ミツバチは人間にとって蜂蜜の提供者というだけでなく、様々な植物の花粉を媒介しそれらの生殖を手助けするポリネーターとしても自然界の中で非常に重要な役割を担っています。また数少ない神経細胞から構成された脳を持ちながら社会性やダンスによる高度なコミュニケーションを成し遂げるなど、多くの生物学者にとって興味を刺激する存在です。
セイヨウミツバチ (Apis mellifera) の国際ゲノムプロジェクトの完了が先月26日に宣言されました。昆虫の全ゲノム解読は5例目だそうです(今までにキイロショウジョウバエ、ハマダラカ、カイコ、あと一個は何か知りません…)。4年がかりだったこのプロジェクトからは、今までのモデル昆虫だったショウジョウバエやカイコなどからは分からなかった様々な興味深い情報が得られているそうです。
まず、DNAのメチル化や概日時計(24時間のリズムを刻む体内時計)に関与する遺伝子らはショウジョウバエ(Drosophila)よりもむしろ脊椎動物との共通性が高いようです。概日時計のメカニズムに関してはよく研究されているショウジョウバエが昆虫のモデルとされてきましたが、そうしたショウジョウバエの地位はどうやら失墜しそうです。また、膜翅目(ハチ・アリの仲間)は完全変態昆虫の中でもこれまで考えられていたよりもずっと早く分岐した可能性が高く、甲虫類よりも早いのではないかと言うことです。
これまで昆虫の分子生物学はDrosophilaという単一のモデル生物で語られる傾向がありましたが、最近の研究で分かってきたのは彼らは実は昆虫の中でもかなりユニークな存在であるということです。そもそもこれだけ多様化している生物群に対してして「昆虫は」という主語は意味が無いのかも知れません。現在進行中の不完全変態昆虫であるエンドウヒゲナガアブラムシのゲノムプロジェクトの完了で何が分かるのか楽しみです。
<参考>
Honey Bee Genome Illuminates Insect Evolution and Social Behavior(Sience)
Molecular and phylogenetic analyses reveal mammalian-like clockwork in the honey bee (Apis mellifera) and shed new light on the molecular evolution of the circadian clock
Genome Res. Published October 25, 2006, 10.1101/gr.5094806 Free access
セイヨウミツバチ (Apis mellifera) の国際ゲノムプロジェクトの完了が先月26日に宣言されました。昆虫の全ゲノム解読は5例目だそうです(今までにキイロショウジョウバエ、ハマダラカ、カイコ、あと一個は何か知りません…)。4年がかりだったこのプロジェクトからは、今までのモデル昆虫だったショウジョウバエやカイコなどからは分からなかった様々な興味深い情報が得られているそうです。
まず、DNAのメチル化や概日時計(24時間のリズムを刻む体内時計)に関与する遺伝子らはショウジョウバエ(Drosophila)よりもむしろ脊椎動物との共通性が高いようです。概日時計のメカニズムに関してはよく研究されているショウジョウバエが昆虫のモデルとされてきましたが、そうしたショウジョウバエの地位はどうやら失墜しそうです。また、膜翅目(ハチ・アリの仲間)は完全変態昆虫の中でもこれまで考えられていたよりもずっと早く分岐した可能性が高く、甲虫類よりも早いのではないかと言うことです。
これまで昆虫の分子生物学はDrosophilaという単一のモデル生物で語られる傾向がありましたが、最近の研究で分かってきたのは彼らは実は昆虫の中でもかなりユニークな存在であるということです。そもそもこれだけ多様化している生物群に対してして「昆虫は」という主語は意味が無いのかも知れません。現在進行中の不完全変態昆虫であるエンドウヒゲナガアブラムシのゲノムプロジェクトの完了で何が分かるのか楽しみです。
<参考>
Honey Bee Genome Illuminates Insect Evolution and Social Behavior(Sience)
Molecular and phylogenetic analyses reveal mammalian-like clockwork in the honey bee (Apis mellifera) and shed new light on the molecular evolution of the circadian clock
Genome Res. Published October 25, 2006, 10.1101/gr.5094806 Free access