ヒルネボウ

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腐った林檎の匂いのする異星人と一緒 37 いつものおしゃべり(可愛いエマ登場)

2024-02-28 23:11:26 | 小説

   腐った林檎の匂いのする異星人と一緒

     37 いつものおしゃべり(可愛いエマ登場)

・ありがとうございま~すっと。

帰ったね、やっと。

・ふあ。

お客さん、減ったわね。

・表は危険だからって。

風評被害。

・嫌なご時世ですよね。

抗議の意味かしら。

・コーヒーでも淹れます? 

あなた、どう思う? 

・お砂糖、いくつでしたっけ。

身を投げるのって、あれ、抗議なのかね? 

・ミルクは要らないっと。

空から人が降って来るのよ。

・上を向いて歩こう。

元何とかも増えてきてるし。

・他人事じゃないですよね。

さっきのお客さん、元何だか、知ってる? 

・元詩人? 

あら、誰でもそうよ。

・ですよね。

人間は生まれてすぐ詩人になるの。それがね。

・ええ、ええ。

詩を書いた途端、元詩人になるの。

・元司書じゃないんだ。

元殺し屋なんだって、あの人。

・ああ。聞いたこと、ある。

怖いわねよえ。

・でも、「元」でしょう? 

「元」だから怖いのよ。

・ええ? 

だから、あんたはアマチュアなんだって。

・どうして私の話になるんですか。

プロ意識が低い。

・おぼこ? 

いいこと。現役の殺し屋はね、依頼された仕事でしか、人を殺さないの。

・そうかな。

そうよ。プロ意識って、そういうもんなの。

・だったら、殺し屋って世界で一番安全なのかも。

だんだん、わかってきたみたいね。

・じゃあ、「元」はもっと安全かな。

反対。

・ぐさっ。

プロ意識がなくなって、テクニックだけ、残ってるの。

・ああ、元教員みたいなもん。

生徒でもない人間を見下すのよね。

・「元」じゃなくても、うぜ。

人間の屑。

・寄生虫。

黴菌。

・元刑事さんは忙しそうでしたよ。

死ぬまで忙しがってたね。

・死んでも忙しかったりして。

元何とかって、昔取った杵柄を振回すんだ。

・ぶらぶら。

ふらふら。

・そういうのに出会うと、むかつきません? 

むかつく。むかつく。

・舌、引っこ抜いてやろうかって、あたしなんか、つい思っちゃう。

閻魔様。

・エマって呼び捨てにしてくれていいんですよ。

エマ。

・はい。

エ~マ。

・は~い。

可愛いエマ。

・はい、は~い。

エマみたいな人がいるから、殺し屋稼業が成り立つわけよ。

・元少年Aのお仕事ですかね? 

しっ。壁に耳あり。

・誰がプロだか、見ただけでわかるんですか? 

わかるわよ。

・どうして。

だって、私もプロだもん。

・えっ? マダムも元殺し屋? 

失礼ね。現役よ。

・武器は? もしかして、あのチェーン・ソー? 

武器はね、この目。

・どっちの? 

どっちもよ。ほら。これ、これ。斜めに見てから、すっと流す。

・やだ。ぞくっとしましたよ、今。あたし、女なのに。

うふふ。

・でも、流し目なんかで人が死ぬもんですかね。

死ぬわよ。

・嘘だ~ 

死ぬというか、参っちゃうのね。

・ああ、わかった。男殺し。

知らなかった? 

・はい。いえ、てっきり「元」だとばっかり。

まあ、何ということを仰せられるか。

・今、誰かを狙ってんですか。

ほら、いつも本みたいな箱みたいなの、持ってる。

・箱みたいな本じゃなくて? 

どうせ中身は空っぽよ。

・元刑事さんが探してたのって、あれかな。

あの男、元何だか知ってる。

・興味な~い。

そこを何とか。

・元異星人? 

惜しい。元冷凍人間よ。

・人は見かけによらないんだ。

見かけ? 

・あの人、女性恐怖症だって。

知ってる。

・知ってるのに? 

知ってるからよ。

・すっご~い! 

でしょ? 

・うふふ。

あはは。

・でも、どなたのご依頼? 

それはねえ…… 

・はい。

ひ・み・つ。

・ですよねえ。

あなたって、元乙女? 

・やだ~。現役ですよ~。プンプン。

それ、やめな。

・じゃあ、プリプリ。手は、ええっと、こうやって…… 

……おや。噂をすれば何とやら。

・こほん。いらっしゃいませ。

 

 


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