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太陽光発電

2016-07-13 06:20:22 | 日記

我が国では戸建住宅の屋根の上のソーラーパネルが増えて来たのが目につきますが、まだ、太陽光発電ですべての電力需要に応じうるとは思われていないようです。しかし太陽電池の光エネルギー変換効率は近年格段に向上し、価格も他の発電手段と同等か、さらに下回ってきました。

太陽電池は電気を蓄える蓄電池ではなく、光エネルギー電力に変える発電機です。基本原理は1839年に発見されましたが、発電が可能となったのは1884年アメリカチャールズ・フレッツが、半導体性のセレンと極めて薄いの膜を接合した電池からです。変換効率はわずか1%でしたが、この発明は後にセレン光電池として、1960年代までカメラ露出計などに広く応用されました。

電力機器としては、1954年ベル研究所によって開発された結晶シリコン電池が最初で、変換効率は6%、当初は通信用・宇宙用が主な用途でした。世界最初の人工衛星スプートニク1号は一次電池を用いて21日の寿命でしたが、太陽電池を用いたヴァンガード1号では6年以上作動しました。

太陽電池は交換や充電が不要なので、電卓腕時計街路灯などに用いられ、電力供給が難しい海洋や山岳地帯の観測機器、人工衛星宇宙ステーションで使われています。

日本では1960年代に量産が開始されましたが、電源としての本格的な開発が始まったのは1974年石油ショック以降です。生産量は2010年時点で、開発当初の数十億倍(23GWp/年)に増えていて、変換効率が40%を超える化合物多接合型太陽電池も開発されました。

現在の一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造を持ち、電子に光のエネルギーを吸収させ、半導体の性質を利用して、エネルギーを持った電子を直接的に電力として取り出します。

シリコン電池は、結晶シリコンアモルファスシリコンに大別できます。結晶シリコンは光吸収係数が低く、実用的な吸収量を得るには最低200μmのシリコン層が必要とされてきましたが、近年は数 μm~50 μmと薄く薄膜太陽電池に分類できるものもあります。

結晶の粒径が数mm程度の多結晶シリコンを利用した太陽電池は、他のシリコン半導体素子の製造過程で生じた端材や、オフグレード品のシリコン原料を利用して製造できるので、単結晶シリコンに比べると変換効率は落ちますが、コストと性能のバランスの良さから現在の主流になっています。

結晶シリコン電池は70℃になると基準温度の25℃に比べて出力が2割低下します。アモルファスシリコンは温度による効率低下が少なく、結晶シリコンと積層すると変換効率を単結晶シリコン並の20%前後に保ちつつ、70℃でも1割程度の出力低下に抑えることが出来ます。 

球状シリコン電池は、直径1mm程度の球状シリコン粒子と、集光能力を上げるための電極を兼ねた直径2~3mmの凹面鏡を組み合わせたものです。結晶シリコン型の1/5程度のシリコン使用量で、アモルファスシリコンよりも高い変換効率が期待でき2007年から日本企業が量産を開始しています。 

化合物系InGaAs電池はシャープが開発しました。InGaAsインジウムガリウムヒ素)を用いた3層の結晶構造をもち、2009年10月現在、世界最高の35.8%の変換効率をもちますが、毒性のあるインジウムを用いておりコストも高いので、用途は宇宙用に限られます。

CIS系(カルコパイライト系)電池は、CuInGaAlSeSなどからなる化合物を用います。製造法や材料のバリエーションが豊富で、低コスト品から高性能品まで対応できます。2010年に産業技術総合研究所が開発したCIGS薄膜型太陽電池は、19.4%の変換効率を実現しました。 

直近で実現しそうな技術のうち、有機薄膜電池は最も安価大量に太陽光発電が可能な方式で、高速輪転機印刷ができるため、太陽光発電コストを1/10に押し下げる効果が期待されます。量子効果を用いた第三世代の量子ドット型太陽電池が検討されていて、変換効率の理論限界値は60%以上になります。 

我が国の太陽光発電は2005年度の123万メガワット時から、2014年度には2,869万メガワット時に増えました。再生可能エネルギーで作った電力を、最長20年間電力会社が買い取る固定価格買い取り制度が普及に貢献しています。買い取り価格は毎年見直され、企業向けの場合制度発足時の2012年7月の1キロワット時40円から、16年度は24円に下がりました。

電力会社の送電網が利用できる場合、太陽電池は連系して利用します。発電量が設置場所での利用量を上回る分は電力会社が買い取り、夜間や悪天候時に発電量が利用量を下回ると系統側から電力を供給します。

