特別な卦である「乾」と「坤」から始まる上経の配列は人間や企業の栄枯盛衰を表している。一連の配列をある事業を起こしたA君のドラマとして再現してみよう。
A君が生れて来るときの母親の苦しみは「水雷屯」であった。未だ幼く蒙昧を表すA君を「山水蒙」両親は厳しく育ててくれた。生活は厳しく、育てるのに必要になるのが飲食で「水天需」両親は一生懸命働いた。時には飲食を巡って争いが始まった。「天水訟」である。ここで、もう争いがあるというのが易の教えである。人間に限らず生き物はすべて争いをしながら生きるものである。
争いの為に家族は団結する。「地水師」である。そして親しいものが寄り添う「水地比」が続く。親しみ協力すれば、「風天小畜」少し蓄えが出来る。蓄えが出来ると「衣食足りて礼節を知る」で、「天沢履」となる。こうしてA君は順調に育ち、就職し社会人になった。
安定した「地天泰」だったが、突然、父が病死してしまう。「天地否」で全てが否定される。A君は会社を辞めて家業を継ぐことになった。その為に、同志が必要、「天火同人」とともに一から始める。どうにか順調に運び、「火天大有」となって成功する。
親の教えは「いつも謙虚でいろ。」だったので、「地山謙」の気持ちを忘れずにいると、「雷地予」となって毎日が楽しい。楽しいところには色々な人が集まって来る。それが「沢雷隋」であり、中には困った人もいた。そんな人たちが問題を起こすようになり、「山風蠱」事件、事故となった。
しかし、問題を適切に処理していたら、事業は段々大きくなり、「地沢臨」となっていく。そうすると、世間からは「風地観」となって認められてきた。認められると、意外なところから「火雷噬嗑」、すなわち合併話が出てきた。そうなって来ると、ついつい良い所を見せようとして、飾り始めてしまった。「山火賁」である。
ついに粉飾決算をすることになり、「山地剝」の時を迎えた。A君の会社は売りに出すことになった。ところが、「捨てる神あれば拾う神あり」でA君の会社は復活することが出来た。「地雷復」である。これは自分の力ではなく、運命が味方してくれたのだった。これが「天雷无妄」というものか。その後のA君の会社は至誠真実、全社員心を一つにして事業に取り組んだ。その結果、「山天大畜」業界一の会社になった。
「山雷頤」人を養い、家族を養う、堂々たる企業になった。好景気に支えられて来たのだが、事業を拡張し過ぎたこともあり、バブルがはじけ、「沢風大過」在庫が山となった。いつの間にか景気が冷えてきて、「坎為水」落とし穴に嵌ってしまい、どうにもならない。そこで、A君は全く異業種とのタイアップで新しい事業に踏み出した。「離為火」である。
このように、配列には継続性がある。自分なりのドラマを作って連想すると、覚えることが出来る。あせらず、ゆっくりと、これが易を知る近道でもある。
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