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カムイ外伝の白土三平さんと寿恵比楼旅館

2009年09月13日 | いすみ鉄道沿線の文学・歴史

日本映画最高のスタッフ・キャストによるエンタティメント超大作!!として、9月19日、全国ロードショー『カムイ外伝』をご覧になった方はいらっしゃいますか?

原作者は白土三平さんです。 テレビでこの映画のCMが流れたので、この白土三平さんと、いすみ鉄道大多喜駅から10分ほど歩いたところにある寿恵比楼旅館(現在は営業されていないようです。小湊鉄道バス営業所向い)のことを少しご紹介します

私の手元に、つげ義春『つげ義春コレクション・苦節十年記/旅籠の思い出』があります。そのP16~21に、昭和40年9月末頃、白土三平さんとつげ義春さんが半月ほど滞在して仕事をされた時のことが書かれています

以下、『つげ義春コレクション 苦節十年記/旅籠の思い出』より抜粋

 昭和40年の9月末ころ、白土三平さんとそのマネージャーの岩崎さんと私の三人は、千葉県大多喜町の「寿恵比楼」という宿に半月ほど滞在し仕事をしたことがあった。私は短編を一作仕上げ、白土さんは案だけを練っていた。その案を練るために白土さんはこの宿をよく利用していたようで、仕事の合間にそこいらへ釣りをしに行くバイクまで預けていた。
 この寿恵比楼という宿は、町外れの夷隅川の橋のたもとにあった。商人や工事関係の客が主に利用するようで、昔ながらの商人宿だった。主人はどこかに勤めていて、三十歳位のおかみさんと、その妹の十七、八の娘さんと、お婆さん(主人の母親)が宿を切り盛りしていた。もっともお婆さんは何もせず、いつも帳場の長火鉢の前で煙管をふかしているだけだったが。おかみさんはぽちゃっとして明るく気さくで、おかみさんの里から手伝いに来ている妹のカズちゃんは、色白で可憐でやはり明るい娘だった。お婆さんは男のように髪を短くしていた。主人はあまり家にいないので、私はチラとしか会ったことがなく印象に残っていない。
 白土さんはこの家族と親しい付き合いをしていたようで、私と滞在していた時も、お茶に呼ばれたり、宿代に含まれていないお午にも時々呼ばれ、私も岩崎さんも一緒に階下の帳場へドヤドヤおりて行って、おかみさんやカズちゃん相手に世間話をしたり、その場に寝そべって煙草をふかしたりで、随分気ままにしていた。
 その宿の隣には、小湊鉄道バスの車庫があった。バスガイドの寄宿舎もあり、夜になるとその寄宿舎の窓にいっせいに明かりがともり、若いガイド嬢たちの賑やかな声が聞かれた。宿と寄宿舎の窓はいくらも離れていないので、開け放った窓から彼女らの話は筒抜けだった。男三人のこちらを意識して声を大きくしていたのか、大声だと段々口調が芝居がかって、身振りにも抑揚がつき、劇を見せられているようで楽しかった。
 私はこういう宿を定宿にしている白土さんが羨ましく思え、自分も将来たくさん稼げるようになったら、定宿を持ちたいと思った。
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 寝る時にカズちゃんが蒲団を敷きに来て、私がドテラのまま床に着こうとすると「ドテラのまま寝るとせつなくてねえ」と言った。哀しいときのせつないは分かるけど、ドテラでもこもこして寝苦しいのをせつないと言うのは面白いと思った。可憐なカズちゃんが恋愛でもした時は、せつない胸のうちをどういう言葉で表現するのだろうと思った。
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 この文を綴っていて私は、これまでにどの位、旅籠に泊まったのか思い出してみた。すると全部は思い出しきれないけれど、案外多いことが判った。

 大多喜では寿恵比楼以外に「大屋」という旅籠に四十八年に泊まっている。大屋の方が寿恵比楼より造りは本格的な旅籠で、明治か江戸時代のままとか言っていた。宿の人の感じも悪くなかった。おおむね観光旅館より商人宿の方が気さくで親しめるように思える。 (以上 抜粋)

つげ義春さんが2年後に再び寿恵比楼旅館に行かれたとき、おかみさんに手土産を渡しながら「さっき白土さんに会ってきた」と言うと、おかみさんが「白土さんは長いことお見えになっていない。どうしているのか」と聞かれた。その頃白土さんは上総湊に家を借り、仕事場にしていたので途中寄って来たことを報告すると、そばにいたお婆さんが

