あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
関連アイテムや書籍の読書記録も紹介中

「熊が知恵をつけたら、絶望でアル中になった」 (旧版p273)

2014-02-02 22:39:36 | 神の火(旧版) 再読日記
知事も市長も好きなときに辞められていいよねー(棒読み) 私なんて引っ越さない限り大阪府民・大阪市民のままなんだから。どちらが不幸か一目瞭然。

てめえの選挙のために税金納めてるんじゃないぞー! 財政赤字だからとあちらこちらを切り詰めて、別のところでお金を使えば何の意味もない。選挙するお金があるなら、文楽や楽団の補助金に回してよ。その方がよっぽど有意義だよ。選挙は失うものが多いが、文化は生み出すものが多いよ。

ほんとに小泉純一郎の二番煎じだね。自分の思い通りにいかないとダダこねるわがままな子どもと同じ。

ともあれ勝っても負けても、辞任したままであっても、「政治家・橋下徹」の最終的な評価としては「大阪府と大阪市を思うとおり混乱に陥れ、わがままを貫いてひっかき回しただけ」というそしりは免れないんじゃない?

裁判と違って政治は判決も出ないし、結審もない。でも再審請求は出来るから、もしかしたらその感覚で選挙を、と目論んでいるんなら、いかにも単純思考の見本ですね。

ネタバレにご注意。

***

2007年7月7日(土)の旧版『神の火』 (新潮社)は、p306まで読了。

今回のタイトルは、ボリスを称した江口氏の言葉。
旧版でここだけにしか登場しないボリスは、新版と比べてキャラクター設定も登場数も相当な違いがありますね。
新版『神の火』再読日記でも記しましたが、旧版のボリスはあってはならない性向に苦しめられ、島田先生に言い寄ったこともあったそうな。先生は肉体的な誘いには応じなかったので、ご安心を。(旧版p274を参照)

【今回の名文・名台詞・名場面】

★一日何も考えず、自分の額の上で時が止まっているように感じた。炭火の炎で赤々と照らされた額の上で、確かにもう動くものは何もない。手足が動くのは、それがすでに自分から切り離されている証拠だ。そんなことを思いながら、自分の手を眺めた。なかなか端正な手ではあった。昔より、心なしか指先が固くなったような気がする。 (旧版p267)

素のままの島田先生、という感じがしますね。

★日野の口許で、不敵な白い歯と優しい唇のカーブが溶け合った。どこまでも不透明だが、理屈抜きの圧倒的な力で押された。自分を引き寄せて止まない力だった。子供のころと何も変わっていない。 (旧版p271)

なんだ・・・島田先生、そんな昔から日野の大将に惹かれてたんかい(苦笑)

★イリーナだ、と思った。イリーナ。いや、違う。良だ。俺の息子だ。
勇敢な兵士。気高い愛国者。俺の誇り。島田は声に出してそう呟いた。俺の誇り。俺の息子。
 (旧版p272)

これは新版でカットされましたが、確かに違和感が拭えない。良ちゃん、勇敢な兵士でも、気高い愛国者でもないと思うの。ただただ家族を救うために、被曝したようなもんだから。

★「ボリス、頼む! その子を国へ連れて帰ってやってくれ! 勲章をやってくれ! 故郷に埋めてやってくれ! 死の灰の降った土にその子を埋めたら、そこからきっと花が咲く! 血の花が咲く!」 (旧版p273)

旧版・新版ともに、屈指の名場面。
内容はもちろん変わってますが、新版では「勲章をやってくれ!」がカットされました。これはなくなって正解でしょう。良ちゃんは勲章なんて欲しいと思ってないよ・・・。

★鼻孔に流れ込む空気があった。次の瞬間、頬を叩く刺すような寒風を感じた。次いで、生暖かいものが鼻孔を覆い、口を覆い、熱い吐息の風が喉から肺に降りてきた。手足の冷たさに比して、なんという熱さ、何という心地好さ。その風は数回吹き込み、「ほら、生きとるか」と笑う草介の声が一緒になった。
「分からん」
「そうか」
草介の熱い吐息を、さらに数回口移しでもらった。
 (旧版p283)

ここは付箋紙貼ってなかったし、さっきザッと見直してみたら、新版で取り上げなかったこともあったし、やはり入れることにした。 今回、分量が少ないし。
一言で表現するなら「人工呼吸」ですが、日本海の波間に漂いながら、というのがポイントではなかろうか。


残り2回でおしまい。



コメントを投稿