答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

〈私的〉建設DX〈考〉その3 ~ DXってむずかしい

2024年06月10日 | 〈私的〉建設DX〈考〉

(建設業における)生産性向上とDX

日本の建設業で「生産性向上」が叫ばれはじめて久しくなりました。
とりも直さずそれは、こと「生産性」という側面でわが建設業は、圧倒的に他産業(ぼくの見るところ、どうもそれは製造業をあらわしているようですが)の後塵を拝しているという現状があったからです。

生産性向上については、色々さまざまな説明がありますが、ひと口に言ってしまえば、限られたリソース(人員、資機材、時間)のなかでより多くの成果を生み出すこと。これで差し支えないでしょう。人員や資機材が同じならば時間を短く、時間が同じならば人員や資機材を少なく。それが実現したときの状態を、生産性が向上したと言いあらわします。

繰り返しますが、その実現を図る武器はデジタルテクノロジーです。アナタもぼくも、今という時代に生きているのですもの、それが自然な流れであり、もっとも効果的であると考えることも当然のことなのです。

では、どのような具体的効果があって生産性向上が実現するのでしょうか。

もっともわかりやすいのはICT建機の使用による省力化とスピードアップでしょう。それは、建機が直接生み出す結果もそうですし、ぼくの体験では、丁張り設置などの測量作業がほぼなくなることによる効果にはもっとおおきなものがあります。
ただ、その他のICT施工となると、そのすべてが生産性向上における効果を生み出すと一概に判断することには無理がありすぎます。また、ICT土工における効果でさえも、部分最適にすぎません。ヘタをすれば、次の工程へとスムーズにバトンタッチができないことで、ICT建機を用いることで縮めた時間が、現場全体にとってはなんの役にも立たなかった、などということにもなりかねません。
いや、笑い話ではないのです。
たぶんそれは、日本全国で日常茶飯に起きているのではないかとぼくは推察していますし、もちろん、自分自身をその例外としてあつかうこともありません。

繰り返しになりますが、必要不可欠かつクリティカルなのは、マネジメントです。それによって、縮めたタスクと縮めたタスクのあいだにある隙間を埋めなければ現場全体の利益にはつながりません。もちろん、企業全体にとってもそれは同様です。

しかし、たとえ適切なマネジメントによって生産性が上がったとしても、「デジタル技術を活用して、業務フローの改善や新しいビジネスモデルの創出を通じて、それまでのあり方を変え、より良い未来を創造する取り組みがデジタル・トランスフォーメーション、すなわちDXである」ならば、それはあくまでもDXの一部であり、その実現のための一段階でしかありません。

とはいえ生産性向上が、DXに占める役割には、やはり大きなものがあります。生産性を向上させることで、業務の効率化やコスト削減が実現できたとしたら、それが企業にどのような好影響をもたらすかは言わずもがなのことでしょう。
しかし、DXはそれにとどまらず、ビジネスモデルや業務プロセス全体の変革、あたらしい価値の創出を目指す広範な取り組みです。となると生産性向上は、DXへと至る歩みのなかで達成される成果のひとつであり、DXを進めるうえで実現されるものだと解釈するのが自然ではないでしょうか。


DXってむずかしい

そう、ここまで読んでくれた奇特なひとは、もう気づいているでしょうが、DXを現実のものとするのは、なかなかに困難です。
たしかに、エリック・ストルターマンが提唱したDXの概念は「ICTが行きわたることが人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させること」というものでした。しかし、それはあまりにも単純で呑気にすぎるというものでしょう。何度も言うように、「あたらしい技術」を使えばそれで未来はバラ色というものではありません。そこには必ず、「あらたな仕事のやり方」を模索する意思と実践が伴っていなければなりません。「これさえやれば上手くいく」などというセールストークには、今どき小学生でも引っかかりません(なぜだか小金を貯めた年寄りはコロッとやられる例があとを絶ちませんが)。打ち出の小槌など現実には存在しないのは昔も今も同じこと。デジタル化したからといって、あらゆる面でよりよい方向に変化するはずがありません。

ぼくたちの現実は、ICTを使って生産性向上ですらおぼつかないのに、ましてデジタル・トランスフォーメーションなどと・・・というところでしょう。
とはいえ、そんなことを言っていても前へは進みません。
泣き言を言わずに、まだまだ掘り下げていってみましょう。


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