やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

↓投票ボタン押してね

blogram投票ボタン

幽霊だけど恋してる―304話

2014-04-22 07:36:25 | 小説
露子は意識朦朧としていた。

何が起きたのかさえ思い出せない。

ただ自然と落ちていく感覚だけがある。


意識が戻った時に見た物は、悪霊の覗き込む姿だった。

「イタタタ。ごめん。大丈夫よ。。。何が起きたっけ?」

咄嗟に把握できていないかった。

痛みをこらえて考えると、徐々に思い出す。

そうだ振り向いたときに、死霊の肘が目の前にあって、頬を殴られた。

それから・・・それからどーしたんだろう?

悪霊の顔は、前回死霊と戦った時のように、腫れてはいない。

周りの風景を見ても、さほど何も起きているようになかった。

どうしたんだろう。。。。

「ねぇ死霊は?あの悪い男の人は?」

少女は黙って指をさす。

その方角は、閻魔大王がいる方角だ。

そうか・・・閻魔大王がやっつけたんだ。

一番強い存在だから、死霊なんて朝飯前だろう。

だがそれと同時に、目の前に落ちている式神の半分を見つけた。

「式神・・・」

声をかけても返事が無い。

少女が小さく首を横に振る。

「・・・大丈夫。。。式神は何度でも蘇るから・・・」

露子は少女を慰めるように言った。

それは自分への言い訳でもあった。

「ねぇ他の人たちは?」

露子は金太郎や花子がいないことに気付く。

また少女は、閻魔大王の方角を指さす。

「もう。。。あの世に行ったの?」

今度は首を縦に振った。

「そうなんだ。。。さよなら言えなかったな」

露子は少し胸が熱くなるのを感じる。

涙が溢れだしそうだ。

さよなら・・・言えなかった。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする