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歳を取らないと分からないことが人生には沢山あります。若い方にも知っていただきたいことを書いています。

アマゾン熱帯雨林

2023-02-16 06:20:27 | 日記

アマゾン熱帯雨林は、南アメリカ大陸の大河アマゾン川流域に大きく広がる550万㎢におよぶ世界最大の熱帯雨林で、地球上の熱帯林の総面積のおよそ半分を占めます。

アマゾン熱帯雨林 NASAによる衛星写真

アマゾン川とそこに流れ込む1,000本以上の大小の支流は、地球上の全淡水量の15%にあたる700㎢もの巨大な水系を形づくっていて、豊かな水が森をもたらし、豊かな森が大地の潤いと川の流れを護ります。

アマゾン熱帯雨林

アマゾンの森は多種多様な生き物を育んでいて、昆虫が250万種、魚類が3,000種、植物は少なくとも4万種、427種の哺乳類、1,294種の鳥類、428種の両生類、378種の爬虫類が生息していて、アマゾンでしか見られない固有種も多く存在します。

コンゴウインコ

サシハリアリ

 タマリン

コバルトヤドクガエル 

植物は二酸化炭素を利用して光合成を行い酸素を放出しますが、アマゾンは二酸化炭素を吸い込む量が多いので「地球の肺」とも呼ばれてきました。しかし実際のアマゾン熱帯雨林は、若い樹木と比べて酸素を大量に消費する巨大な幹の大木や、有機物を分解する過程で酸素を消費する土壌の微生物によって、酸素と二酸化炭素の放出と消費が均衡しています。

熱帯雨林は1967年頃に比べて20%消失しました。2006年の国際連合食糧農業機関(FAO)の報告では、南アメリカでは毎年0.3%の森林が失われ、アマゾンの森林の伐採された土地の70%が放牧地や、飼料作物の生産など畜産に利用されてきました。

ブラジル国立宇宙研究所によってブラジル領の熱帯雨林で伐採の状況が調査されていますが、4,100,000 km²だった面積が2005年には3,403,000 km²にまで減少し、17.1%が失われていました。

熱帯雨林伐採

森林破壊によって引き起こされたと見られる木々の枯死が多発していますが、焼き畑や枯死が増えると二酸化炭素排出量が一気に増えて、二酸化炭素の排出量の方が多くなってしまいます。

アマゾンの森林の3分の2はブラジルに属しますが、同国で2019年1月に就任したボルソナーロ大統領は、大統領選でブラジル経済の回復に向けてアマゾンの開発を進める公約を掲げていて、この公約通りに環境規制を解除して監視体制を緩め、森林の伐採や農地の拡大、鉱物の採掘などが加速していると環境保護団体が指摘しています。

ブラジルでは1940年代に政府によるアマゾン開発計画が開始され、1960年代以降アマゾン縦断道路や横断道路が次々と建設されて、アマゾン開発が本格化しました。道路に沿ってまず木材伐採業者が入り、マホガニーやイペーなどの商業価値のある木を切り出し、有用でない木は焼き払い、裸地となった森の跡地に農地が次々と開かれていき、その多くが広大な放牧地を有する肉牛飼育牧場になりました。

1990年代以降のアマゾンは、輸出用大豆栽培のための大規模農業開発地へと変貌します。アマゾン南側のセラード地域で1970年代後半から始まった大豆開発が大成功で「大豆開発前線」がアマゾンへと北上したのです。
「法定アマゾン地域」は、農場面積のうち80%を森林として残さなければならないと法律が決めていますが、ほとんど守られていません。巨大水力発電所の建設や金鉱山開発などの国家規模のプロジェクトや、木材の不法伐採業者が森を破壊し、ガリンペイロと呼ばれる違法の金採掘者が水銀で川を汚すのも、深刻な問題となっています。

1988年に観測衛星を使った観測が始まって以降のブラジルのアマゾン森林累計消失面積は、2018年時点で日本の国土面積の1.1倍に相当する42万㎢で、消失率は8.4%に達しました。

