さて、今日は久しぶりに、「巨樹ドタバタ紀行」です。場所は、以前、「5.無人島のスピリット」で書いたカナダのクイーン・シャーロット諸島。
この島々を2回目に訪れたとき、私たちは本当に夢のような景色に出会ってしまいました。おまけに、日本では会えなかった人にも会ったんですよ。
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前にも書いた通り、国立公園に指定されている、ここの無人島のなかにはホットスプリング・アイランド(温泉島)という 名前の小さな島がある。
巨木のある森やトーテムポールが残るハイダ族の村跡を訪ねながら、この島々を巡る4泊5日のボートツアーでは、キャンプになるので、当然、バスルームもシャワーもない。だから、温泉島は非常にありがたい存在だ。
それも温泉島にある温泉は見晴らしのいい海沿い。もちろん、露天で、これが3つもあるのである。水着は着なければならないが、いうまでもなく、この温泉は至極、快適なのだ。
そのうえ、クイーン・シャーロット諸島のボートツアーは自然をなるべく守るために人数制限され、6~9月だけに入ることが許されていているのだが、私たちが行くのはいつも他の誰とも会わない9月の終わりころ。そのころになると、アラスカに近いここでは雨も多く、すでに寒い。冷え込んだ体を暖められるので、この温泉はホントに「極楽、極楽」と口にしたくなるほどに、気持ちいい。
ただし、残念ながら、ここではどこの島でも勝手にキャンプをしていいわけではないので、温泉島も温泉には入ってもいいが、キャンプは許可されていない。だから、近くの島にテントを張って、それから温泉島までボートで行かなくてはならない。これもまた無人島の島々の自然を守るためである。
最初は残念だなぁと思ったが、無人島らしさをずっと保ち続けるためにはこれも致し方ない。それに、温泉島に泊まれないことによって、じつは私たちは忘れられない光景を目にすることになったのである。
つまり、自然を守ることによって、私たちには“ラッキー”が訪れたのだ!
その日、私たちは温泉島の近くの島にテントを張って、夕食を済ませると、待望の温泉へと向かった。
温泉島の近くまでは移動用の大きなエンジンとスクリュー付きのボートで行けるのだが、15メートルほど手前になると、海が浅くなるため、ゴムボートに乗り換えることになった。
ゴムボートに乗り込んで、夜空を見上げるとそこは満天の星空。手に取れそうなほど近くに、数えきれない星が見えた。
「うわぁ、すごい。きれいだねぇ」と言いつつ、空から目線を下ろした私はそこで息を飲んだ。
「え~、何、これぇ。どうしたのぉ、すご~い」
一瞬、私は、本当に夢を見ているのか、錯覚なのかと思った。
空に見えた星が私たちのゴムボートの周囲に、キラキラと輝いているのである。
夜空の星が水面に映っているのかとも思ったが、動いているゴムボートの周囲にだけ、たくさんの星屑が見えている。
聞くと、これは夜光虫だという。「夢のような景色とは、このことだ」と私は本当に感極まってしまった。
あまりにもきれいなので、温泉島に上陸しても、私はまだ夢心地。そうして、さらに森のなかの道を温泉へと向かって歩き出すと、夜の蒼い光の小道の両側が、点々と白くボォッと光っている。手にとってみると、それはアワビの貝殻で、貝殻に星の光が反射して、やさしく道を照らしていたのである。手にしても、貝殻の周りには白い光が滲んでいた。
このとき、私はほとんどディズニー・アニメのなかにいる気分になった。そう、子どものころ大好きだったジュリー・アンドリュースの「メリー・ポピンズ」になったみたい。メリーが歩くと、魔法のように貝殻がポワンと光り、メリーがゴムボートに乗ると、夜空の星がやって来て、みんなでボートを運んでくれるのである。
もちろん、帰りのゴムボートでも魔法は続いていた……。
そのまま夢見心地でテントに戻り、私はとても幸福な気分でぐっすり寝た。そして、その翌朝、テントのなかでまだ半分、寝た頭のまま横になっていると、すごくたくさんの人々の楽しそうな声が聞こえてきた。
私たちのほかは誰もいないはずの島。たくさんの人がいるはずもない。これは本当に夢なんだな。
それにどうやら、日本語みたいだもの。そんなわけはない。やっぱり、これは夢なんだわぁ……。
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ではでは、この続きは後日また!
