もはや中村吉右衛門劇団にはなくてはならない立女形・中村芝雀丈に、毎日新聞がインタビューをしています。記録しておきましょう。
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Interview:中村芝雀 大役「お谷」に初挑戦 「伊賀越道中双六」国立劇場で来月
毎日新聞 2014年11月26日 東京夕刊
歌舞伎女形として毎月のように大役を演じている。遊女、芸者、絵師の女房、大名の側室……。6歳で初舞台を踏み、芸歴は50年を超す。今年三回忌を迎えた名女形、中村雀右衛門の次男である。
「父の指導も、意見もなくなった今は、よほど自分がしっかりしなければいけないと思います」
近年は中村吉右衛門の相手役をつとめる機会が多い。「播磨屋のおにいさん(吉右衛門)に教えていただきながら、一歩一歩進んでいくしかありません」と謙虚に語る。
12月はその吉右衛門と東京・国立劇場で通し狂言「伊賀越道中双六」に出演し、ヒロインのお谷に初挑戦する。剣豪荒木又右衛門の「伊賀上野の仇(あだ)討ち」が題材。お谷は吉右衛門演じる主人公唐木政右衛門の妻である。
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お谷の父で上杉家重臣の和田行家が同家中の沢井股五郎に殺される。政右衛門は行家の子息志津馬の敵討ちの助太刀をするため、行家の許しを得ずに夫婦になったお谷を離縁する。
一番の話題が、名場面の誉れ高い「岡崎」が44年ぶりに上演されること。政右衛門と別れ、雪の中を乳飲み子を抱えてさまようお谷は、偶然に政右衛門が身を寄せる幸兵衛の家にたどり着く。政右衛門は自身の正体を隠すため、お谷を追い払い、わが子の命を奪う。
政右衛門、お谷の夫婦愛と悲劇が描かれる。出演者全員が初役。記憶にないものを作る過程には大変さと楽しさの両方がある。
「子を殺されたお谷の嘆きから、そこまでして敵討ちをしなければならない政右衛門の苦悩も浮かびあがる。難しい役です」
お谷は政右衛門が駆け落ちまでして一緒になるような魅力的な女性だ。
「耐える役ですが、人をひきつける風情も必要です」
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父というよりは師の側面が強かった雀右衛門からは「役の気持ちを大切にする」ことを繰り返し教えられた。
「演じる役の性根をつかんで表現しなければならないということです。台本を読み込み、お稽古(けいこ)を重ねる。そうしているうちに少しずつできあがっていく気がいたします」
いずれは雀右衛門を継ぐ立場にある。「代々の雀右衛門に恥じないように修業を積んでいかなくてはと感じております。『芸は好きでなくてはいけない』と父が申しておりました。私も舞台に立つと演じることの楽しさを感じます」
12月3~26日。問い合わせは03・3265・7411。【小玉祥子】
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芝雀丈は、今月も歌舞伎座の昼の部『井伊大老』で、吉右衛門丈演じる井伊直弼の側室・お静の方を演じていました。貧乏英語塾長も、この月曜日に見てきました。何ともいえない愛嬌と風情のある愛人を演じていて、見ていてとても清々しく、その後の悲劇を盛り上げる重要な役目を立派に果たしておられました。
ここ数年の丈の充実ぶりは特筆に価すべきもので、いつ五代目雀右衛門になってもおかしくありません。ファンとしては、一日も早い襲名を望む次第です。
来月の国立劇場も、楽しみにしています。「京屋!」とたくさんのかけ声を送らせてもらうことにいたしましょう。
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