やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―295話

2014-04-13 14:50:31 | 小説
「確かに・・・・確かに欲と言うか、煩悩があるのは認めます。それが人だから。ずんばばばぁや式神のように純粋ではいられない。でも、欲があってもその中から何かを選択する時は、人は決めることが出来ます」

「それが良いことだと言うのか?」

「はい」

「どこがだ」

「決めると言うことは、決心する。選択をするということです。選択をして人は成長も失敗も経験する。そーいうことです。でも決心をすれば人は強い」

「強い?どーいう風に?」

「私の魂と引き換えに、皆をあの世に連れて行ってください」

「魂と引き換えに?おまえの魂はいずれ消滅させる。あいつらとの引き換えにはならない」

「私の願いを叶えるって言いましたよね?」

「う?それがお前の願いということか?」

「はい」

「あいつら・・・と言うのはあまりにも漠然としているが」

「漠然ですか?」

「そうだ。一人だけ名前をあげろ」

「それって変です!一人だけって約束していないじゃないですか」

「約束?」

「はい。私達人間が欲があると言いましたけど、閻魔大王さんは嘘があるんですか?」

「嘘?」

「だってそうでしょ。願いは一つだけと言いました。一人だけとは言ってません」

「なるほど・・・・わかったならばあそこの岸辺にいる奴らを、この世に入れてやろう。ただし人はだ。式神はこの世には入れん」

「式神はどうなるんです?」

「どうもならん。あいつは人の心が作るものだ。心が消えれば消滅するし、心が通えばまた生まれる」

『露子。私は大丈夫。紙だからいつでも生まれては消える。心配しないで』

露子の心を探っていたのか、式神の声が聞こえた。

「でも・・・」

『たぶん。私を作った人があの世にいるから。そこに戻るだけだよ』

「そうなんだ・・・でも本当に?本当なの?」

『本当よ。以前も・・・大昔だけど私は生まれて、人の身代わりに消えた。そんなことあるのよ』

「だったら・・・・」

『心配しないで。心はいつも露子と会話できるから』

「わかった」

「それでいいのだな?」

閻魔大王が聞いてくる。

しかし露子は違っていた。

助けたいのはあそこにいる連中だけではない。

ここに来られなかった仲間達も、地獄に落とされた九尾狐も助けたい。

そして悪霊も死霊もだ。

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