DrKの株日記

現役医師が仕事の合間をぬって株と格闘するブログ

タービン建屋は水棺にできない

2011年04月23日 | Weblog
<福島第1原発>トレンチ水位2センチ低下 2号機

トレンチという構造物が東電の隠蔽のために理解できなかったので
それの水位がどういう意味を持っているかわからなかった。

今回、構造図があったので考察してみた。

タービン建屋とトレンチの関係図

タービン建屋の一番下部に位置している復水器の下部からどうやらトレンチを通じて
海へとトンネルが繋がっているようだ。
「トレンチはタービン建屋と海との間にある凹字形トンネルで、非常用電源を冷やすための海水が通る配管や海水をくみ上げるポンプのケーブルなどを納めている。」

重要なのはトレンチの高さ(海抜高度)だ。
図を見る限りどうやらタービン建屋のかなり低い位置が海抜高度のようだ。

タービンの高さ=復水器の最上部がおそらく地上のレベルと書いた。
ここに原子炉の圧力容器からつながる蒸気の配管があり
原子炉建屋ではこのレベルまで水没している。

そこから滝のようにタービン建屋の復水器の下部に向かって汚染水が
流れ落ちていると想像できる。
(復水器の一番下部にピットというのがあるらしい?)

ここで想定外のことが判明した。
図をよく見て欲しい。

トレンチの海側の出口の高さが復水器の半分ぐらいまでしかない。
(あくまで図が、ある程度正確であると仮定する)

サイフォンの原理により(厳密にはちょっと違うけど許して)
トンネルの出口よりタービン建屋の水位が高くなるとトレンチから水が溢れ出てくることになる。

つまり復水器の半分ぐらいまでしかタービン建屋には水が貯められないのだ。
もちろんこの高さは原子炉建屋の汚染水の水位より低いので
原子炉建屋からはどんどん水が流れ落ちてくる。

あの何の変哲もないトレンチの小さな穴は
タービン建屋地下に溜まった汚染水の水位を表しているのである。

だから作業員が必死になってここから汚染水が溢れてこないように作業しているのだ。

しかし、海からわずか55mしか離れてないのでコンクリートから海に染み出てると仮定してよいだろう。
前のブログで引用したところによると
「4月1日、海水スクリーン横から高濃度汚染水が取水口の海に漏水しているのが見つかった。これはセメントで漏れ止めしたが止まらない。吸水性高分子ポリマーを流し込んでも止まらない。コンクリート製トレンチの下に敷いた敷石層が水脈となって流出していると見られる。流出量は7ton/h程度、2号機への注水量とほぼバランスしている。敷石層に水ガラス(珪酸ソーダ)を注入して流量は少なくなり、ついに4月6日完全に止まった。」

汚染水が漏れでてきていたのはトレンチの出口そのものではなくその横あたりからのようだ。
水ガラスで塞いだのはトレンチの出口ではない。
(むしろ出口からポンプで排水しているのか?)

そして今現在がタービン建屋地下の貯水可能な上限レベルのようだ。

結局、タービン建屋を原子炉建屋の地下と同じ水位まで満たすことはできないのだ。
そして、まだ時間的に余裕があると思われてきた
カウントダウンはすでに残り僅かであるようだ。

…で最初の記事
「トレンチの立て坑に設置したポンプで汚染水をくみ上げ、集中環境施設のうちの最も容量の大きいプロセス主建屋地下2階に汚染水を移送している。5月14日ごろまでに計1万トンを移送する予定だ。」

もうすでに
原子炉→原子炉建屋地下→タービン建屋地下→トレンチ→ポンプで排出
→集中環境施設
という汚染水のルートが完成し、最終局面に到達している。

集中環境施設の貯水量は地下だけで約5万4000トン
汚水の流出量は7ton/h程度(2号機への注水量とほぼバランスしている)
トレンチからこの量の汚染水が流出してきていると仮定すれば
ここを塞ぐ手立てがないことが説明できる。

ちなみに約1ヶ月で1万トン排出というのは
1万÷30÷24=14ton/h の排出を想定しているようだ。

集中環境施設は空であったから2号機だけで5ヶ月分。
移送計画に1、3号機が含まれているのか不明だが、これ以上持ちこたえられないのは確実。


結論

①タービン建屋を水棺にすることはできない。
②トレンチの水位はものすごく重要である。
③放っておくとトレンチから高濃度汚染水が溢れでてくる。
④もう時間がない。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
水棺以前の問題 (墓碑銘)
2011-05-05 18:54:34
初めまして、水棺が完成するまで建物が保つかどうかそれすら保証できない状態でしょう。理由は以下の通りです。
原子力発電所は使用済み燃料プールの上部天井が鉄骨でできていてそれ以下は鉄筋構造物ではないかと思われます。建物の強度は震度5までしか想定していなかったそうですから、当然津波以前の地震そのものでもかなりの破壊、少なくとも燃料プールからの水の溢れや漏出があったものと思われます。それに加えて以後の津波と水素爆発で確実に建物にクラックが生じているでしょう。そこへ海水を大量にかけましたから、鉄筋に錆が生じます。コンクリート内部の錆によってコンクリートそのものが破壊されます。これに対する処置が何も採られていない以上この建物は近いうちに確実に崩壊します。建物自体が崩壊すれば使用済み燃料プールや原子炉そのものも支えを失います。これが今後生ずる過程でしょう。問題はそれが何時起こるかです。それほど先ではないと思います。それ以前に建物、原子炉、燃料プールのあらゆる場所に亀裂や穴があると思われるのにそれを補修せず(放射線量からして作業自体ができない)水棺が成立すると考えているところが信じられません。こんなことは専門家でなくても分かります。バカにするなと言いたいです。
返信する
民主党の嘘について (りん)
2011-04-25 16:49:06
後、数年後に福島原発事故による癌にかかかる日本人が多発したとき、気づいた日本人は、民主党政治家をどうするでしょうか。彼らは、東電の責任にして、日本から脱出して彼らの支持母体である中国か朝鮮半島にでも家族ごと逃亡するんでしょうかね。
私は広島の近くに住んでいます。k様と同じく兄弟、両親、親せきに医師が多いです。
患者様にも広島で直接被爆してなくても内部被ばくによって今でも多くの罪のない日本人が何世代にもわたって苦しんでいるのです。
この放射能の恐ろしさがわかっているから、日本人を殺そうとする民主党と保安院、東電の嘘だらけの欺瞞は絶対に許せません。
もし、これから関東、東北で大量の奇形時、小児がんが数年後に発生しても民主党は責任を取るつもりは一切ないでしょう。
こんなことは、広島、長崎のアメリカによる日本人に対する人体実験で明らかにされています。そしてその後の政府の対応も。
結局、早く真実に気付いて逃げたものが勝ちなのではないのでしょうか。
放射線障害でおなくなりになった長崎の患者さまの検体の細胞からは戦後66年以上たても放射能が細胞から照射されています。
もし、自民党があのまま政権をとっていたならばここまで原発事故の人災が酷くならなかったのにと思うと悔しいです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。