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トルコ・シリア大地震

2024-02-15 06:15:09 | 日記

ちょうど1年前の2023年2月にはトルコで大地震が起きて、今世紀に入って6番目に死者の多い自然災害となり、5万人以上の人びとが亡くなった報道に吃驚させられたものでした。

我が国と同じく環太平洋火山帯に属する国々が地震大国であることは承知していても、トルコが古来からの地震大国であることをご存じだった方は、そう、多くはないでしょう。2023年2月6日にトルコ南東部を震央として発生し、南隣のシリアにかけて大きな被害が出たトルコ地震は「トルコ・シリア大地震」と呼ばれます。

4時17分(日本時間10時17分)にトルコのガズィアンテプ県とカフラマンマラシュ県の境界付近を震央とするマグニチュード7.7 ~7.8の大きな地震が発生し、13時24分にカフラマンマラシュ県のエルビスタン地区でマグニチュード7.5~7.6の2回目の大きな地震が発生しました。

トルコの震源分布

トルコとシリアに甚大な被害が出て、3月20日での両国の死者数は56,000人以上になり、21世紀になって6番目に死者の多い地震となりました。

本震発生から1か月の間に余震が1万1020回起き、倒壊建物はトルコで21万4577棟、シリアで1万棟以上、トルコで1300万人以上、シリアでは880万人以上の人たちが避難生活者になり、被害額はトルコ国内だけで1000億ドルを超えると推定されています。

本震の震央はガズィアンテプ県ヌルダウから東へ26kmの地点で、震源の深さは17.9km、マグニチュード7.8で、トルコで起きた地震としては3万人の死者を出した1939年のエルジンジャン地震以来の大きなものでした。

地震計のデータ解析によると、震央から南西へ60kmにあるハタイ県のハッサでは震度7の激しい揺れ、震源近傍では震度6強の強い揺れが観測され、ギリシャ、ヨルダン、イラク、エジプト、ルーマニア、ジョージア、キプロスでも揺れが感じられました。

最大余震と思われた13時24分に発生した揺れの震央はカフラマンマラシュ県エキネジュの南南東4kmの地点で、震源の深さは10.0km、マグニチュード7.5と推定されました。

2月21日時点でM4以上の余震が290回観測されていますが、余震活動は本震付近(北東-南西方向断層、東アナトリア断層)、2度目の大きな揺れの西側(東西方向断層)、その揺れの東側(2つの断層が交わるエリア)を中心に活発で、このような鋭角に並ぶ断層帯で短期間に大きな地震が続けて起こることは珍しいとされています。

震源付近はアナトリアプレート、アラビアプレート、アフリカプレートの3つのプレートが重なり、有史以来度々大地震が発生しています。これら三つのプレート境界の活構造として、アナトリアプレートとアラビアプレートでは横ずれ境界の東アナトリア断層、アナトリアプレートとアフリカプレートでは沈み込み帯のキプロス弧、アフリカプレートとアラビアプレートでは拡大境界の死海リフトや紅海リフトなどが形成されています。

トルコ周辺のプレートや断層

今回の地震は、東アナトリア断層南西部、及びチャルダク断層に沿った震源断層が活動したと推定され、東アナトリア断層は完新世の平均変位速度が約11mm/年の左横ずれ断層で、トルコの災害緊急事態対策庁から地震のリスクが最も高いエリアであると見なされていて、2020年のエラズー地震など1998年からマグニチュード6以上の地震が4回起きています。

第一震(M7.7~7.8)は東アナトリア断層南西部に沿った地震で、アドゥヤマン県からハタイ県にかけて北東から南西走向に左横ずれの断層運動が生じました。最大変位量は7mですが、長さ300kmにわたって断層破壊を起こしました。

第二震(M7.5-7.7)はチャルダク断層に沿った地震で、カフラマンマラシュ県内で東西走向に左横ずれの断層運動が生じ、断層破壊長は100kmでしたが、最大変位量は10mにもなり、第一震と比べると短いのですが大きな断層破壊でした。

