あるタカムラーの墓碑銘

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又三郎さんの容姿 (『マークスの山』)

2005-08-14 17:13:07 | 高村薫作品のための、比較文学論
 当然のことながら、このカテゴリはネタバレありです。ご了承を。

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というわけで非常に久しぶりに更新する、高村薫作品のための、比較文学論。第二回目は、風の《又三郎》こと、有沢三郎さんの描写を取り上げます。

いつものように簡潔な状況説明。とある犯行現場にやってきた七係メンバーの、簡単な紹介を兼ねた描写がある部分です。

それでは単行本から引用。
自宅は八王子だが、懐具合も省みずタクシーを飛ばしてともかく現場に二番目に登場するのは、大概その男と決まっていた。しかも疾風のように颯爽と飛び込んでくる。捜査一課一の二枚目。男盛りの三十五歳。風の《又三郎》というあだ名を持っている。 (単行本p91)

捜査一課一の二枚目。いいですねえ~

さて、全面改訂された文庫では、以下のようになりました。
ひとたび事件となれば、夜中であれ八王子の自宅から懐具合も省みずタクシーを飛ばして、ともかく現場に一番か二番に駆け込んでくる。それが文字通り疾風のような感じなので、風の《又三郎》というあだ名を持っている三十五歳。捜査一課随一の二枚目と自称して憚らない厚顔と口八丁手八丁は、若さと体力がある分、ある意味で肥後以上の強者だった。 (文庫上巻p145~146)

二枚目は二枚目でも、「自称」というのが引っかかる・・・(苦笑) 「又さん、自称二枚目だったの~!?」と一部の女性ファンを仰天させ、悲しませた部分です。

【私論・私見とまとめ】
「また容姿かい!」と退かないように(苦笑) たまたまですよ、たまたま。(←説得力なし)

単行本から文庫までには、約10年の期間があります。短文でたたみかけるかのような描写の単行本。無駄を省き、練り上げられた描写の文庫。どちらも味わい深い。

「二枚目」という非常に漠然とした曖昧な単語でも、十人十色、千差万別の想像をかき立てられるもの。それに「自称と憚らない」ところが、又さんの持っている性格と特徴をより強調している結果に、文庫ではなっていますね。

個人的には、そう書いた高村さんの意図に、苦笑せざるをえないのですが・・・。「やり手」「切れ者」というイメージの方を、強調させたかったのでしょうね。


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