牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

2月15日(金) 「マネジメント 基本と原則③」 ピーター・ドラッカー著

2013-02-15 08:01:10 | 日記

 昨日、小樽雪あかりの路という祭りの開催に合わせて小樽文学館&小樽美術館で開かれたピアノ&チェンバロコンサートに参加した。こじんまりとしていたが、ベートーベンの「田園」などが演奏され、心に響く良いコンサートであった。

 さてパート1は「マネジメントの使命」であったが、パート2のタイトルは、「マネジメントの方法」である。本からの引用。「マネジャーをしてマネジャーたらしめるものは、成果への貢献という責務である。、、、、マネジャーの役割は、部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造することである。それは、オーケストラの指揮者に似ている。オーケストラでは、指揮者の行動、ビジョン、指導力を通じて、各パートが統合され生きた音楽となる。したがってマネジャーは、自らの資源、特に人的資源のあらゆる強みを発揮させるとともに、あらゆる弱みを消さなければならない。これこそ真の全体を創造する唯一の方法である。マネジャーはマネジメントの一員として、事業のマネジメント、人と仕事のマネジメント、社会的責任の遂行という三つの役割も果たさなければならない。この三つのうち一つでも犠牲にする決定や行動は、組織全体を弱体化させる。あらゆる決定と行動は、三つの役割すべてにとって適切でなければならない。」

 「あらゆるマネジャーに共通の仕事は五つである。①目標を設定する。②組織する。③動機付けとコミュニケーションを図る。④評価測定する。⑤人材を開発する。、、、、、マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。」


 続いて本からの引用。「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行なわせることにある。天才に頼ることはできない。、、、、要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。」
 1.組織の焦点は、成果に合わせなければならない。
 2.組織の焦点は、問題ではなく機会に合わせなければならない。
 3.配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行われなければならない。これらの決定こそ真の管理手段となる。
 4.これら人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件であり、すでに身につけていなければならない資質であることを明らかにするものでなければならない。

 「成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、間違いや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くの間違いを犯す。優れているほど新しいことを試みる。」

 著者は今まで成果を上げることの大切さを訴えてきたが、ここでは成果とは何かを説明している。すなわち、成果とは打率である、と言っている。野球で打率3割を超えれば良い打者である。3割打者とは、10回のうち3回ヒットを打つことである。このような打者でも7回は失敗な訳で、失敗の方が多い。それで良いのである。「人は、優れているほど多くの間違いを犯す。優れているほど新しいことを試みる。」という文章は本当に大事なメッセージであると思う。


 また著者は真摯さについて述べている。本からの引用。「組織において最も重要なかつ最も困難な問題は、長年真摯に働いてきたがもはや貢献できなくなった者の処遇である。帳簿係として働いていた者が、組織の成長に伴い50歳で経理担当役員になったものの、仕事をこなせなくなる。人は変わらないのに、仕事が変わってしまった。だが、ずっと真摯に働いてきた。そのような真摯さに対しては、真摯さをもって報いなければならない。だからといって、その者を担当役員にしておくべきではない。彼の無能は組織を危うくするだけではない。士気を低下させ、マネジメントへの不信を生む。クビにするのは間違いである。正義と礼節にもとる。マネジメントの真摯さを疑わせる。組織の精神というものを大切にするマネジメントは、この種の問題を慎重に扱う。」

 この文章も素晴らしい。私は共感できる。ドラッカーはキリスト者(クリスチャン)である。無能な者をクビにするというジャック・ウェルチとは経営の根幹が違うと私は感じる。


 更にドラッカーは真摯さが欠如している人をマネジャーにしてはならない、真摯さに欠けていては組織を破壊すると書いている。
 1.強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
 2.何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。
 3.真摯さよりも、頭の良さを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人して未熟である。
 4.部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い。
 5.自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。