他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」に対する規制強化は、世界的な潮流である。対策を加速させたい

 受動喫煙との関連が指摘される疾患には、肺がんや心筋梗塞、脳卒中などが挙げられる。世界保健機関(WHO)の報告によると、世界で毎年60万人が受動喫煙により死亡している。

 厚生労働省の研究班の推計では、国内の死亡者も年間1万5000人に上る。交通事故による死者数の3倍を超える。推計の手法には異論もあるものの、軽視できない健康被害が生じていることは間違いあるまい。

 健康増進法は、病院や官公庁、飲食店など、多数の人が出入りする場所では管理者が防止措置を講じるよう規定している。労働安全衛生法でも、職場での対策を事業主に求めている。

 だが、いずれも努力義務のため、徹底されていない面もある。厚労省は、公共の場所について、「原則として全面禁煙であるべきだ」と通知しているが、実際には喫煙室の設置といった分煙対策にとどまるケースが多い。

 職場や飲食店では、非喫煙者の4割近くが受動喫煙を強いられているのが実情だ。

 海外では約50か国が、飲食店やバーを含めた公共の場所のすべてで、屋内全面禁煙とする法律を整備している。屋外でも競技場などで規制を設ける国は多い。

 2020年東京五輪・パラリンピックを控える日本にとって、世界標準との差を縮めるための取り組みが急務である。

 国際オリンピック委員会(IOC)とWHOは、「たばこのないオリンピック」を共同で推進する。近年、日本以外の五輪開催地と開催予定地は、罰則を伴う受動喫煙防止策を講じている。

 政府は、東京五輪・パラリンピックの基本方針に受動喫煙対策の強化を掲げ、法整備も含めて具体策を検討中だ。実効性ある防止策が求められる。

 客離れを危惧する飲食業界などでは、対策強化への反発が強い。罰則付きの受動喫煙防止条例を制定している神奈川県や兵庫県でも、小規模飲食店などについては例外措置を設けている。

 一律的な規制には、困難が伴うことを示している。

 喫煙者の権利を主張する人たちもいる。ただ、非喫煙者の健康を犠牲にしてはならない

 より根本的な対策である喫煙率の引き下げにも、政府は真摯に取り組む必要がある

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受動喫煙対策に消極的だったマスゾエ都知事が辞任しましたから、ここがチャンスと思ったのかもしれません。とてもよいことです。マスコミが一大禁煙キャンペーンをしてくれれば、事態も変わるからです。

それゆえ、今回の都知事選には、都内の飲食店の完全禁煙化を公約にする候補が現れることを切望してやみません。

たとえスモーカー候補でも、それくらいはできるでしょう。実際、それをやれば相当な支持を集めるはずです。何せ有権者の7割以上がタバコを吸わない時代なのですから。