特許庁の任期付職員試験の過去問を解く。
模範解答を書く力はないので、一言コメントだけ。
平成15年度任期付職員採用試験(化学)
【問】 1.光触媒
【解】光、主に紫外線を当てると活性化する触媒。チタン酸化物。表面の有機物を分解できる。外壁に塗ると表面をきれいに保てる。
【問】2.回転異性体と構造異性体
【解】異性体は分子式では同じだが、構造や性質が異なる分子のこと。
炭素原子のまわりに4個の官能基がつくが、その立体配置が鏡で映す重なるような配置で異なる異性体を光学異性体という。
【専門技術論文】
【問】1.クロロベンゼンを硝酸と硫酸でニトロ化するとき、オルト位とパラ位が置換され、メタ配位にならないのはなぜか。論述せよ。
【解】ベンゼン中の電子密度が塩素の付いた炭素から数えてどの位置が大きいか異なるため。ニトロ化する際にニトロ基が電子を求めるか、与えるか、とも関係する。
【問】2.炭素の各種同素体について、混成軌道の概念を使って、構造、性質、用途について論述せよ。
【解】炭素同素体は黒鉛、ダイヤモンド、フラーレンに代表されるカーボンナノ構造体。平面的結合をするか四面体立体結合かによって異なる。同素体は色や導電性、強度が異なる。
【問】3.CO2 による地球温暖化のメカニズムについて、量子論の立場から説明し、また、地球温暖化を抑制する対策を論ぜよ。
【解】太陽からの熱のうち、特に赤外線が熱を運ぶ。温室効果ガスとは赤外線の波長のエネルギーを吸収するガスのこと。ガス分子の電子構造によって決まる。代表例は二酸化炭素ガス。抑制には植林と石油燃料を使わない新エネルギーの活用。
平成16年度特許庁任期付職員(特許審査官補)採用試験(化学)
【技術用語解説】
【問】ルイス(Lewis)酸・塩基
【解】酸は水素イオンを放出するものとの定義もある。が、もっと一般的な酸を定義するため電子を受け取るものとしたものをルイス酸という。塩基は酸の反応相手。
【問】導電性高分子
【解】高分子のうち炭素の二重結合が共役したもの。非局在化した電子があるため伝導性を示す。リチウム電池などで応用されている。
【問】フォトレジスト材料
【解】半導体製造に用いる。光を当てると固まる性質の材料。回路パターンを光で書き込む。パターン以外のレジストを薬品で除去する。それにより出来た微細な溝に金属回路を作る。光をあてた場所だけが溶けるレジストもある。
【専門技術論文】
【問】1.燃料電池の実用化・製品化が注目される昨今、この燃料電池は社会的にいかなる意味において期待される技術であるのか、その原理を簡単に説明した上で、技術的観点から記せ。
【解】エタノールまたは液体水素から取り出した水素と空気中の酸素を反応させて電気をうみだす電池。水の電気分解の逆反応を利用している。つまり排出物が水だけというクリーンエネルギー。石油を消費しない新エネルギーでもある。
【問】2.元素の化学的性質については原子番号に基く周期律が成り立つことから、原子内の電子配置から元素の化学的性質を説明することができる。 (1)元素の化学的性質は何によって決まるかを、原子内電子配置の面から説明せよ。 (2)アルカリ金属元素は、イオン化エネルギーは小さくて陽イオンになりやすく、ハロゲン元素は電子親和力が大きく陰イオンになりやすいことを、原子内電子配置の観点(3)電気陰性度と周期律表中の元素の配置位置との関係を、原子内電子配置の観点から説明せよ。
【解】最外殻電子軌道が完全にうまった状態が安定である。そうなるため足りない電子を引き寄せたり、余った電子を与える方向に電子は動き、反応性が決まる。
【問】3.理想気体と実在気体について、以下の問いに答えよ。(1)1モルの気体についてのvan der Waalsの状態方程式は、(P+a/V2)(V-b)=RTである。この式は、理想気体の状態方程式(1モルの気体については、PV=RT)を補正したものであるが、式中のa/V2,bの意味をそれぞれ説明せよ。(2)実在の気体を理想気体の状態に近づけるためには、どのようにすればよいか(理想気体の状態に近づく理由も説明せよ)。(3)実在の気体は理想気体よりも圧縮しやすいと考えられるか、それとも圧縮しにくいと考えられるか(圧縮の程度に応じて説明せよ)。
【解】理想気体と実在気体の違いは、分子の大きさと分子の相互作用。分子同士が引き合う場合、圧縮しやすいが、分子の大きさが問題になるほど圧縮すると斥力が働き、圧縮しにくい。低圧、高温では理想気体に近付く。
平成17年度特許庁任期付職員(特許審査官補)採用試験(化学)
【技術用語解説】
【問】スパッタ蒸着
【解】真空中で電極間にプラズマを発生させる。プラズマによって加速したアルゴン原子を金属ターゲットに衝突させる。その金属表面から飛び出した金属原子を堆積させることで金属や酸化物の薄膜を作る手法。
【問】標準酸化還元電位
【解】溶液中の金属イオンが溶けたり、析出したりする時の電位。卑な金属は低い電位で析出する。つまり陽イオンが還元されて金属になる。金属以外の反応でも、その基準を用いる。水素の酸化還元反応との比較でまとめた値を用いることが多い。
【問】強誘電体材料
【解】電界により分極し、電界を取り除いても分極を保持する性質の材料。Pb(Zr,Ti)O3に代表されるペロブスカイト構造の酸化物強誘電体の研究例が多い。結晶格子中のスイッチング原子の安定な位置が二つあり、それによって分極が保持される。
【問】14Cを測定することにより昔の物の年代測定が行える原理について説明せよ。2.Siが半導体であると言われる理由について、その電子配置から論ぜよ。
C14は半減期がおよそ5000年。生物中の含まれる炭素にはC14の割合は一定量だが、死後は徐々に減っていく。そのときの減少の割合によって、どのくらい古いものか判断できる。8分の1なら(1/2)の3乗で15000年前。
これでは、受からんだろうなあ。だれか、模範解答を教えてくだされ。