夢を見た。
朝起きると、旦那が部屋にいた。
「どうやって入ったの?」聞いてみた。
昨夜は、ドアの鍵と、補助錠と、別居してからつけたリモコン式の鍵を確認したはずだった。
「これ」と旦那が、リモコンキーを見せた。
どうしようと慌てたところで、目が覚めた。
何をされるかわからない、怖いという思いが強かった。
昨夜のドラマ
「小早川伸木の恋」の中で、奥さんが同じようなことをしていた。
けれども、私は、鍵を渡すチャンスを与える気持ちがない。
私も、かつては奥さんと同じように、愛してくれることを求めていた。
私の持つ理想の家庭像を、一緒に築いてくれることが、愛してくれていることだと思っていた。
家族はみな、同じように考え、同じように行動すべきだと考えていた。
かつて、父と母が私が求めたように・・・・・
私は、自分が育った環境がすばらしいものだったと信じて疑わなかったから。
家族よりも、仕事を第一に考える旦那に対して、愛されていないと思った。
約束しても時間に遅れてばかりいる、頼んだこともせず寝てばかりいる旦那は、家族を愛していないのだと、その度に、不平不満をぶつけてきた。
旦那は、私の思いを受け止めてはくれなかった。
私が、思いをぶつければぶつけるほど、反論され傷つけられた。
解ってもらえない思いは、持って行き場がなかった。
私の人格までをズタズタにしてしまう旦那の言葉。
最後には決まって「出て行け」と言われ、何度も泣きながら出て行った。
「死んでやる!!」最後の切り札だった。
そうすれば、解ってくれるのだと、私のことを大切にしてくれるのだとそう思った。
マンションの階段を駆け登り、最上階まで上がった。
あてつけにしか過ぎなかった。
ただ一度、本当に死のうと思ったとき以外は・・・・・・・・
その後、優しくなるのを私は知っていた。
「ごめん」と旦那は何度も謝った。
「不安だから傍にいて欲しい」と仕事にも行かせようとはしなかったことも数回ある。
私は、子どものように泣き喚き、駄々をこねた。
苦しくて苦しくてたまらなかった。
寂しい気持ちを埋めて欲しくて、求め続けていた。
でも、いくら求めても私の心は、空っぽのままだった。
満たされない思いばかりが膨らんだ。
今まで、誰に対しても、そんな風になったことはなかった。
私がここまで追い込まれるのは、旦那のせいだと思った。
いつか解ってくれるのだと信じ続けていた。
でも、少しずつ旦那は私から離れていった。
求めれば求めるほど遠くなった。
そして、少しずつそれに慣れていった。
愛されることを期待しなくなった。
ただ、子どもを大切にして欲しかった。
家族を守って欲しかった。
私が嫌だったのは、旦那が他の女性と付き合うことでもなく、
旦那の心の中に、家族の姿が見えないことだった。
本当は、家族を愛していたのかもしれない。
でも、それを表現する方法を知らなかったのかもしれない。
そして、それに私も気が付かなかったのかもしれない。
私には、旦那の気持ちがわからなかった。
たぶん、旦那にも、私の気持ちが伝わっていなかったのだろう。
あまりにも違う家庭環境に育ってしまった私たちは、そして互いに自分が正しいと信じて疑わなかった私たちは、歩み寄る気持ちなどなかったのだから。
仕事だけを一生懸命して、組織の中で認められることが生きがいになってしまった旦那。
いくら、一つのコマに過ぎないことを説明してもわかってもらえなかった。
最初からそうだったわけではない。
次女が生まれた頃から、少しずつ旦那は変わっていき始めた。
そういう仕事に変わったのも一つの原因だったであろう。
そして、私が仕事を辞めたとき、一気にバランスが崩れた。
私も、組織の中で認められることで、旦那に認めてもらえない気持ちをバランスよく保っていたのだから。
私が仕事を辞めるまで、私の方が上位の立場にいたようだった。
私は気にしたことがなかったが、旦那から見ればそうだったのであろう。
結婚式の来賓の階級や、私の学歴、そんなことをいつまでも気にしていた。
給料の額も変わらなかったし、私は階級を問わず付き合いもあった。
同じ職場にいる限り、ねこの旦那さんとして扱われることも多かったのだ。
私が、仕事を辞めたとたん、解き放たれたようだった。
「お前のせいで、あいつにペコペコしなければならなかった」
私と仲の良かった上司をののしった。
私が誰かを褒めるたび、旦那は必ず、その人を否定した。
旦那は、自分が一番正しいと思っているのだと思った。
「自分が一番えらいのだ」と旦那はよく言った。
「何故、お前は自分に自信がないのか?わしは自分が一番好きだ」そう言った。
時に攻撃的に旦那を責め、時に自虐的に自分自身を責めてしまう私のことを、
「おかしい。病院に行け。きちがい。」とののしった。
でも、今ならわかる。
旦那は私に褒めて欲しかったのだと、私が褒める誰かに嫉妬してたのだと。
変なところで、私と旦那は似ていたのだと・・・・・・
お互いに傷つけあってばかりいた。
旦那に必死に愛を求めていた、あの頃に気がつけたなら、私たちはどうなっていただろう。
傷つけあって、ボロボロになって、旦那から愛されることからも背を向けていた私の心が、旦那の方に向くことがあるのだろうか?
怖いという思いが、何かされるのではという気持ちが無くなってしまった時、もう一度、最初から始めることが可能になるのだろうか?