カタスミ

『レーン最後の事件』エラリー・クイーン著

シリーズ最終作、なんとか年内に読切りました!
シリーズの中では一番面白かったかなぁ…?
面白かったけど…割と辛口感想です。
後、以下大いにネタバレありです。
ご注意下さい。























探偵をしている元警部のサムの元へおかしな依頼人がやってくる。
ド派手な髭をした男が、サムに手紙を預かって欲しいと言う。
毎月20日に電話をするから、もし電話がなければ自分に何かあったと言うことだ。
その時はこの手紙を見て欲しい。ただし、レーンと一緒に。
とりあえず手紙を預かったサムだが、他にも事件が舞い込んでくる。
博物館の警備員が行方不明になり探して欲しい、という依頼で
サムと娘のペーシェンスは博物館へやってくる。
そこでは鍵の付いた棚に保管されていたシェークスピアの本が盗まれていた。
謎が謎を呼ぶ中、最初の手紙を預けた男からの連絡が途絶えた。
レーンを巻き込み、全ての謎がひとつの事件へと繋がっていく…

という感じでしょうか。
博物館にあるシェークスピアの本に隠されていた
シェークスピア自筆の手紙を巡って
手に入れたい者と、消し去りたい者との攻防で
結果、殺人事件まで起こってしまうという。

博物館の新館長ハムネット・セドラー、
その双子の弟で、最初にサムに手紙を預けたエールズ博士、
そして、エールズ博士の家を急襲した、斧をふるった謎の男、
この3人が手紙を巡って争っておりました。
エールズ家でハムネット・セドラーの遺体が見つかり、
また、エールズ博士はずっと監禁されており、身動きが取れないので
結果、斧をふるった謎の男がハムネット・セドラーを殺した事になるのですが
その犯人の正体が最後の最後で明かされます。

エールズ博士がサムに預けた手紙の暗号を解いた
ドルリー・レーン氏が早々にシェークスピアの手紙の存在に気づき、
自分が安全な場所に保管しようと行動した、という事でした。
シェークスピアの手紙の内容は、シェークスピアが
友人のハムネット・セドラーに毒を盛られ殺されそうになっている、という事で、
その子孫である同名のハムネット・セドラーが
自分の家系の名誉の為に手紙を廃棄しようとしていた、
また、その弟エールズ博士は自分の私利私欲の為に手紙を手に入れようとしていた、
レーンはそれが許せなく、人類の宝として手紙を保管したかった、
という事らしいのですが、争った結果、レーンはハムネットを殺してしまいます。

ペーシェンスは、現場の目覚まし時計が鳴ったのに
止めた形跡がない、それは斧をふるった男が
耳が聞こえないからだ、という事に気づき、
レーンが犯人だと知って倒れてしまいます。
しかし、目覚ましを止めないのは耳が聞こえないからだ、
そして耳が聞こえない人が犯人なら、それはレーンだ、
という結論に至るのはちょっと乱暴ではないかい…?

まぁ、結局レーンが犯人だった訳で、
レーンは全ての事実を手紙にしたためた後、
自分は毒を飲んで自殺します。
罪は償わず死に逃げですよね。
なんかずるいなぁこの人…と思ってしまった…

Yの殺人の最後を見て、
シリーズ全部読んだらレーンのした内容が納得出来ると聞いて
4部作全部読みましたが、
最後の事件でレーンが犯人ってのは予想してなくて、
軽く『え!?』となりました。
レーンの最期を知ってもあんまり悲しみはなく、
何というか、自己正当化がすごくて
ただただずるい人間だなぁ…という感じです。
あんな死に方したら、ペーシェンスも一生苦しむし、
サムやローもショック受けるだろうし、
Yの殺人の結論に至ったのを見ていてもですが、
レーンって自分勝手だなぁ、という印象です。
Yの殺人だって自分の勝手な価値観で犯人を死に追いやるし、
今回も自分の目的を達成する為に、相反する考えの人間を排除している訳だから、
なんかあんまり好きになれないじーさんでした。

しかし、レーンの耳が聞こえない設定って
3作目まで、『この設定いる?』ってずっと思ってたので、
最後まで読んで、ああ、これやりたかったからか…って思いました。
3作目でペーシェンスが探偵役として登場したのも
全てはこの最終作の為の前振りだったのだわなぁ…

レーンは事件解決の際にも、分かっていても
自分が納得するまでは情報を全然周りに伝えなくて、
その結果人が死んだりする事も多々有り、
探偵としてはあまり爽快感はありません。
あんまりぱっとしない探偵役だし、
もう年寄りだし、何より自分勝手に死んだので
悲しみよりは憤慨の気持ちの方が強いですね。
読み終わった後の第一感想は『胸くそ展開じゃねぇか…』でしたw
(レーン好きな人はほんとすみません^^;)

とにかく、これにてレーン4部作は読了です。
大どんでん返しとしては大成功なのかもしれないが
全員が不幸になって終わってしまって、自分としては
残念な展開でした。
せめてペーシェンスがローと結婚して
少しずつでも心の傷を癒やせていければ良いなぁ…と思います。
星は3つ。
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