この島々を2回目に訪れたとき、私たちは本当に夢のような景色に出会ってしまいました。おまけに、日本では会えなかった人にも会ったんですよ。
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前にも書いた通り、国立公園に指定されている、ここの無人島のなかにはホットスプリング・アイランド(温泉島)という 名前の小さな島がある。
巨木のある森やトーテムポールが残るハイダ族の村跡を訪ねながら、この島々を巡る4泊5日のボートツアーでは、キャンプになるので、当然、バスルームもシャワーもない。だから、温泉島は非常にありがたい存在だ。
それも温泉島にある温泉は見晴らしのいい海沿い。もちろん、露天で、これが3つもあるのである。水着は着なければならないが、いうまでもなく、この温泉は至極、快適なのだ。
そのうえ、クイーン・シャーロット諸島のボートツアーは自然をなるべく守るために人数制限され、6~9月だけに入ることが許されていているのだが、私たちが行くのはいつも他の誰とも会わない9月の終わりころ。そのころになると、アラスカに近いここでは雨も多く、すでに寒い。冷え込んだ体を暖められるので、この温泉はホントに「極楽、極楽」と口にしたくなるほどに、気持ちいい。
ただし、残念ながら、ここではどこの島でも勝手にキャンプをしていいわけではないので、温泉島も温泉には入ってもいいが、キャンプは許可されていない。だから、近くの島にテントを張って、それから温泉島までボートで行かなくてはならない。これもまた無人島の島々の自然を守るためである。
最初は残念だなぁと思ったが、無人島らしさをずっと保ち続けるためにはこれも致し方ない。それに、温泉島に泊まれないことによって、じつは私たちは忘れられない光景を目にすることになったのである。
つまり、自然を守ることによって、私たちには“ラッキー”が訪れたのだ!
その日、私たちは温泉島の近くの島にテントを張って、夕食を済ませると、待望の温泉へと向かった。
温泉島の近くまでは移動用の大きなエンジンとスクリュー付きのボートで行けるのだが、15メートルほど手前になると、海が浅くなるため、ゴムボートに乗り換えることになった。
ゴムボートに乗り込んで、夜空を見上げるとそこは満天の星空。手に取れそうなほど近くに、数えきれない星が見えた。
「うわぁ、すごい。きれいだねぇ」と言いつつ、空から目線を下ろした私はそこで息を飲んだ。
「え~、何、これぇ。どうしたのぉ、すご~い」
一瞬、私は、本当に夢を見ているのか、錯覚なのかと思った。
空に見えた星が私たちのゴムボートの周囲に、キラキラと輝いているのである。
夜空の星が水面に映っているのかとも思ったが、動いているゴムボートの周囲にだけ、たくさんの星屑が見えている。
聞くと、これは夜光虫だという。「夢のような景色とは、このことだ」と私は本当に感極まってしまった。
あまりにもきれいなので、温泉島に上陸しても、私はまだ夢心地。そうして、さらに森のなかの道を温泉へと向かって歩き出すと、夜の蒼い光の小道の両側が、点々と白くボォッと光っている。手にとってみると、それはアワビの貝殻で、貝殻に星の光が反射して、やさしく道を照らしていたのである。手にしても、貝殻の周りには白い光が滲んでいた。
このとき、私はほとんどディズニー・アニメのなかにいる気分になった。そう、子どものころ大好きだったジュリー・アンドリュースの「メリー・ポピンズ」になったみたい。メリーが歩くと、魔法のように貝殻がポワンと光り、メリーがゴムボートに乗ると、夜空の星がやって来て、みんなでボートを運んでくれるのである。
もちろん、帰りのゴムボートでも魔法は続いていた……。
そのまま夢見心地でテントに戻り、私はとても幸福な気分でぐっすり寝た。そして、その翌朝、テントのなかでまだ半分、寝た頭のまま横になっていると、すごくたくさんの人々の楽しそうな声が聞こえてきた。
私たちのほかは誰もいないはずの島。たくさんの人がいるはずもない。これは本当に夢なんだな。
それにどうやら、日本語みたいだもの。そんなわけはない。やっぱり、これは夢なんだわぁ……。
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ではでは、この続きは後日また!