「これまでとは違う局面となっていて患者が増加する局面を想定すべきだという指摘をいただいたので、前広にいろいろなことを考えていく」
朝、テレビに映し出された厚生労働大臣がそう言うのを聴きながら、
「マエビロ?」
といぶかしむわたしは無知なのだろうか、生まれてはじめて聞く言葉だ。
さっそく検索してみると、次のようなツイートに目がひかれた。
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”はあちゅう@ha_chu”
「まえもって」のことを「前広に」というのも三菱商事。もとは霞が関用語。
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ははぁ官僚用語か、と「前広 霞ヶ関」で検索すると、『浅野史郎夢らいん』というサイトがあり、こう記されていた。
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その他に「前広に」(十分な時間的余裕をもって)というのも外務省独特である。「原稿の送付は前広にてお願いします」といったふうに使われる
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外務省が発祥らしい。
いやいや、これだけでは信用に値するソースだとは言えない。
ならばオーソドックスに辞書を引くべきでしょうと、もういちど「前広」で検索してみる。
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(『大辞林第三版』より)
まえびろ【前広】
(名・形動)
前もっておこなう・こと(さま)。
「ーな検討をお願いする」
「かういふことゝしつたらーーーーからミルクと牛肉(うし)を喰いためて/西洋道中膝栗毛 魯文」
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『デジタル大辞泉』より
まえ-びろ〔まへ-〕【前広】
以前。前々。多く「に」を伴って副詞的に用いる。
「ーーーーに手形せうために呼びにやった」〈浄・女腹切〉
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『西洋道中膝栗毛』は仮名垣魯文の作で1870(明治3)年刊行、『長町女腹切』は近松門左衛門作の浄瑠璃でそれにさかのぼること150年あまり前の1712(正徳2)年初演。外務省由来の官僚用語として認知されだしたという説が誤りだとまでは言わないが、どうやらその起源は古いようだ。
と、そこまで突きとめて、それらをメモし、おもむろに納豆飯を食いはじめた朝。
いろいろとすることがありすぎて、できるだけ前広に対応すればよいのだが、たいていが思いつきばかりなのでこれがまた、どうにもならない。
かくして、今日もわたしの朝は忙しい。
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