あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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「太陽を曳く馬」 連載第八回 (「新潮」2007年5月号)

2007-04-07 23:41:01 | 『太陽を曳く馬』 連載 雑感
本日はたまたま出勤日。判を押すかのように、帰りに書店へ寄って買い、電車内で読む・・・という、いつものパターン。

・・・ひょっとして当ブログを読まれてから、「今月号は目を通しておこう」とか「今回はパス」とか、判断されてらっしゃる方、いらっしゃいます?
あるキャラクター(←はっきり名前を記さないのが、私の性格の悪さだな~)を示す単語あるいは固有名詞の有無で、「太陽を曳く馬」の雑感を記事にしてらっしゃる方の増減が、激しいように思えます(苦笑)


それでは、第八回の雑感など・・・。
当然、まだ読まれてない方も、入手できていない方もいらっしゃるわけですから、物語の核心については、おおっぴらにネタバレはしませんが・・・警告:隠し字にしておりますが、以下は自己責任でお読み下さいませ。(『晴子情歌』 『新リア王』の内容も、「既読」を前提とした上で、多少触れている場合があります)
また、コメント欄に入力する場合、ネタバレはOKとします。もちろん
「太陽を曳く馬」限定で。未読の方はご注意下さいませ。


***

今回分の構成について・・・もう何というか、今回はどうしてもひと言吐き出さねば気がすまない!
今回はキャラクター云々より、「構成」に圧倒される。「これよ、これこれっ! これが高村薫なのよ!」と読んでいる最中からひしひし感じて、仕方なかった。

彰之の旧字体・旧仮名の手紙の後に、合田さん。裁判の後に、合田さん。手紙、裁判の繰り返しで、とどめが秋道の発言。
文字がぎっしり詰まったページと、息詰まる展開の中、フラッシュパックのように合間合間に割り込んでいくかのような、合田さん。
その文字がぎっしり詰まった要因の一つ、手紙で秋道を追跡し理解しようと考察を重ねていく、彰之。
どちらも共通するのは、福澤秋道のこと。合田さんは裁判を傍聴して、彰之は間接的な材料を集めて判断し、手紙で「福澤秋道とは何ものなのか」を知ろうとしていく。
ここを書籍になった時点で読んだとしたら、私はもっと高揚しているだろうと思われる。それくらい、密度が高い。


キャラクターについても、適当に。もう、思いつくまま入力してますので、ここのキャラクターに関係ないことも入力しているな~、と最近になって気づきました(←遅いわ!)

福澤彰之さん・・・アッキーの手紙で、読み手は更に減ったかもしれない・・・。今回分の1/3を占めていますからね。まあ、大方の読み手の皆さんは、あの二人にしか興味ございませんでしょ?(苦笑)

「円(彰之の手紙では「圓」の旧字体)」という形は完璧でいて、不安定。そんな相反する要素が含まれている。

しかし「地どり場所」がどんどん増えていくなあ・・・。前回の美術館に、今回の美術館。現代美術にはあまり興味の持てない私ですが、見なきゃならんでしょ。


荒井久美子・・・「法廷」も、この人にとっては「舞台」なのだな。一流ではない、出来損ないの悲劇のヒロインといった感じか。

久米弁護士、永冨検事・・・「福澤秋道」という存在を巡ってのやり取りとかけ引き。この人たちがいるから、合田さんもアッキーも読み手も、秋道が何ものなのかが、思考できるのだ。

福澤秋道・・・個々の台詞を取り上げることは極力避けていましたが、今回は避けて通れない。念を押しますが、未読の方、ご注意。
弁護士や検事とのやり取り、あるいは彰之の手紙で、ちょっとずつこいつのことが分かってきたような気がする・・・あくまで「気がする」ですが。

こいつの発言、こいつにとっては、どこにもおかしなことも、おかしな部分も、おかしいと考える感覚すらも、ないんだよね。何度も同じようなことを訊かれ、その度に応じたり返答したりしてるのに、相手には分からない。分かってもらえない。もういい加減に嫌気がさして、こいつなりに怒り心頭に発したんだと思う。だから、こんな発言が出てきたのか。

      「みんな消えろ。もう何も考えたくない」

この発言の怖さが分かる方は、どれくらいいただろう? まさに、とどめの一撃。・・・そういやマルグリット・ユルスナールにこんなタイトルの作品があったな。


合田雄一郎さん・・・脇役兼傍観者及び観察者。隠し字にする必要もないのですが・・・。
合田さんが「ニューヨークの空」を想う度に、胸が痛む。その痛みは貴代子さんへ向かい、加納さんへとつながっていく気がするからだろうか?

加納祐介さん・・・今回は登場しておりません。 ・・・ちょっとイジワルしたくなっちゃった(苦笑) ごめんあそばせ。

おわびに、これを。
週刊朝日2007年4月13日増大号で、幹部刑務官が激白(1)「私が押した死刑執行ボタン」という記事を、たまたま立ち読みしました。
「太陽を曳く馬」連載第一回の加納さんの手紙のアレを、いやでも思い出さずにいられませんでした。

・・・おわびになってるのか、これ?

***

以上、連載第八回を一度読んだだけの雑感です。
高村さん、ありがとうございました。
休載さえなければ、私には御の字です。四の五の贅沢言いません。
来月はゴールデンウィーク明けですか。1か月は短いようで長いし、長いようで短いですわ~。



2 コメント

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スルメのような旨さ (野鍛冶屋)
2007-04-08 14:09:23
こんにちは野鍛冶屋です。

おっしゃる通りでございます。昨夜一読しまして、その密度の高さ、フラッシュバックする彰之、合田さん、久米弁護士のことばに、高村さんの小説読んでて良かったなー。と、つくづく嬉しくなりました。

もう一度、はじめからじっくりと読み返しているところで、じわじわとその旨さを噛み締めているところです。
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満腹状態 (からな)
2007-04-08 21:11:00
野鍛冶屋さん、こんばんは。

ご同意いただきまして、嬉しいです。
野鍛冶屋さんならば、私よりももっと上手に表現されると思われますので、ご感想、楽しみにしております。

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