昨日の朝日新聞朝刊に、ひときわ目を奪われた写真があった。
よく見ると、それは「将棋名人戦」。羽生善治名人と行方尚史八段の対局シーンなのであるが、
フォーカスされているのは、中央で鋭い視線をおくり対局をみつめる女性。
記事に目を移すと、「作家・朝吹真理子」寄稿と書かれていた。
2日間、対局に密着し、勝負を見て何を感じたかの想いを綴っていた。
まず写真に目が奪われ、そして文章に心が惹き付けられた。
文章の中で、読み返したところがいくつかあった。
前文後文を省いているので、少しニュアンスが伝わりにくいかも知れないが、拾ってみた。
向かい合う二人の息も重い。「一手さきの未来を考えては壊し、また考える」。
それを二日間繰り返している。「時間は流れるのではなく削りとられるものとして存在する」
書き出しは、対局室の閉塞感の描写で始まっている。
終わりが、また対局室の「床の間に生けられた蕾の鉄砲百合が咲き、青いにおいがしていた。
盤を挟む座布団に、ふたりの体の重みが残っている」と結ばれていた。
読み終えて思ったのが、描写する素材を繊細に感じとり、それを料理しもてなしていただいたような気分になった。
※この記事は2015年5月「心と体のなごみブログ」に掲載したものを加筆し転載
※写真は、2015年5月23日の朝日新聞に掲載された記事を転用