大規模に森を失ったアマゾンは急速に乾燥化が進んでいます。熱帯林の土壌は緑を失えば、大地は強い日差しの下で急速に荒廃が進みます。アマゾンの環境に適応して進化してきた生き物たちは、森が破壊され、環境が変われば、生きてはいけません。水資源の枯渇は農業にとっても死活問題です。

アマゾン熱帯林の広がりは南米大陸の9か国におよびますが、アマゾン全体の面積の63%を占めている最大の保有国がブラジルです。ブラジル政府はアマゾンと、その周辺のセラード(熱帯草原)からアマゾンへと移り変わる部分を含めた地域を「法定アマゾン地域」と定め、開発と保護の両面の政策を進めてきました。法定アマゾン地域の面積は522万㎢で、ブラジルの国土面積の61%に及びます。

アマゾン熱帯林の保護は地球の種の多様性を守るだけでなく、地球規模の気候変動の抑止にもなります。また二酸化炭素排出権の国際取引市場では圧倒的に売り手の側に立つブラジルにとって、アマゾンの保護は経済的利益にも直接つながっています。

4月22日は「ブラジル発見の日」と呼ばれる記念日です。西暦1500年のこの日、のちにブラジルと名付けられる大地にポルトガル人がはじめて上陸しましたが、その大地には遥か以前から先住民族の暮らしがありました。

1500年当時の先住民族の人口は、ブラジル全土で300万人にのぼったと云われています。最近の研究では土壌に残された焼き畑などの人間活動の痕跡から推定して、アマゾン地域だけで800万人もの先住民族がいたという仮説も出されていて、アマゾンの森は森を壊さずに自然と共生して生きる知恵を持った人びとの活発な人間活動の場だったと云えるでしょう。

ブラジルの先住民族の人口は現在およそ90万人で、そのうち48%がアマゾンで暮らしています。国の人口に占める割合は0.47%と僅かですが、ブラジルの先住民族は305の民族、274の言語という民族的・文化的な広がりを持つ多様性に満ちた社会を形づくっています。
植民地化が進められた1500年以降、先住民族は入植者が持ち込んだ病気や入植者による虐殺で急速に人口を減らし、最も数が減少したとされる1957年には、全国でわずか7万人が残るにすぎませんでした。その後、先住民族全体の人口は回復に転じていますが、小さな民族や言語の消滅はいまも進行しています。

ブラジルでは1988年に軍事政権の時代が終わって民主主義の新憲法が公布され、ブラジルの先住民族が独自の固有文化を保持する権利が認められました。先住民族が居住と利用の権利を有する土地は、境界画定と呼ばれる認定作業によって決定されます。

先住民族保護区は全国に505か所あり、先住民族の57.7%がそこに暮らしていますが、保護区の総面積は国土面積の12.5%にあたる107㎢で、うち98.33%がアマゾンに集中しています。

2019年1月に発足したボルソナーロ政権はパリ協定からの離脱を示唆するとともに、アマゾンにおけるアグリビジネスの推進を重要政策の一つに挙げて更なる推進を表明、憲法で先住民族による土地の利用のみが認められている先住民族保護区内でも、農業や鉱山の大規模開発を認めていこうとして来ました。

ボルソナーロ政権は法務省の下部組織が担ってきた先住民族の人権保障プログラムを、女性・家族・人権省の下部組織へ格下げし、境界画定業務を、アグリビジネス振興を主要任務とする農牧供給省へ移管して、今後の動向が注目されていました。

2022年10月30日のブラジル大統領選挙で、2003年から2010年まで2期大統領を務めたルラ氏がボルソナーロ氏に僅差で勝利し、2023年1月大統領就任後に、アマゾンの森を護りぬくことを表明したのは明るいニュースです。

アマゾンの深い森にくらす先住民族は、森のめぐみと、森がはぐくむ川のめぐみを糧に生きています。畑で作物を育て、川で魚をとり、森のけものを狩る自給自足のくらし。森の中の焼畑では主食となるマンジオッカ(キャッサバイモ)が、家のすぐ裏の小さな畑ではサツマイモやカボチャなどがつくられます。

先住民族が行う伝統的焼畑は、じきに地面から木々が芽吹き始め、やがて森が再生する持続可能な知恵に満ちた農業です。シングー川流域の森を空から眺めると、川や湖の近くにぽつりぽつりと先住民族の村があるのが見えます。

