/機会の分析とレビューまで実践的なプロセスが記述されている。

なかでも「経営することは製造すること」と指摘し、プロセスを整えることを重視しているのが良いと思った。

事実の認定、分離、オプション、オプションの評価、決定という流れを問題解決だけでなく、全てのプロセスで繰り返すことが解説されている。

マネージャとしてこのプロセスを組織に理解させ定着させることが出来ると、成果の出る組織になると思う。

問題解決と意思決定のツールボックス―思考するマネジャーへの実践的強化書。 (BEST SOLUTION)
ウィリアム・J. アルティエ William J. Altier 木村 充
東洋経済新報社 (2000/10)
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2 わざとやってるの、この翻訳???
5 問題分析関連の整理ができました
2 内容は良いが、翻訳が悪すぎて悲鳴を上げる!


書評 議論のルールブック

2008-02-24 19:01:07 | 書評
主にネット上の掲示板やブログなどでの「炎上」を伴うような議論における対処法が書かれている。ネット上の題材を取り上げているものの感情論やインチキ理論、冷笑主義など実社会や会社などでの会議や議論でも参考になると思う。

結局、議論というのは自他の主張=理論を俎上に上げて客観的に批判しあい、より良い結論を得ようとするものだが、なかなかそういうわけにいかないところが難しい。特に、日本では理論の批判が発言者への批判と同一視されるため、なかなか建設的な論評がされない。その意味では現在ネット上で多くの議論が繰り広げられていることは良い「教育の場」になっていると言えるのではないだろうか。

議論のルールブック (新潮新書)
岩田 宗之
新潮社 (2007/10)
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おすすめ度の平均: 4.0
4 面白いけどちょっと読みづらい
4 読み物として面白い
3 タイトルと内容が合っていない


書評 ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア

2008-02-24 18:51:41 | 書評
「ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア」を読む。

書いてある内容は他のハック本と似ている。ただ、心理学に造詣の深い著者が提唱する「認知リソースを開放する」という解説には納得できる。人間それほど覚えていられることは多くないってことだ。だから、脳みそを開放してすっきりする必要があるってこと。

ライフハックって突き詰めるとそういうことなのだと思う。「思い煩うこと」をどれだけ少なく出来るか。ともすれば「思い煩うこと」が仕事だと勘違いする人も多いが、本当は思い煩うことを少なくして必要なことだけ思い煩ったほうが良いということだと思う。他のハック本を読んだことがある人には特にすすめないが、「認知リソースの開放」というコンセプトだけ読んでみるのも良いと思う。

ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア (MYCOM新書)
佐々木 正悟
毎日コミュニケーションズ (2006/12)
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おすすめ度の平均: 4.5
5 専門家になる方法
5 真っ当な「ハックス」
4 心理学的・脳科学的な知見


書評 デキる広告52のヒント

2008-02-22 14:26:55 | 書評
デキる広告52のヒント
デキる広告52のヒント
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スティーブ・ランス ジェフ・ウォール 川喜田 尚
リベルタ (2008/02)
売り上げランキング: 58940

友人が翻訳出版をしたので早速読んでみた。

広告が消費者や顧客との接点の一部であるとして、それはマーケティングの方針や製品の戦略に裏打ちされていなければいけない。そして製品戦略自体が競争力がなければいけない。本書は最初に企業戦略の基本的な概説から始まり、それをマーケティングに展開していくステップが詳説されている。そして、後半は広告マンとして有用なTipsが多く紹介されている。戦略を土台に、製品を開発して、それを広告に展開する。広告作りは奥深いし、面白いものなのだなと思った。

<追記>
翻訳者は長年放送業界にかかわり、マスメディアにおける広告の効果をよく知っている。だから、翻訳の内容が的確。特に広告における空白の表現は原著の表現がそうだったのだろうが、秀逸。

「アイデアのつくり方」と「十牛図」

2007-11-06 12:09:00 | 書評
大分前に本を読んで、その時に感じたことをちょこちょことメモしていたのだが、少しだけまとめておこうと思う。

ヤングの「アイデアのつくり方」は古典の域に入っていると思う。

アイデアのつくり方
アイデアのつくり方
posted with amazlet on 07.11.06
ジェームス W.ヤング 今井 茂雄
ティビーエス・ブリタニカ (1988/03)
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ヤングが解説する方法は単純だけど難しい。ヤングはアイデアを作り出すプロセスは5つの段階で進むと言っている。
  1. データ集め
  2. データの咀嚼
  3. データの組み合わせ
  4. ユーレカ(発見した!)の瞬間
  5. アイデアのチェック
「データ集め」ではとにかく関連する事柄をどんどん調べていく。広く、深く、出来る限り多くのものを調べて集めるということが大事だ。そして、それを「咀嚼」するわけだが、そのためにはデータを分類したり、整理しなければいけない。京大式カードの利用などで整理しよう。僕はB6サイズの情報カードを良く使っている。そこに集めたデータを書き写したり、縮小コピーしたものを貼り付けて、様々な属性で整理をしていく。データの咀嚼をしていると新しいアイデアやデータを作り出すことがある。この「メタ情報」も同じように情報カードに書き込んで整理していく。そして、あらゆるデータの「組み合わせ」を試して様々な角度から情報を眺めていくことが必要だ。そして、「ひらめく(ユーレカ)」瞬間が来るのを待つ。最後は、そのアイデアをチェックしていくことでアイデアが計画に洗練化されていくということだ。

