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幽霊だけど恋してる―288話

2014-04-06 22:30:15 | 小説
その声に反響するように風が動いた。

この世界で、風が起きたのは2回目。

先程の風は強い生の風だった。

今度のは優しい暖かい風。

皆の想いが、暖かい風となって露子を包んだ。

皆露子の気持ちを分かっている。

三途の川を挟んで、二つの想いが重なった。

生の風が三途の川を越えた。

その瞬間に、露子の身体が消えていく。

生の世界に戻されている。

閻魔大王にまだ願いを言っていない。

「待って!!」

露子が叫んだが、その言葉はかき消された。

次に気付いた時は、皆の側だった。

「みんな。。。。なんで。。。なんでここに来たの」

「そりゃ露子が心配だからさ」

「バカよ。私のために」

「バカはおまえだよ。なんで一人で乗り込んだ」

「一人じゃないもん」

「ずんばばばぁと九尾狐か。。。俺達も同じ気持ちだ」

「九尾狐、助けなきゃ」

「もう遅いよ」

金太郎が言った。

「なんで?まだ消滅していないんでしょ?地獄だよね?」

「地獄と言うのは一度入ると抜けられないんだ」

「でも入れるんだから、出れるでしょ」

「出れないよ。出口が無いんだ」

「入った場所から出ればいいじゃん」

「それが出来るなら、、、、」

言葉を濁す。

「どうしたの?」

「出る前に消滅してしまうんだ」

「出るには消えるしかないんだ」

「えっ?」

「地獄は絶対に束縛された世界じゃないらしい。でも出るには消えるしかないんだ」

「誰に聞いたの?話した人がいるなら出た人もいるんでしょ」

「ううん。出た人はいない。鬼の門番が教えてくれた」

ハンチングの男が言う。

「俺さ。背後霊になる前に、一度あの世に行ったんだ。その時に霊界の案内役を一度していた。地獄の案内役の鬼から聞いたんだ」




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