住宅での併設は稀ですが、災害等での停電時に昼間発電した電力を夜間に供給する家庭用大型蓄電池も存在します。今後普及が見込める電気自動車の大容量バッテリーは、停電時にバックアップ電源として使用することができます。

太陽光発電は運転に費用は不要で、保守管理費も少なく、コストは太陽電池の価格で決まります。送電網が未整備な途上国や、山地、離島、砂漠では、現段階でもすでに太陽光発電が最も安価な電源です。

太陽電池のモジュール価格は既に1ドル/Wpが達成されたと報告されていて、今後はコストが最も安い発電手段の一つになります。経年劣化による出力低下は20年で1割未満で、ソーラーパネルの税制面の法定耐用年数は17年と定められています。

太陽光のエネルギーは膨大で、地球に降り注ぐ太陽光エネルギー量173,000 TWの、僅か40 TWが光合成により有機物を生成しています。人間活動で消費するエネルギー量はさらに少なく14 TWです。

世界中のエネルギー需要に匹敵する発電量を太陽電池で得るための必要面積は、地球上の陸地の面積に比べれば極端に小さく、日照の良い北アフリカの乾燥気候では、地中海のコルシカ島とサルディニア島を併せたくらいの面積だと云う示唆もあります。


全世界、EU、ドイツの需要電力の発電に必要な太陽電池の必要面積

世界の太陽電池生産量は、指数関数的に増大し続けていて、2010年の生産量が2009年に比べ111%増加し、23.9GWpとなりました。生産量のシェアは、中国台湾合計59%、欧州13%、日本9%、北米5%、その他14%です。市場規模は2025年に太陽電池9兆円、構成機器全体で13兆円、システム構築市場が18兆円に達すると予測されています。

普及量世界一のドイツでは、国内の設備導入費用が2006年から5年間で半額以下になり、供給過剰と価格低下で破綻する企業も出ました。電力固定買い取り制度は普及に貢献しましたが、電気料金へ転嫁する消費者負担が問題となり、2012年買い取り価格を20 ~ 30%引き下げました。

日本は1970年代のオイルショックから太陽光発電の開発と普及に力を入れ、2000年までは日本一国の生産量や導入量が欧州全体より多く世界一で、2004年頃は世界の半分の太陽電池を生産していました。2010年には生産量の世界シェアは9%に落ちていますが、生産自体は2GWpを超えて増加しており、関連産業の規模は2011年度に1.5兆円に拡大しました。

2012年から公共産業向け設備への全量買取制度が導入されたため、我が国の太陽光発電導入は2013年から急激に進み、2015年末には30GWに達したとみられています。安定電力供給の電源構成上の観点からは、今後の日本国内の導入量は102GWp-202GWp程度が予想されています。

戸建住宅の53GWp、集合住宅22GWp、大型産業施設53GWp、公共施設14GWp、その他60GWpと予測され、太陽光発電の累計導入設備量が200GWpになれば日本の年間総発電量の20%に相当します。2015年の夏、沖縄電力を除く9電力の管内では、電力需要が最大となった時間帯に太陽光発電によって1千kW以上にあたる電気を供給し対応しました。

太陽光発電は、開発初期の予想を桁違いに超えて普及し続けています。必要経費は設備導入費用のみで維持費はかからず、変換効率の向上で発電コストは火力発電のコストを下回ることになりました。我が国にもソーラーパネルの設置可能な場所は、耕作放棄地を始めいくらでもあります。原発の必要性は、もはや、まったくないでしょう。

ソーラーパネルの生産を無分別に後追いした企業が、研究成果としての価格低減や生産過剰による品質の選別に負けて倒産したのは確かですし、ソーラーパネルが高価だった初期に電力固定買い取り制度に参入した利用者には、買い取り価格の低減が利益の予想に反したと云う指摘はありますが、このことが太陽電池の全世界的な有用性を貶めるものではありません。

COP21では世界中の国々が地球温暖化ガスのCO2削減を申し合わせましたが、化石燃料依存からの脱却は難かしいと見られていました。しかしCO2を出さない太陽光発電のコストが化石燃料利用のコストを下回ってきた結果、地球温暖化対策の達成には望みが見えたと云えるでしょう。

世界各地で、昨今、凄まじい異常気象が相次ぎ、大変な被害が続出していますが、地球温暖化の影響と考えられています。異常気象による被害額の大きさを考えれば、日進月歩の科学の進歩の成果である太陽光発電を活かさない手はありません。

 

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