やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―294話

2014-04-12 23:07:59 | 小説
露子は延々と自分の気持ちを閻魔大王に伝えた。

閻魔大王も心がある。

心と心で接すれば、必ず伝わると信じて。

閻魔大王の顔は、優しい顔と怖い顔の二つある。

その顔が入れ替わって、露子と話しをしていた。

しかしだんだんと怒りの表情が消えている。

それを、三途の川の向こうから見ている式神達にもわかった。

「もしかして、露子の気持ちが届いているのか?」

金太郎が呟いた。

誰もが息をのんで、見入っていた。

露子の気持ちが、閻魔大王に。。。

伝わってくれ!

願う。

誰もが自分が消滅しないことを祈ってはいなかった。

そんなことはどうでもいい。

露子の願いが、届けばいいと思っていた。

露子ならきっと出来ると信じていた。


「それだけか」

閻魔大王が露子に聞く。

「えっ?」

「そんなことぐらい、言わなくてもわかっている」

怖い顔の閻魔大王だ。

「言わなければ通じません」

「おまえが皆を思うのは、それだけかと聞いているんだ」

「それだけ・・・・」

「言葉で通じれば、それで物事が解決できるのか」

「どうすればいいのですか?」

「私は、おまえに願い事をひとつ叶えてやると言ったはずだ。おまえの望みは自分の気持ちを私に伝えることか?」

「伝えることではなくて、わかってもらえることです」

「わかればいいのだな?」

「いえ。そうではなく・・・」

「ほら人と言うのは、裏と表があり欲もある。それがある限り言葉で伝えれば、あわよくば欲が満たされると思う。浅はかだ」

「そんなつもりじゃ」

「ならば全く考えなかったのか?」

「・・・・それは、全くではないと・・・」

「ほら。そうだろう。欲があるのだ。人と言う生き物は」

「ではどうすれば理解して貰えるのです?」

「その答えが欲しいのか。それがおまえの望みだな?」

「いえ。望みではなりません。質問です」

「私には望みとしか受け取れないが」

露子は焦った。


コメント
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