村には円形の大きな広場を囲むようにして丸みのある家が丸く並び、その周囲には焼畑や、焼畑跡に再生した二次林が広がっています。ひとつの村の人口は最大でも500人ほど。妻の生家に夫が入って2〜4世代が同居するという女系家族の文化を多くの民族が持っています。

先住民族の生活の中で祭りはとても重要で、死者の魂を送る祭り、3日3晩歌い踊り続ける女たちの祭り、子どもから大人になる通過儀礼、リクガメの収穫祭などが行われます。祭りの日は、ボディペインティングと羽根飾りの正装で身を整えた人たちで、村は色鮮やかににぎわいます。

一方、先住民族社会と外の社会との間の人や物や情報の行き来が年々進みつつあり、都会の大学で学んで村に戻り、ITや法律などの知識を駆使して政府などとの交渉に臨む、新しい世代も少しずつ増えています。

アマゾン先住民の子供たち

彼ら新世代は先住民族としてのアイデンティティや、伝統文化と現代文明のいずれかを否定する立場には立たず、伝統文化に現代文明を加味したもう一つの途を、歩み出そうとしているのです。

 

2013年に始めた私のブログが満10年を越えました。これまで読んでいただいた多くの方々に、心から感謝申し上げます。

 

 


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グリーンランド

2023-02-02 06:22:51 | 日記

「グリーンランド」は北米大陸の北東、北極海と北大西洋の間にある世界最大、最北の島で、面積は213万800㎢と日本の面積の5.73倍あります。北西部はネアズ海峡を挟んで30 km離れたカナダのエルズミーア島に隣接し、南東300 kmにはデンマーク海峡を挟んでアイスランドがあります。かつてはデンマークの植民地でしたが、現在はデンマーク本土と対等でデンマーク王国を構成していて、独自の自治政府が置かれています。

グリーンランドの位置

全島の80%以上は氷床と万年雪に覆われ、巨大なフィヨルドが多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もあり、居住地は沿岸部に限られます。現在、予想よりも早い速度で氷床の融解が進んでいます。

デンマーク語ではグレーンランド(Grønland)と発音し「緑の島」を意味しますが、命名したのはノルウェー人のヴァイキング「赤毛のエイリーク」でした。エイリークはグリーンランドの前にアイスランドを発見しましたが、彼がアイスランドと命名したために入植希望者が現れず、グリーンランドは入植希望者が多数現れることを願って「緑の島」と名付けました。

グリーンランドの地形図
沿岸部を除く島の大部分が氷床に覆われる

気候区分は北極圏から準北極圏に属し、涼しい夏と寒い冬を特徴とします。地形はほぼ平坦で、沿岸部以外は氷床に覆われています。最北部は空気が乾燥しているため雪が降らず、氷に覆われてはいません。

最高峰はギュンビョルン山(Gunnbjørn)の3,694 m、資源は鉱物と海産物で、亜鉛、銅、鉄、氷晶石、石炭、モリブデン、金、プラチナ、ウランなどが採掘され、魚介類や海獣(アザラシ、クジラ)が捕獲されます。

氷床とクジラ

島の面積2,166,086㎢の81%を氷床が覆い、氷の厚さは沿岸近くで1,500 m、内陸部で3,000 mに達します。氷の重さで島の中央部の地面は海面より300 mも低く、氷は中央部から周囲の海岸へゆっくり流れています。海岸線の長さは39,330 kmに及び、赤道の長さに匹敵します。

町や居住地は氷の無い沿岸部に限られ島の西海岸に集中していて、北東部は世界最大の北東グリーンランド国立公園が占めています。

氷床の末端は溢流氷河を形成して海へ向けて長い時間をかけて移動しますが、溢流氷河の移動は融解が進むにつれ速度を増す傾向にあり、地球温暖化の影響で島内の氷床の融解が進んでいて、1,000年後にはグリーンランドから氷床が消えてしまうデータも公表されています。

気温上昇による氷の融解で氷床上に湖が一時的に形成されることがあり、その湖水は氷床の亀裂を伝って陸地との境界に流れ下り、海へ注ぎ込んでいると推測されます。

2021年8月14日3200m級の山頂で、上空に暖かい空気が流れ込んだことにより、1950年の記録開始以来初の降雨が観測されました。翌15日に失われた氷床は1日平均の7倍でした。