今回の地震の2回の大きな揺れは1つの地震とその余震ではなく、2つの活断層がずれ動いた「双子地震」であったと分析されています。

筑波大学八木勇治教授は世界各地で観測された地震計のデータを基に1回目の地震で南西からのびる東アナトリア断層帯が1分ほどかけて北東の方向へ地下の岩盤の破壊が拡大し、長さがおよそ50Kmで10mにわたり大きくずれ動いたとみられ、さらに2回目の地震で1回目の地震の震源から100kmほど北に離れて東西に走っている断層が長さ40km、10mにわたりずれ動いたものと分析しました。

地球観測衛星「だいち2号」が2月8日にレーダーで観測したデータの解析では、トルコの震源地の周辺の広い範囲にわたって10cm以上の地盤の変動が確認され、1回目に発生した地震で「東アナトリア断層」の周辺では最大で1mの地盤の変動が、さらに2回目の地震では震源地近くで最大で2m超えの地盤の変動が確認されました。

日本産業技術総合研究所の分析によると、活断層によって地表が最大9.1mずれたことが判明し、日本の観測史上で最大の内陸地震であった濃尾地震(M8.0)の8mを超え、水平方向のずれとして世界最大級でした。

3月20日現在でトルコ・シリア両国の死者数は56,000人以上になり、東北地方太平洋沖地震(19,761人)の3倍の死者数で、世界保健機関(WHO)による推計では最大2,300万人が被災したと見られています。

東京大学地震研究所の楠浩一教授は建物の被害について「低層から中層に至るまで多様な建物が倒壊している。中でも柱が瞬時に強度を失い、建物全体が真下に折り重なるように崩れ落ちるパンケーキクラッシュと呼ばれる非常に危険な壊れ方がいくつかの地点で起きた」と指摘し、地震工学者のムスタファ・エルディク教授は、こうした被害は建築物の設計や建設の質に問題があったことを示唆すると述べています。

パンケーキクラッシュ

本震の後に余震が頻発しており、壊れかけた家屋の中は危険で被災者は野宿を余儀なくされ、季節が冬のため夜間は気温が氷点下まで下がり、低体温症などの二次被害につながりました。

トルコのハタイ県にある被災建物

現地の映像で、周辺がまだ暗い中で建物が原形をとどめないほど大きく崩れる様子が確認され、鉄骨などもむき出しになっています。ローマ帝国時代に増築されたガズィアンテプ城の壁や監視塔が崩落し、17世紀に建てられたシルバニ・モスクが一部損壊、世界遺産のディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園の文化的景観やギョベクリ・テペも甚大な被害を被りました。

今回の地震ではトルコの建築ブームに際して、適切な建築基準が徹底されなかったことが死者の増大につながり、エルドアン大統領に対しても批判の声が上がっています。エルドアンが建築ブームを称賛してきたことは否めず、2023年2月10日にトルコの検察当局が「建設許可に違反し、倒壊の原因を作った責任者への措置が検討されている」として倒壊した建物に関連した捜査を始めました。

トルコでは建築基準法の施行が不十分で、1999年に発生した大地震を受けて導入された「建物の耐震性を高めるために課された特別税」が不適切な用途に使用されてきたと、エルドアンを批判する声が多く出ています。

クルム環境相は今回の地震を受けて17万戸以上を調べた結果「被災地域で2万4921戸の建物が倒壊ないし甚大な被害を受けた」と発表し、地元のデベロッパーが建築基準法を順守しないことが常態化し「腐敗した政治家や地方自治体の担当者がこうした違反に目をつむって賄賂を受け取っている」といった批判があります。

トルコ政府では2007年に建設業界の腐敗を一掃するため「新しく建築される建物には耐震性を持たせ、古い建造物の補強工事を進める」ことを目的とした新たな規制を導入し、2018年には「地震の揺れを吸収する鉄骨や鋼柱の使用の義務付け」を定め、建築基準関連法が強化されました。

