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風刺画と文明の衝突・2

2006-02-08 15:38:49 | 日々のニュース
一昨日取り上げたばかりの風刺画問題ですが…
風刺画と文明の衝突(当ブログ)
ユランズ・ポステンのサイト
とどまるところを知らないという感じですね。
更なる大規模な暴動の類は起きていないようですが、アフガンでは風刺画に対する抗議をしていた人達4人を警官が射殺するという事態も発生しているそうです。
デンマークのラスムセン首相は「世界的な危機だ」と頭を抱え、また、インドネシアにいるデンマーク人には退去するよう要請したそうです。

一方で、イランの新聞が「向こうが預言者を風刺するなら、俺達はホロコーストを風刺しようじゃないか」というキャンペーンを始めたのだそうです。

う~ん、正直、この態度に今回の問題の本質が潜んでいるような気がしますね。
理屈として、イスラエルが喧々囂々に主張しているホロコーストの風刺をデンマークに対して行う意味がありません(もちろん、そう単純なものでもない現実もありますけどね)。
つまりまあ、意図的に政治利用しているということです。宗教的な尊厳を踏みにじられたとして本気で怒っている人もいるにはいるでしょうけれど、そもそも彼らはイスラーム諸国において知る権利をほとんど認められていないわけですから、誰かが教えてくれないと怒るはずもないですし。誰が教えたかは言わずもがな。
政府に利用できそうだということで煽られて、それで怒っているという要素の方が大きいわけです。少し前に起きた中国での反日運動と根っこの部分はほとんど変わりありません。
例えば、アラブ圏は中国で行われているイスラーム弾圧には何一つ文句を言っておりません。こちらは同胞が拷問・殺害されており、より直接的にイスラームの危機という状態にあるにもかかわらずです。
加えて、ホロコーストは事件ですが、ユランズ・ポステンが取り扱ったのは事件ではなく要素です。反発するならデンマーク女王やキリストを揶揄すべきであり、ホロコーストを題材にするのはその点でもおかしい。
仮にユランズ・ポステンが「十字軍でイスラーム圏の人間が大勢死んだのは全部嘘さ。ハッハッハー。風刺してやるよん♪」とやったのであれば、カウンターでホロコーストを扱ってもいいということになるのでしょうけれど。

今回の件については、多くの人の意見も拝見しましたが、明らかに行き過ぎた抗議活動に対しても批判の類が少ないですね。
こうなったのはデンマークの責任だといわんばかりのところも多いです(問題を引き起こしたのはデンマークの一新聞ですが…、特に国営新聞というわけでもないようですし。例えば読売や朝日が嘘を書いて、抗議を受ければ日本政府は「●×新聞のせいで迷惑かけました。政府は謝罪します。二度と彼らに好き勝手書かせません」なんてしなければいけないのでしょうか?)。
皆さん余程表現の自由が嫌いなのか、あるいは欧州が嫌いなのか。

ユランズ・ポステンがマホメットの風刺画を書いた背景にはイスラーム文化に対しては書く側に自己検閲がかかっていることに疑問があったということのようです。その反抗としての側面が強かったのだそうで、それ自体は私も疑問に感じていたことですから(その比喩として「女神転生」を出すのはいかがなものかとも思いますが[笑])、特に問題があるとも思えません。
もちろん、禁止している偶像崇拝の問題に触れた部分はまずかったのでしょうけれど、異教徒が別の宗教の戒律に触れる行為を故意にしたとしても本来、特に問題はないでしょう。
この部分を殊更取り上げている人達がいますが、そういう人達は他人が怒ることには全て正当な理由がある、と考えているのかなぁ。
例えば、私はイスラームを破ると知りながら、豚肉を食べます。多分普通のムスリムに「私は今日豚肉を食べた」とメールを出しても、「君は最終的には地獄に落ちるよ」という返事は返ってくるかもしれませんが、「お前を殺す」とまでは行かないはずです。が、「今日はムスリムのA君に豚肉料理を無理に食べさせた」となると、「イスラームのためお前を殺す」という返事が返ってくるかもしれません。
本来はそういうものなのです。
結局、今回の件では行き過ぎた風刺画を載せたこと自体に問題があるのであり、そのことについてはユランズ・ポステンは認め、謝罪もしております(これがどの程度の謝罪なのかは分かりませんが…)。
それでいいはず。
風刺画を書くこと、載せること自体については、やはり問題にならないのです。
その点、何か混合されているのが気になるなと思います。

その後の抗議と転載の繰り返しについては、正直どちらもどちらという印象があるので何とも言いがたいですが、ユランズ・ポステンとの関係で見る限り、今度の事件は本来は終わったものとして考えるべきなのではないでしょうか。


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2 コメント

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話し合いの余地 (ぺり公)
2006-02-09 04:45:23
なるほど、宗教一直線というわけでもなさそうですね。ということは、話し合いの余地もアリってことですよね。どう折り合いをつけるのか気になってきました。



>皆さん余程表現の自由が嫌いなのか、あるいは欧州が嫌いなのか。

世間的にはイスラム側へのシンパシーが強いように感じました。こんなことしたらあんなことになって当たり前!というようなものもチラホラ。キリスト教も嫌われ者っぽいです。

あるいは、角を立てないことを尊ぶ日本式伝統的美学の発露でしょうか?
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>ぺり公様 (川の果て)
2006-02-09 12:33:34
一直線ということはないと思います。問題を意図的に大きくしている部分は絶対にあるはず。その部分を見落としてイスラームにシンパシーを感じられるのは、個人的に納得がいきません。



折り合いをつけられるとは思うのですが、フランスの方でまた新たに風刺画などを載せたようで、当分大騒ぎになりそうなのが残念といえば残念です。
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