グリーンランドには4,000年前にシベリアから古エスキモーが移住したことが、近年のゲノム解析で明らかになりました。発見されたサッカク時代の遺跡のほとんどはディスコ湾の周辺で、次のドーセット文化は西海岸と東海岸の沿岸全体に広がっています。

数度にわたってアメリカインディアン近縁の人々の入植があり、その後にアイスランドのヴァイキングが入植、最後にカラーリットが入植しました。ヴァイキングの入植の先駆けとなったのは「赤毛のエイリーク」です。

982年頃殺人を犯したエイリークは3年間国外追放され、グリーンランドの海岸を探索し、アイスランドに戻った彼がグリーンランドについて伝え、985年に西海岸に2つ植民地が作られたうちの一つが現在の首都ヌークです。

首都ヌーク

ヴァイキングの入植地は15世紀頃に一旦すべて消滅し、住民はカラーリットのみとなって、西洋の歴史からグリーンランドは一時姿を消しました。16世紀半ばに再び発見されて、18世紀にゴットホープに植民地が作られ、キリスト教の布教も行われました。1917年以降はデンマークの支配が全島に及び、1953年に本国の県と同様の自治権を得ます。

1973年デンマークがヨーロッパ共同体(EC)へ加盟したため、ECの漁船操業と漁獲高に関する規定が適用され、グリーンランドの住民が反発して自治を要求、1979年5月に自治政府が発足してデンマークの自治領となりました。1985年グリーンランド政府はECを離脱します。

31人の一院制の議会は4年に一度、住民の直接選挙で選出されます。議院内閣制で自治政府首相が行政府を率い、デンマーク本土の議会にも2議席が割り当てられ、北欧理事会にも加盟しています。グリーンランドの住民はデンマークの国籍、市民権を持ち、デンマークがEUに加盟しているためEUの市民権も自動的に獲得します。

グリーンランドの防衛はデンマーク軍の担当で、グリーンランド住民に兵役義務はありません。グリーンランドは北大西洋条約機構の防衛対象地域です。

2019年8月アメリカ大統領ドナルド・トランプがグリーンランドの購入に興味を示しましたが、デンマークの首相メッテ・フレデリクセンは「売り物ではない」と拒否しました。1946年にも当時の大統領ハリー・S・トルーマンが、1億ドル相当の金での購入をデンマークに打診しています。

グリーンランド西北部のカーナークの未編入飛地には、アメリカ宇宙軍のチューレ空軍基地があり、弾道ミサイルの監視、人工衛星の追跡・管制などを行っています。

グリーンランドの地図

主要産業は漁業とその加工業で、輸出の87%を占め、エビがその半分以上で日本にも多く輸出されています。観光業は成長が期待できる産業に挙げられますが、観光に適する季節が限られ旅費がかさむのが難点です。

鉱物資源の探査も進行中で、多量の原油が埋蔵されている可能性が指摘されていて、鉱物資源開発の国営企業Nunamineralがコペンハーゲン市場に株式上場しています。デンマーク本国からの多額の助成金もグリーンランド経済を支えていて、2005年には約31億クローネに上りました。

島内外の重要な交通手段は航空機で、グリーンランドの主要空港はカンゲルルススアーク空港、最大の島外路線はコペンハーゲン線です。島内路線のハブ空港もカンゲルルススアークです。

沿岸フェリーによる片道80時間の往復路線が週1便ありますが、フィヨルドが非常に多く、島内の都市間を結ぶ陸路はありません。

グリーンランドの人口は約5万7千人で、現在、エスキモー系のカラーリットが88%を占め、残り12%がデンマーク人かカラーリットと北欧系の混血で、公用語はグリーンランド語、2009年にデンマーク語が公用語から外されましたが全人口の12%の母語で、ほぼすべての住民が理解できる言語となっています。

2009年6月21日それまで本国と二分していた地下資源収入について、7,500万デンマーク・クローネまでを自治政府の取り分とし、残りの超過分を本国と折半することになりました。