ところが同じ2018年にトルコ政府は「既存の不適格な建築物件について有償で義務を免除する」仕組みを導入し、これに1000万人を超える人々が申請して、トルコ政府は「不動産税や登録費」として30億ドル(3980億円)以上を徴収、これがトルコ政府の収入になっていました。公式のデータではトルコ国内に存在している1300万戸のうち、半数以上の建造物が法令違反です。

2023年2月8日にトルコの最大野党である共和人民党のクルチダルオール党首は「この事態を招いた責任はエルドアン氏にある。与党は地震に対する備えを20年行ってこなかった」と批判しました。トルコだけで被害額は1千億ドル(13兆円)を超えると国連開発計画(UNDP)が発表しています。

シリアでは少なくとも3135人の死者、3000人の負傷者が確認され、死者のうち1435人は政府の支配下にある地域から、残り1700人は反体制派の支配下にある地域から報告されています。世界遺産の古代都市アレッポが甚大な被害を被っています。

1900年以降に起きた地震で、世界最大の地震は1960年にチリで起きたものです。記憶に新しい2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は、世界ランキングでは4位にあたります。

マグニチュードでのランキングでは、

 

順位      地震名             発生日     マグニチュード             

1  チリ地震(バルディビア地震)     1960年5月23日      9.5

2  アラスカ地震             1964年3月28日      9.2

3  スマトラ島沖地震           2004年12月26日      9.1

4  東北地方太平洋沖地震         2011年3月11日      9.0

   カムチャッカ地震           1952年11月5日      9.0

6  チリ地震(チリ中部地震)       2010年2月27日      8.8     

   エクアドル・コロンビア地震      1906年2月1日       8.8

8  アリューシャン地震(ラット諸島)   1965年2月4日       8.7

9  アッサム・チベット地震        1950年8月15日      8.6

   アリューシャン地震          2005年3月29日      8.6

   アッサム・チベット地震        2012年4月11日      8.6

   アリューシャン地震          1957年3月9日       8.6

   スマトラ沖地震(ニアス島沖地震)   2005年3月29日      8.6   

   スマトラ島沖地震           2012年4月11日      8.6

となります。

上記の地震はすべて環太平洋火山帯で起きており、わが国で太平洋を囲む地域にしか大きな地震は起こらないと考えている人が多いのは頷けます。トルコ・シリア大地震では震央が内陸部で、津波は10数cmに止まりました。

2024年の元旦能登半島の大地震では大きな余震が相次ぎ、海岸では4mに及ぶ土地の隆起がおきて、新年早々、我が国は大騒ぎになりましたが、まだ、全貌が把握し切れていません。

我が国の地震による住宅の被害想定では、建築基準法で厳しく規制された多くの建物は震度7でも倒壊しない筈で、年数の経った木造住宅の密集地域での火災による被害が大きいと想定されています。

建物が地震による倒壊に強いのは大変結構なのですが、我が国は周りを海に囲まれているため震源が海中だと、3・11で経験したような巨大津波による壊滅的被害が予想されます。

南海地震、東南海地震、東海地震と区別する場合と、この3つを南海地震として一括する呼び方がありますが、伊豆半島から九州の南端に至る広い範囲での大型海溝型地震はいずれ必ず発生するでしょう。

予想される南海地震の津波は広範囲に渡って最大30mの高さに達する見込みで、津波に対しては、まったく、対策が立っていない現況です。南海地震の発生までにどのくらいの年月が残されているかは分かりませんが、いずれ発生することは歴史が証明しています。

政府は世界中の国々にお金をばらまく前に、まず、自国民の命を守るために、国内に必要な経費を投入するのが先です。津波対策には経費も時間もかかりますが、震源の場所によって津波の到着までに多少の時間の余裕が生じる地域での我が国民の生存に役立つ、短時間で避難のできる構造物を構築しておくなど、何とか知恵を絞って、少しでも、救命に役立つ対策を実行に移しておくべきでしょう。

 

 

 

 

 

 

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