昨今、改めて売れていたのでご存知の方も多いかと。
この本は1937年、日本が日中戦争に進んで行く時に書かれたそうです。
作者は吉野源三郎氏で児童文学者であり編集者。
1899年に生まれ、1981年82歳でこの世を去っています。
私の年齢の感覚ですと最近まで存命されていたというイメージですが😅
今回読んだのはマガジンハウスから2017年に発行されたものです。
冒頭に池上彰氏による寄稿文があり、上記の内容も書かれています。
池上さんは、子供の頃に父親がこの本を買ってくれたそうです。
さすが池上家!親が子供に選んで与えるものが違いますね。
日中戦争という少し遠い時代に書かれていても、内容は今でも刺さることが書かれています。
以下は私が心に残ったテキストです。
【おじさんのNOTEから】
■人間であるからには-貧乏ということについて-
・貧しい暮らしをしている人というものは、たいてい自分の貧乏なことに、引け目を感じながら生きているもの。
・たとえちゃんとした自尊心をもっている人でも貧乏な暮らしをしていれば何かにつけて引け目を感じるというのは免れがたい人情。
・今の世の中で、大多数を占めていり人々は貧乏な人々だからだ。そして、大多数の人々が人間らしい暮らしができないでいるということが、僕たちの時代で何よりも大きな問題となっているからだ。・浦川くんのうちでは、貧しいといっても、息子を中学校にあげている。
・自分の労力のほかに、なに一つ生計をたててゆくもとでをもっていない。一日中からだを働かせて、それで命をつないでいるのだ。
・こういう人々が、万一、不治の病気にかかったり、再び働けないほどの大怪我をしたら、いったい、どうなることだろう。労力一つをたよりに生きている人たちにとっては、働けなくなるということは、餓死に迫られることではないか。
・今の世の中では、からだをこわしたら一番こまる人たちが、一番からだをこわしやすい境遇に生きているんだ。
・粗悪な食者、不衛生な住居、それに毎日の仕事だって、翌日まで疲れを残さないようになどと、ぜいたくなことな言っていられない。毎日、毎日、追われるように働きつづけて生きてゆくのだ。
・世の中の人が生きてゆくために必要なものは、どれ一つとして、人間の労働の産物でないものはないじゃあないか。
・人々の労働なしには、文明もなければ、世の中の進歩もありはしないのだ。
・大きな顔して自動車の中にそりかえり、すばらしい邸に住んでいる人々の中に、案外にも、まるで値打ちのない人間の多いことがわかるに違いない。また、普通世間から見くだされている人々の中に、どうして、頭をさげなければならない人の多いことにも、気がついてくるに違いない。
■人間の悩みと、過ちと、偉大さについて
・本来王位にあるべき人が、王位を奪われていれば、自分を不幸だと思い、自分の現在を悲しく思う。彼が、現在の自分を悲しく思うのは、本来王位にあるべき身が、王位にいないからだ。
・こうして悲しいことや、つらいとことに出会うおかげで、僕たちは
本来人間がどういうものであるか、ということを知るんだ。
・からだに痛みを感じたり、苦しくなったりするのは、故障ができたからだけれど、逆に、僕たちがそれに気づくのは、苦痛のおかげなのだ。
・苦痛を感じ、それによってからだの故障を知るということは、からだが正常の状態にいないということを、苦痛が僕たちに知らせてくれるということだ。もし、からだに故障ができているのに、なんにも苦痛がないとしたら、僕たちはそのことに気づかないで、場合によっては、命をも失ってしまうかもしれない。
・およそ人間が自分をみじめだと思い、それをつらく感じるということは、人間が本来そんなみじめなものであってはならないからなんだ。
・僕たちが、悔恨の思いに打たれるというのは、自分はそうでなく行動することもできたのにー、と考えるからだ。それだけの能力が自分にあったのにー、と考えるからだ。
まだまだありますが…
このあたりで打ち止めます💦
中学一年生で読んでもらいたい本と私は思いました。