この本を読んでいて、「十牛図」を思い出した。十牛図(じゅうぎゅうず)は禅の悟りにいたる過程を牛を題材に示したものだ。十~というだけあって、その段階は10段階になっている。
  1. 尋牛(じんぎゅう) - 牛を捜そうと志すこと。悟りを探すがどこにいるかわからず途方にくれた姿を表す。
  2. 見跡(けんせき) - 牛の足跡を見出すこと。足跡とは経典や古人の公案の類を意味する。
  3. 見牛(けんぎゅう) - 牛の姿をかいまみること。優れた師に出会い「悟り」が少しばかり見えた状態。
  4. 得牛(とくぎゅう) - 力づくで牛をつかまえること。何とか悟りの実態を得たものの、いまだ自分のものになっていない姿。
  5. 牧牛(ぼくぎゅう) - 牛をてなづけること。悟りを自分のものにするための修行を表す。
  6. 騎牛帰家(きぎゅうきか) - 牛の背に乗り家へむかうこと。悟りがようやく得られて世間に戻る姿。
  7. 忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん) - 家にもどり牛のことも忘れること。悟りは逃げたのではなく修行者の中にあることに気づく。
  8. 人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう) - すべてが忘れさられ、無に帰一すること。悟りを得た修行者も特別な存在ではなく本来の自然な姿に気づく。
  9. 返本還源(へんぽんげんげん) - 原初の自然の美しさがあらわれてくること。悟りとはこのような自然の中にあることを表す。
  10. 入鄽垂手(にってんすいしゅ) - まちへ... 悟りを得た修行者(童子から布袋和尚の姿になっている)が街へ出て、別の童子と遊ぶ姿を描き、人を導くことを表す。
この図は「アイデアのつくり方」に通じると思う。
アイデアも最初は何をすれば分からないので、本を読んだり先輩の話を聞いてデータを集めていくところから始まる。色んなデータを集めていくと、知識量が増えるので「分かった気に」なってくる。しかし、その状態で他の人と意見交換すると、批判に耐えられずにタジタジになったりする。そこで、もっと良く考えて情報を整理して没入することになる。そうして対象となることに精通して関係者と意見交換をして議論することが出来るようになる。そして、その内に整理して導き出した理論やコンセプトを意識しなくても話が出来るようになって、忘れていく。しかし、忘れた状態でこそ本当にその人の血肉になっているということで、ここまで来ればデータに基づいたアイデアが次々と湧き上がってくるようになる。アイデアを人に教えたり、他の人の意見やアイデアについて適切な助言や批判を加えることが出来るようになる。

ここでのポイントは
  • 先人の教えを学ぶ
  • 生半可な理解で先に進まない(徹底的に知り、考える)
  • 集めた情報とその解釈(咀嚼)が十分であれば、情報を忘れてもその本質は忘れない
ということだろう。

「十牛図」は哲学的で難解なので、実践としては「アイデアのつくり方」を踏襲すると良いと思う。

クリエイティブ・クラスの世紀

2007-07-23 12:14:53 | 書評

クリエイティブ・クラスの世紀

  • リチャード・フロリダ
  • ダイヤモンド社
  • ¥2,520
  • goodgoodgoodgoodgoodオススメ度: 5

経 済的発展がその都市や地域の3つのT(技術(Technology)才能(Talent)寛容(Tolerance) )によって支えられると主張している。更に、大前研一の主張を取り上げて国家という単位ではなく国境を越えた「地域」という単位でクリエイティブに従事す る人材をひきつけないといけないと言っている。

僕は福岡の出身だが、この地域はクリエイティブクラスを惹きつける魅力を出せると思う。
1)学術機関:九州大学をはじめとする学術機関が集まる
  北九州には九州工業大学という理工系大学もあり、
  1時間で行き来できる。
2)住環境:郊外に開発余地があるため住宅地の確保も容易
3)芸術:福岡市は九州各地から若い才能が集まるところと
  して知られており、創造性が刺激される街になっている
4)交通の便:日本で唯一市街地に30分でアクセスできる
  空港があり、域外との交流も容易
5)寛容さ:古くから商人の町として栄えたため、部外者の
  流入に対しては寛容。商人の祭りである山笠でさえ、
  適当な商人の後ろ盾があれば参加できるシステムがある

制度的には、流入してくる才能への優遇(税制や住居、ビザなど)を強化することが必要である。また、学術機関への助成などは地域が後ろ盾となってとっていけば、若い才能の定着にもつながるだろう。何よりも、街が凝縮していて生活しやすい。

などということを刺激されて考えさせられた良書だ。


平松庚三

2007-03-25 17:43:54 | 書評

書評 - ボクがライブドア社長になった理由

ライブドアが行ったM&Aには賛否両論があるが、絶対に正解だったものが少なくとも一つある。

弥生の買収、だ。

なぜそれが正解だったか?

平松庚三その人がいたからである。

ソニー退社後、経営者を歴任してきたこの人なくしてライブドアが未だに会社として機能することは難しかっただろう。有能なスポークスマンであり、優秀な組織管理者であることが必要な段階に至っていたライブドアは必要な時期に必要な人を得たということで幸せだった。小飼氏が以前テレビで言っていたが、ままごとみたいな会社だったオンザエッジを会社としての体裁を整えることが彼の仕事だったといっている。そうすると、彼の去った後に上場企業にまで拡大した会社をマネージすることが新たに求められていて、それが平松氏だったんだろう。