島内のほとんどの土地が厚い氷に覆われていて地下資源の採掘は困難ですが、レアアースは世界最大規模の鉱床であるクベーンフェルドがあり、中国企業の「盛和資源」がグリーンランドのレアアースの加工をすべて取り仕切っています。

グリーンランド氷床が抱える氷は、地球上の淡水の約10%に相当します。北極域の山岳氷河は世界の山岳氷河総面積の約60%を占めていますが、陸上にある氷河・氷床が小さくなれば、融水が海に流れ込んで海面が上昇します。

氷の融解が海に与える影響は海面上昇だけではなく、大量の淡水が海水の塩分濃度や温度を変化させ、極域や地球規模の海洋循環に深刻な影響を与えます。

氷河・氷床の表面は太陽からの光を高率に反射しますが、氷が失われれば反射率の低い海や陸が太陽から受け取るエネルギーが増えて、ますます地球温暖化が進みます。

グリーンランド氷床は氷の厚さが平均1,700m、その面積は日本国土の4.5倍に相当します。北極域は地球で最も気候変動が進み、グリーンランド氷床が2000年以降に毎年失っている氷は240 Gt(ギガトン)で、海面上昇に換算すると0.6mmに相当します。世界中の氷河氷床における氷減少の3分の1がグリーンランド氷床で起きていますが、すべてが融解すれば海面の上昇は7m以上になります。

一方、北極域の山岳氷河もグリーンランド氷床に匹敵する勢いで氷を失っていて、年間に失われる氷の量は海面上昇に換算して0.5mmです。グリーンランド氷床に対して面積で25%、体積では4%にも満たない北極域山岳氷河が、同じくらいの氷を失っているのです。

これら北極域における氷河・氷床の縮小は、主に2つの原因によります。まず気温の上昇によって雪や氷の融解量が増え、次に末端が海に流入する氷河(カービング氷河)では、その末端部が後退して氷が薄くなるとともに流動速度が上って、より多くの氷山を海に流し出しています。

グリーンランドの温暖化は1980年代以降、地球の他の地域に比較して約4倍の速さで進んでいます。グリーンランドの氷河の融解が記録的に進んだのは2019年で、5,320億tの水が溶けて流出し、世界の海洋の水位は2㎜以上上昇しました。

地球温暖化による氷床の融解

2021年のグリーンランド北部の気温は20℃を超え、例年の2倍以上の暑さとなりました。この気温上昇を受けてグリーンランドの氷床は7月29日以降、毎日80億tという大量の融解が続いて、例年の2倍に相当します。30日にはグリーンランド北東部のナーラリット・イナアット空港で観測史上最高の23.4℃を記録しました。

2021年の夏は例年に比べて涼しい状態で始まったため、2019年夏のような過去最大の融解量には達していませんが、より広いエリアが高温の影響を受けているのが特徴で、米フロリダ州が5㎝水に浸かる規模の量だといいます。

北極圏全体では世界平均の3倍の速度で温暖化が進んでいて、世界が今後炭素排出量を削減したとしても、1世紀の間にグリーンランドの氷床の融解で世界の海面が27cm上昇すると予想されています。酷暑の年に記録された速度で溶けた場合、78㎝上昇する可能性があります。

2022年7月の北部の気温は例年より6℃も高く15.56℃に達しました。7月中に毎日グリーンランドの氷河から海洋に、最大で60億tもの雪解け水が流れ込んでいて、ここ数十年の海面上昇の大部分は、グリーンランドでの氷の融解によるものです。

ちなみに北極海の海氷域面積も1979年以降長期的に減少傾向で、1979年から2021年までの年あたり8.9万㎢の減少は北海道の面積に匹敵しますが、北極海の氷が融けても、海に浮いていた氷が海水に戻るだけなので、海面の上昇はありません。

世界の海洋の水位はグリーンランド氷床が完全に融解すれば7.5 m上昇し、現在の標高7.5m以下の海や川に面した土地は、すべて海水に覆われることになります。2022年7月のグリーンランド氷床の融解量の急上昇から判断すると、地球温暖化防止のためにこれまで行ってきた努力では、地球温暖化の回帰不能点をすでに越えてしまったのではないかと懸念されます。

 

 


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