式神の距離から見える合図。
それは露子が大事にしていたテンちゃんのぬいぐるみだ。
空中に高く舞い上がり、閻魔大王の頭上に届いたときに、生の世界から風を送る。
その風は強い力となって、閻魔大王の顔を覆っていた霧を一気に吹き飛ばした。
閻魔大王もこのことは予想もしていなかった。
風の強さに目を瞑った瞬間に、その顔は露わになる。
露子が想像していた閻魔大王とは違っていた。
その顔はまるで仏のように穏やかだと思えた。
ただ霧が消えると、その顔は見る角度により上下に二つあるようにみえる。
双頭ではないが、その上から見た時の顔は穏やかに天を見つめ、下から見上げる時の顔は恐ろしく地を睨んでいた。
天と地獄。
その感情を表した表情だ。
「露子。私の負けだ」
穏やかな顔がそう呟いた。
「ひとつだけ願い事を聞いてやると伝えた。その願いをいいなさい」
「はい」
露子がここに来た願いは、悪霊と死霊をこちらの世界に連れてくること。
だがこの試練を超えた時に、少し悩んでいた。
自分をここまで守ってくれた仲間たち。
自分を愛してくれた人達。
すべてを守りたい。
ずんばばばぁも返してほしかった。
だがそのすべてを叶える言葉は浮かばない。
「どうした?悪霊を地獄に連れてきたいか?死霊を地獄に落としたいか?それとも・・・生まれ変わりたいのか?」
「生まれ変わりたい?」
思わぬ言葉に、露子の思考が混乱した。
そんなこと考えもしなかった。
欲を言えばそうなのかもしれない。
もし生まれ変われれば、今度こそ本当の恋が出来るかもしれない。
生きている時に好きだった優一や、生霊の透のことは忘れてしまうかもしれないが、その経験を踏まえて新しい自分が生まれるかもしれない。
その事を考えると、露子も欲に負けそうだ。
でもそれはまた、露子の大切なものを失うことにもなる。
回答が出ないまま、時間が過ぎていく。
その時、「露子が幸せになることが一番だよ」
急にその言葉が、頭の中に響く。
「えっ?」
式神の声だった。
式神が答えをくれた。
私が幸せになること。。。
「それは・・・」
露子は閻魔大王を見上げる。
それは露子が大事にしていたテンちゃんのぬいぐるみだ。
空中に高く舞い上がり、閻魔大王の頭上に届いたときに、生の世界から風を送る。
その風は強い力となって、閻魔大王の顔を覆っていた霧を一気に吹き飛ばした。
閻魔大王もこのことは予想もしていなかった。
風の強さに目を瞑った瞬間に、その顔は露わになる。
露子が想像していた閻魔大王とは違っていた。
その顔はまるで仏のように穏やかだと思えた。
ただ霧が消えると、その顔は見る角度により上下に二つあるようにみえる。
双頭ではないが、その上から見た時の顔は穏やかに天を見つめ、下から見上げる時の顔は恐ろしく地を睨んでいた。
天と地獄。
その感情を表した表情だ。
「露子。私の負けだ」
穏やかな顔がそう呟いた。
「ひとつだけ願い事を聞いてやると伝えた。その願いをいいなさい」
「はい」
露子がここに来た願いは、悪霊と死霊をこちらの世界に連れてくること。
だがこの試練を超えた時に、少し悩んでいた。
自分をここまで守ってくれた仲間たち。
自分を愛してくれた人達。
すべてを守りたい。
ずんばばばぁも返してほしかった。
だがそのすべてを叶える言葉は浮かばない。
「どうした?悪霊を地獄に連れてきたいか?死霊を地獄に落としたいか?それとも・・・生まれ変わりたいのか?」
「生まれ変わりたい?」
思わぬ言葉に、露子の思考が混乱した。
そんなこと考えもしなかった。
欲を言えばそうなのかもしれない。
もし生まれ変われれば、今度こそ本当の恋が出来るかもしれない。
生きている時に好きだった優一や、生霊の透のことは忘れてしまうかもしれないが、その経験を踏まえて新しい自分が生まれるかもしれない。
その事を考えると、露子も欲に負けそうだ。
でもそれはまた、露子の大切なものを失うことにもなる。
回答が出ないまま、時間が過ぎていく。
その時、「露子が幸せになることが一番だよ」
急にその言葉が、頭の中に響く。
「えっ?」
式神の声だった。
式神が答えをくれた。
私が幸せになること。。。
「それは・・・」
露子は閻魔大王を見上げる。