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地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

ロングおじさん哀悼……京急800形

2011-01-05 00:00:00 | 大手民鉄 (京急)


 かつて1970年代の後半、「夕やけロンちゃん」という午後5時からの情報バラエティ番組がありました。司会の吉村光夫アナウンサーは背が高く顔が長いので「ロングおじさん」と呼ばれ、ウイットに富んだ優しく平易な語り口は、幼稚園~小学生だった私にとっても非常に馴染みやすいものだったのを思い出します。何を隠そう、具体的な内容は全く覚えていませんが、毎日楽しみに見ていたのです……(^^;)。そして、たまに出て来る鉄道の話題に関するロングおじさんの解説はやたらと熱く、鉄道少年にならんとしていた幼少の私にもビビッと来るものがありましたが、やがてお年玉を切り崩してRF誌を買うようになって、ロングおじさんの本当の姿が明らかになり、改めて新鮮な衝撃が……。何とロングおじさんは、RF誌に専門的な鉄道評論や海外鉄旅行の四方山話を積極的に寄稿されるバリバリの「鉄」だったとは! そして、さすが戦前生まれの教養人だけあって、文体は何とも紳士的で、未知の世界に飢えていた少年の私は氏の文章をのめり込むように読みふけったものです。とくに、まだナローだった当時の花東線や、ディーゼルカー「中興号」が主力だった頃の阿里山林鉄に乗車された台湾レポートに至っては、親しみやすい車両が少しエキゾチックな世界を走っている雰囲気を余すところなく洒脱に記述されており、どれだけ「あぁ良いなぁ!」と思ったことでしょう! (花蓮駅前に現存する木製ナロー寝台車の乗車記に至っては、「ヤバ過ぎ!」とワクワクしたものです ^^;)



 そう……恐らく私の鉄道趣味における海外鉄的要素の原点は、まさにロングおじさんのレポートにあると申しますか……。アナウンサーを辞められて悠々自適、いや八面六臂の趣味人となられたロングおじさんの生き方は、自分もこんな感じで年をとることが出来れば良いなぁ……と思う模範ですらありました。
 しかし、そんなロングおじさん・吉村光夫氏が新年に入り逝去されたとか……。まさに、ご自身がもっとも深く造詣を傾けておられた京急の名車・1000形の引退と相前後するかのようにこの世を去られるとは……。盛者必衰・諸行無常が世の習いとはいえ、非常に寂しいことです……。一ファンとして、個人ブログの場ながら心よりご冥福を申し上げるとともに、楽しいレポートで度々刺激して下さったことに心より御礼申し上げます。

 というわけで、今回の画像は「夕やけロンちゃん」全盛時の1978年に登場した京急のダルマさん・800形を……。新年に達磨といえば目出度いものの象徴かも知れませんが、新年であっても悲喜こもごもはあるわけで、今回はあくまでロングおじさんの時代のイメージと個人的に切り離せないダルマさんで哀悼の意を表したいということであります……。肝心のダルマさんも、1000形が引退した今となっては京急現役最旧型車両となってしまったわけで、分散クーラーや豪快すぎる走行音もいつの間にか前時代的な印象を伴うようになったなぁ……と思います。今後銀1000が増備される際には間違いなく800形・2000形のいずれかが廃車となることは疑いなく、ロングおじさんの後を追うかのように800形もあっという間に廃車となって行くのではないか?とすら想像されます。そこで、ロングおじさんの御逝去を機に、今のうちに800形を一層楽しんでおかなければならない、と改めて思うのでした。