答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

〈私的〉建設DX〈考〉その9 ~ ライダー・・・へんしん!!

2024年06月26日 | 〈私的〉建設DX〈考〉

勝負の分かれ目は・・

前回の締めくくりでぼくは、DXへと至るプロセスとして提示した3パターンのうち「メタモルフォーゼ」を、ローカルで生きる中小建設業が「建設DX」を考えるうえでの対象外としました。

どう足掻いても、たとえば「ケータイからスマートフォン」というイノベーションなど起こしようがないぼくたち小規模建設業者には、そのイノベーションが実現したことによって手に入れたデジタルテクノロジー(ツール)を自分のものとして、どのように活用できるかが勝負の分かれ道だと考えるからです。
しかし、そのデジタルツールの使途として当初の想定にはなかった活用方法を考え出し、自分たちの仕事のやり方を変え、さらにそれを発展させていくということは、ローカルかつ小規模な企業や、そこではたらく個人であっても、十分に実現可能なことです。

ぼくが、ぼくやあなたのような地元建設業者にとっての在り方であり、またDXへの向かい方だと考える「コペルニクス的転回」や「ラテラル思考」は、そのようなアプローチのことを言います。言い方を換えればそれは、切り口を換えることであったり、斜め上からの発想をする、ということでもあります。


アイホンライダー

2つほど例を挙げましょう。
まずひとつ目はライダーです。仮面ライダーではありません。iPhoneLiDARです。
といっても、今日びのわが業界で、「ライダー」という言葉の響きから仮面ライダーを想像するものなど、ごくごく少数派でしょう。そもそも、頭の「ラ」にアクセントをつけるライダーに対し、LiDARの読みは今風にアクセントがない平板なものですから、まちがいようがないのですが、そこはそれ、昭和という時代に少年期と青年期をすごした身であれば、ライダーといえば仮面ライダーであり、畢竟、LiDARという語感にも、ついつい過ぎし日の郷愁を感じてしまうおじさんなのでした。
余談です。元へ戻ります。

そもそもLiDAR技術は、環境を3Dでマッピングするためにレーザーを使って物体の距離や形を計測するものです。
アップルはこれを12Pro以降のiPhoneに搭載し、拡張現実(AR)技術や高度なカメラ機能、詳細な3次元マッピングなどを実現することから、利便性を向上し利用価値を高めようとしました。

これによって、物体との距離を正確に計測することが可能となりました。
たとえばそれは、ARアプリケーションの精度と反応速度の向上につながり、仮想オブジェクトを現実世界に配置することが可能となったことにより、ゲーム、教育、インテリアデザインのアプリケーションでよりリアルな体験を提供できるようになりました。(1)
また、写真撮影においては、より強いボケ効果をつくりだすことに成功し、低照度下でもオートフォーカスの速度と精度を高めることが、被写体と背景との距離を正確に測定できる機能によって実現しました。(2)
(なんと、当時世間を驚かせたiPhone12Proの写真は、LiDAR技術がその素となっていたんですねえ)
物体や空間を正確にスキャンできる機能は(今のところスキャニングする人間のテクニックに左右されるところが大ですが)、現実世界を3次元化したものを、さまざまなコミュニケーションに利用することが可能となりました。(3)


ライダー変身!

本邦の建設業で着目されたのが(3)の機能です。
そもそもLiDAR技術は地上型や車載型のレーザースキャナで点群データを取得する方法と同じです。であれば、ポケットに入れた「ケータイ」がスキャナに早変わりすることが可能です。

たしかに、遠距離になると精度がわるくなったり(今のところ約5mが限度です)、使用者のテクニックに依存するところが大であったりと、問題は多々ありますが、1千万円のレーザースキャナのある部分を、20万円のスマートフォンができると思えば格安ですし、なによりそもそもそれは、普段は電話機あるいはカメラ、もしくはインターネットへのでもあり、様々なアプリケーションを使うためのデバイスなのです。その機能のひとつとしてスキャナを使う。そう考えれば安いものではないでしょうか。

いつ、どこの誰が、とは特定することができませんが、この国に住むどこかの誰かが、これを自分たちの仕事に活用することを思いつきました。iPhone LiDARで現況地形や構造物をスキャンし、生成された点群データを数量計算や出来形管理に用いる。あるいは、LiDARで手軽に取得した3次元モデルによって現地現物の情報を共有し、課題の抽出や問題解決を図る。

これがラテラル思考に当てはまるのか、あるいはコペルニクス的転回なのか。厳密に言えばどちらでもないのでしょうし、そうやってカテゴリーを分けることに特段の意味があるとも思えません。しかし、とりあえずぼくはこれを、ラテラル思考の範疇に入れたいと思います。そのベースにはスマートフォンという技術革新を積極的に活用し、あらたな手法を開拓することによって、仕事のやり方を変えていこうという姿勢があります。そのうえで、建設業界の問題解決へ、ひとつのあたらしいアプローチを提示し、業務プロセスの変革をもたらす可能性を示しましたということは、DXへ至る道の一環として評価するべきでしょう。

ただ、それでDXが実現できたわけではありません。
とはいえそこには、あたらしい視点があります。ちがうアプローチがあります。これに、さらなる「ひねり」を加えるか、あるいは切り口を換えるか、はたまた斜め上を行く発想を取り入れるか。いずれにしても、その試行錯誤の繰り返しが「仕事のやり方」を変えていきます。それを繰り返すひとや組織の「仕事のやり方」が変わっていきます。
そして、その先にあるのがDX(のようなもの)の実現なのではなかろうかと、

ライダー・・・・へんしん!!

往年の藤岡弘の勇姿を思い浮かべつつ、ぼくは思うのでした。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 〈私的〉建設DX〈考〉その8... | トップ | 〈私的〉建設DX〈考〉その10... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。