昔から文章(の書き方)に興味があり、『文書読本』という本があれば、手にとっ
てきたが、平成14(2002)年に亡くなった向井敏の『文章読本』(文春文庫)はお
もしろいし、名文の実例が体験できるいい本である。
谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫などの『文章読本』の著者が小説家であるのに
対し、向井は「書評家、当代無類の目利き」である。
冒頭、三木清に対する林達夫の弔辞(追悼文)が名文として紹介されているが、こ
れがまたおもしろい。(林達夫はなかなかおもしろい。)
一般にわれわれが経験する普通の社会人(財界人からサラリーマンまで。)の弔辞
はつまらないが、文人の弔辞はおもしろい。どこで読んだか川端康成は弔辞の名人
だったそうである。亡くなった開高健に対する阿川弘之の弔辞に大泣きしてしまっ
たこともあった。
向井敏の文章自体も独特なおもしろさがある。例えば--
海外のミステリーにはずいぶん入れあげてきたほうで、おかげでこれまで退屈
しないで日々をすごしてこれたのではあるまいかと思うほどなのだが、そのな
かでもわけて愛着の思いの深かった作家といえば、やはりレイモンド・チャン
ドラーにまず指を屈しなくてはならないだろう。 (p171)
真に文章を味わうことのおもしろさを教えてくれる本である。
てきたが、平成14(2002)年に亡くなった向井敏の『文章読本』(文春文庫)はお
もしろいし、名文の実例が体験できるいい本である。
谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫などの『文章読本』の著者が小説家であるのに
対し、向井は「書評家、当代無類の目利き」である。
冒頭、三木清に対する林達夫の弔辞(追悼文)が名文として紹介されているが、こ
れがまたおもしろい。(林達夫はなかなかおもしろい。)
一般にわれわれが経験する普通の社会人(財界人からサラリーマンまで。)の弔辞
はつまらないが、文人の弔辞はおもしろい。どこで読んだか川端康成は弔辞の名人
だったそうである。亡くなった開高健に対する阿川弘之の弔辞に大泣きしてしまっ
たこともあった。
向井敏の文章自体も独特なおもしろさがある。例えば--
海外のミステリーにはずいぶん入れあげてきたほうで、おかげでこれまで退屈
しないで日々をすごしてこれたのではあるまいかと思うほどなのだが、そのな
かでもわけて愛着の思いの深かった作家といえば、やはりレイモンド・チャン
ドラーにまず指を屈しなくてはならないだろう。 (p171)
真に文章を味わうことのおもしろさを教えてくれる本である。
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