「あんだと ヒゲは湊にいるんだと、それじゃカカアも一緒だべ」と。

白土三平さんは髭も髪も構わぬほうでのび放題、印度の行者を想わす風貌だったが、マンガ界の巨匠も寿恵比楼旅館のお婆さんには、ただの髭と言われているのが可笑しかったそうです

つげ義春さんがこれだけ書かれているのですから、白土三平さんご本人のエッセイなどがありましたら寿恵比楼旅館のことなどが語られているのではないかと思います。

 

映画カムイ外伝』2009年9月19日公開  原作:白土三平/<WBR>脚本:宮藤官九郎/監督・脚本:崔洋一/出演:松山ケンイチ、小雪、伊藤英明、佐藤浩市、小林薫、大後寿々花、イーキン・チェン、金井勇太、芦名星、土屋アンナ ...

白土 三平(しらと さんぺい、男性、1932年2月15日 - )は、東京都出身の漫画家。本名は岡本 登(おかもと のぼる)。『忍者武芸帳 影丸伝』『サスケ』『カムイ伝』など忍者を扱った劇画作品で人気を博した。

『カムイ伝』(カムイでん)は、白土三平の長編劇画。1964年から1971年まで『月刊漫画ガロ』に連載された。連載中、『週刊少年サンデー』に「カムイ外伝」を不定期連載している。1982年から1987年まで『ビッグコミック』誌上に「カムイ外伝 第二部」を連載、そして同誌上に1988年から2000年まで「カムイ伝 第二部」が発表された。現在「カムイ伝 第三部」の発表が待たれている。

*白土三平ファンサイト  こちら  すごいサイトです!


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6 コメント

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次回は・・・ (ジャンヌ)
2009-09-13 03:04:24
つげ義春さんと寿恵比楼について書いてみようかと。。。

ムーミン列車のイメージとは全然違いますが、いいでしょうか? ぎゃはは・・・!!(^Q^)/^ 
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ムーミンと違うのもいいものでっす! (祈・大河)
2009-09-13 23:06:00
「カムイ外伝」 人気が出そうですね!
白土三平さんにもスポットがあたり、案を練った大多喜にもって、なりますね。
脚本の宮藤官九郎さんにもぜひ、目をつけていただきたいです。

主演の松山さん小雪さんには ピッタリノデートコース
おこしやす~です。

つげさん伝 よろしくお願いします。
多方面の味わいがあるい鉄沿線!
つげ義春 これからの季節にぴったりです!
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すごいじゃないですか! (たんちんぽん)
2009-09-14 21:15:04
白土三平とつげ義春知ってます知ってます
白土三平さんの「サスケ」は見てました。ムーミンより知ってるかも!!
「サスケーーー」って声が今でも聞こえてきます。
大多喜の風が昭和を代表する二人の偉大な漫画家を育てたのね。驚きました
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知らなかったです! (1120)
2009-09-18 21:04:21
ご無沙汰しております。
驚きました。
この旅館はあります。しみじみ見たことがなかったですが、今度よく見てみます。
知ったかぶりして、人に教えてしまうかも。
ありがとうございます。
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Unknown (魔君)
2009-09-27 12:30:10
初コメですが!

寿恵比楼は同級生が居るのでよく泊まりに行きましたよ!
お客さん用のお風呂に入ったり
お客さんと朝ご飯食べたりしましたよ~
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寿恵比楼 (ジャンヌ)
2009-09-27 21:16:12
魔君さん はじめまして

寿恵比楼を生で知っているなんて羨ましいです。
このブログで「ドン・ロドリゴ漂着~日墨400周年記念ドラマ」を書いてくださっている市川市の久我原さん(出会いが、久我原駅だったためHNがそれになりました)も、興味を持っているお一人です。
また、千葉市のコーキチさんは、「ガロ」の時代からのファンです。

昨年こちらで取り上げた記事もご覧いただければ幸いです。
http://blog.goo.ne.jp/isumitetudo/e/d8c0e2a6516abe5c0be0dd9563274369#comment-list

つげ義春さんのことは、また書きたいと思っています。地元情報お待ちしております。
白土三平さんの「かくれ宿」だったこともファンにはたまらないかもしれません。

寿恵比楼のカズちゃんをモデルにして書かれたであろう「紅い花」を持っていたはずなのに行方不明。新しく手に入れたいと思っています。
ちなみに、ここで紹介した「つげ義春コレクション」は今年出版されたので本屋さんにありますよ。 
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