芦原やすえの気まぐれ便り

原発のない町つくりなど、芦原やすえの日々の活動をご紹介します。

リアリティのない問題だらけの原子力防災訓練

2016-11-19 23:06:25 | 子どもの貧困
 今日は、島根原発で重大事故が起きたことを想定して原子力防災訓練が行われました。松江市内からは4地区の住民240人が近くの小学校や公民館に集まり、バスで指定避難先の浜田市まで移動しました。
 私は朝日地区の住民が小学校に集まり、バスへ乗り込むところからウオッチングしましたが、やはりというか、一貫してリアリティがない避難訓練でした。この朝日地区は原発から10km程度の距離にあります。実際に原発事故が起きた時、5km~30km圏内住民に対して避難指示が出されるのは、1時間当たり20μ㏜が1時間以上続く場合に1週間以内に、または、1時間当たり500μ㏜以上となった場合に直ちに避難することになっています。ですから、この地区の住民に避難指示が出されるのは、すでに放射性物質が相当に漏れ出している状態なのです。(ちなみに、我が家もここから5分程度歩いた地区です。)
 それなのに、それなのに、たまにマスクを着けている人がいる程度で、皆、無防備な格好でのんびりとやってきます。松江市内だけで20万人が暮らしていますが、その住民が、原発の近くから、順番に指示に従って避難行動をとるわけがありません。原発が30km圏内にないまちにお住まいの方には信じられないでしょうが、一人残らず家も仕事も捨てて、ほかの街に移住し、一から生活再建をしなければなりません。そのために、全世帯が、どの道路を通り、どこへ行くのか指定され、説明入りのパンフレットが配布されています。その内容を覚えている住民はあまりいません。こんな状態で実際に事故が起きれば、混乱しまくって、皆必死で逃げ出すでしょうし、大渋滞と被ばくは避けられないと思います。行政も住民もこういった事態を真剣に想定していないようです。それがリアリティのない避難行動に現れています。

 

 そして、途中の湖陵総合公園では避難バスのスクリーニングと除染を受けます。ここでの問題は、スクリーニングの基準が高すぎることです。ヨウ素剤服用基準の6倍もの高い放射線量を計測しなければ、バスは除染を受けることはありません。車の両側には放射線量を計るポールが立っていて、この間を通り抜けると放射線量を計ることができるのですが、設定された値にならなければ音がしません。音がしなければ、中に乗っている住民は、仮に設定された値より少し低い程度に汚染されていても気づきません。そのまま避難先に行くことになります。中には、赤ちゃんや妊娠中の方もいるかもしれません。もっとも、高い値にしておかなければ、この場所で大渋滞が生じ、避難所にたどり着くのが遅くなってしまう危険性も生じます。本来、この両方の問題を解決する方法を考えなければなりません。国が知らんふりをするので、地方自治体はそのまま言うとおりに行動しているのです。だ~れも責任を取ろうとしていないのが実態なのです。

 
 この会場で放射能が付着していることを想定して、住民の除染パフオーマンスをしている市の職員を捕まえて、少し質問してみました。「その除染の方法では放射性物質は完全には落ちませんよね?」(脱脂綿で軽くこするだけ)「はい。完全に落とすには専門的な処置が必要です」。「着ていた服が汚染されていたら、着替えは用意されているんですか?」「上着だけ着替えていただけばいいです。」「寒いときは来ているけど、夏は上を脱ぐと困りますが」「着替えは用意していません。県が用意してくれるといいんですが」。こういうことも住民には説明していませんし、着替えは言われて気が付いたような感じです。