芦原やすえの気まぐれ便り

原発のない町つくりなど、芦原やすえの日々の活動をご紹介します。

松江市議会 住民投票条例審議

2022-02-09 14:25:45 | 原発
市民を小ばかにする市長意見に請求代表人の反論陳述



 島根原発2号機の適合性審査が終了した昨年9月以降、立地自治体である松江市を始め、周辺自治体と島根・鳥取両県による再稼働判断に向けた動きが一気に加速していきました。

 中国電力、そして自治体とエネ庁・規制委・内閣府主催の住民説明会も矢継ぎ早に開催されたものの、すべて「再稼働しても大丈夫!」という前提での一方的な説明会でした。参加した多くの市民からは様々な質問が出され、「この避難計画で本当に安全に避難することができるのか?」それぞれが抱えている状況から不安視するたくさんの質問が出されていました。その質問にも、満足に答えを聞くことのできなかった説明会だったのです。

 一方、松江市議会には、早々に再稼働を求める陳情8件が商工団体から出されました。(8件中6件はすべて同じもの)12月議会において、これらの陳情が審議されるとのことであったため、様々な市民団体から計21件の反対及び市民の意見を聞いた上での判断を求める陳情が出されました。
 残念ながら、自民党系議員は原発にリスクがあることを招致で、ことごとく市民側の陳情に反対し、再稼働推進の陳情を採択してしまいました。

 市民の側からは、住民説明自体が公正さを欠くものであり、あまりにも急ぎ過ぎる再稼働の動きに対して、最低限、市民の意向を丁寧に聞き、市長判断に反映させるべきと、住民投票を求める直接請求署名を、昨年12月に1カ月かけて行いました。同じく住民投票を求める署名は鳥取県米子市、境港市でも行われ、現在は出雲市でも行われています。このように、同時多発的に住民投票を求める署名活動が行われていることに、全国からも注目を集めています。
 すでに松江市に提出した住民投票条例案は、上定松江市長によって反対意見が付され、昨日からこれを審議する臨時議会が開かれています。今日は、請求代表人である秋重元島根大学副学長と岡崎弁護士による意見の陳述がありました。市長意見については、報道で読まれたことと思いますので、省略し、お二人の陳述を紹介します。まずは、秋重代表の陳述です。

私は、深い考察もないままに国の方針に従い、学生に対し安全神話を口にしたことを、今では深く反省しています。スリーマイル、チェルノブイリ、福島と原発の過酷事故は続きました。原発に絶対的な安全はありません。一度、過酷事故が起こると、その放射線による汚染は、広島、長崎の例をあげるまでもなく、時空を超えて長く広く環境や人体に影響を及ぼし続けます。

もしものことが起こった場合を想定しての避難計画など、住民一人一人はどれだけ理解しているでしょうか?島根原発から30キロ圏内に46万の人が住み、10キロ圏内には県庁や大学があります。30キロ圏内の人口は、東海第2、浜岡に続いて3番目です。逃げるにしろ宍道湖や中海がありますので、避難経路は限定されます。観光の目玉である国宝の松江城や出雲大社も30キロ圏内です。

一方、国の脱炭素に向けたエネルギー基本計画では、エネルギーの安定供給が根本にありますので、原子力の発電量に占める比率を、2030年までに現状の6%から20-22%にまで上げるとしています。この目標実現のためには、現在申請している原子力発電の27基すべての再稼働が必要となります。したがって、住民が声を上げなければ、国の方針通りに議会で議決され、何もなかったかのごとくに島根原発2号機の再稼働が承認されます。

単一イシュウで、原子力発電についてアンケートをとると、賛成と反対はほぼ拮抗します。しかし、選挙で議員を選ぶと原発推進の与党が圧倒的に多数となります。このように、原子力発電については、議会と市民の間に意見の乖離があります。福島原発事故の教訓を踏まえた原子力発電の再稼働については、議会で審議する前に、広く住民の意思と意向を確認してほしいと望んでいます。

2号機の再稼働する・しないに関係なく、原子力発電所は放射性廃棄物を抱えたまま、これから何10年と存在します。行政や議会に任せきりにするのではなく、住民一人一人が自分のこととして考え、意思を明確にし、原発賛成・反対の立場を超えて語り合うことが大切です。

エネルギーには、太陽光発電などの再生可能エネルギー、火力発電、水力、原子力など様々なものがあります。どのエネルギーを選ぶかは、住民一人一人の生き方にも関係してくる重要な問題です。発電所にしても大型の発電所で発電して遠くに送電するのではなく、分散型の小型発電所を多数つくるという考えもあります。2号機を再稼働し、松江市が今後も原子力発電を選ぶのであれば、その理由を市民や次世代を担う子供たちにもきちんと説明しないといけません。

島根県では、少子高齢化が進むばかりで、人口減少は続いています。若者の地元定着のための有効な施策を立案し、どう具体化していくかは、松江市にとって最優先の重要な課題です。若者の地元定着を促進するために、原子力発電所の果たすべき役割はどこにあるのでしょうか?若者のための雇用創出、地元産業のための安定的なエネルギー供給など、地元へのメリットが多数あるのであれば、原子力発電所にかかわる松江市のまちづくりの将来像として、市民に具体的に示すべきです。

広く市民の意思と意向を確認する方法として、私たちは、松江市に対し、2号機再稼働について、市民の意見を反映させる住民投票条例の制定を請求しています。昨年の年末のあわただしい中、しかもコロナ禍の困難な時期ではありましたが、私たちは決められた1か月の間に、法定署名数の約3倍を超える1万1千人の方から、住民投票を求める署名を集めることができました。署名をされた一人一人思いを担って、私はここに立っています。

私たちが接した市民からは、再稼働に関して、賛成、反対、わからない、迷っている等の意見があり、また、結論だけではなく、その理由も様々です。具体的な市民の声を紹介すると、原発再稼働に反対の立場の方からは、「電気の安定供給は大切だけど、避難のことは心配」とか「介護のことを考えると、バスでの長距離の避難はできない」など、避難のことを心配する声が多くありました。また、再稼働に賛成の立場の人からは、住民投票の意義は理解できるとして、署名してもらっています。

同じように、島根県や松江市が開催した4回の住民説明会における市民からの意見、また、安全対策協議会における意見や質問には、安全対策、避難対策、国のエネルギー政策、中国電力の資質など多岐にわたって、不安や心配が述べられています。

住民こそが、地方自治体の、また地方政治の主人公です。市長も議員も選挙で選ばれたとはいえ、昨年4月の選挙において島根原発の再稼働に対して、態度を明確にし、有権者に問うた議員はほとんどいませんでした。原子力発電の再稼働のような、松江市にとって重要な問題については、より的確に市民の意見を把握し、市政に、これを反映すべきではないでしょうか。

私たちが取り組んできた住民投票条例制定は、市民が、原子力発電所2号機の再稼働の是非という、松江市にとって極めて重要な問題について、自分たちのこととして、関心を持ち、原子力発電所の稼働の影響、リスク、メリット、デメリットを知り、よく考え、意見を表明するための方法として、提起したものです。

この条例制定の直接請求の制度は、「住民自治」実現のひとつのツール(手段)として、地方自治法により、住民に認められたものであり、直接民主主義を具体化した重要な制度です。

議会が、この直接請求制度の趣旨と市民の意思を尊重し、本住民投票条例を可決されることを、切に求める次第です。




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