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2023年カナダとマウイの森林火災

2024-03-28 08:40:43 | 日記

2023年の世界の自然災害としては、2月にトルコで起きた大地震が今世紀に入って6番目に死者の多い自然災害となり5万人以上の人びとが亡くなった報道に驚かされましたが、これまでは無人の地域に留まっていた森林火災が、市街地に直接大きな被害を及ぼす大規模な火災になったのが2023年の特徴です。

8月に森林火災が広がったカナダ西部のブリティッシュコロンビア州では、18日の避難命令は1万5000世帯対象でしたが、19日夜までに計3万世帯が追加対象となり、これとは別の3万6000世帯にも避難勧告が出されました。

ボウイン・マー危機管理担当相は「避難命令にぜひとも従ってもらいたい。しばしば現場に戻って、頑なに残っている人たちに避難するよう、必死に説得することになる消防隊員にも生死にかかわる問題だ」と述べています。

シュスワップ地域では2件の大規模な火災が融合して市街地を壊滅し、州南部のケロウナ地域への移動が制限され、オカナガン湖にも周辺の火災の煙が立ち込めて、湖の近くの人口3万6000人のウェスト・ケロウナで住宅に被害が出ています。

ウェスト・ケロウナの山火事を、マクドゥーガル・クリークから眺める住民

北西部ノースウエスト準州の州都イエローナイフ近郊でも大規模な火災が続き、市民に18日中に立ち退くよう避難命令が出されました。人口約2万人のうち1万9000人が自動車か飛行機で避難したといいます。

カナダ森林火災センター(CIFFC)によると、2023年の史上最悪の山火事シーズンでは、少なくとも1000件の山火事が発生しています。専門家らは気候変動による暑くて乾燥した天候によって、山火事が拡大した可能性を指摘しました。酷暑が極端に長く続くと地面からは水分が奪われ、特に風が強ければ火災は驚くほどの速さで延焼していく可能性があります。

2023年夏のカナダの大規模森林火災では、7月上旬時点で900万ヘクタールの森林が焼け(北海道の面積は834万ヘクタール)、15万5000人以上の人々が避難しました。この森林火災の煙はカナダだけではなくアメリカにも広がり、シカゴは6月に世界最悪レベルの大気汚染に見舞われました。

米国立気象局はカナダの山火事の煙で、ニューヨーク州全域とイリノイ、インディアナ、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、バーモント、ワイオミングの各州の一部に大気汚染警報を発令、7000万人が警報の対象となりました。

カナダの森林火災の煙でスカイラインが霞むニューヨーク

(2023年6月撮影)

インディアナ、アイオワ、モンタナ、ニューヨーク、オハイオ、ペンシルベニアの各州の都市では、大気汚染度を示す大気質指数(AQI)が165を超え、市民にとって不健康と云われるレベルに達しました。
米国立気象局はノースカロライナ州ウィンストンセーラムやペンシルベニア州フィラデルフィアなどの都市に「コード・オレンジ」警報を発しましたが、これはAQIが101~150の不健康な汚染度を意味し、カナダの火災は米国の各州に酷い大気汚染をもたらしたのです。

カナダの一方、2023年8月8日ハワイのマウイ島の西部で起きた山火事は、ハリケーンに伴う強い風にあおられて急速に燃え広がり、かつてハワイ王国の首都であったラハイナの中心市街地が壊滅的被害を受けました。

全焼したラハイナでは少なくとも97名の命が失われて行方不明者の捜索が続けられ、火事で焼けた一帯は立ち入りが厳しく制限されて、住民のほとんどが自宅の状況を見に行くこともできていません。

ラハイナ付近で発生した森林火災による惨状

ハワイ王国時代の歴史を誇る古都のラハイナは2,200の建物を全焼し、9月20日現在で近代のアメリカで最も死者を多く出した森林火災になりました。火災の原因は調査中ですが、専門家は強風により垂れ下がった電線が発火の原因となった可能性を指摘しています。

ハワイ州ではここ数十年で森林火災による年間の焼失面積が4倍になっていて、気候変動による乾燥と高い気温、そして燃え広がりやすい外来種の雑草の拡散によって、火災の被害が大きくなっていると指摘されていました。火災発生時マウイ島の南西部は中程度から重度の干ばつです。

アメリカで起きた山火事としては過去100年で最悪の被害で、バイデン大統領はハワイ州の大規模災害を宣言しました。事前に強風が見込まれていたのですが、ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズ(HEI)は、強風による送電線切断に備えた計画停電には踏み切りませんでした。ビデオ、目撃者の証言、火災の進行状況、焼け残った電気機器のすべてが、HEIの機器がラハイナの町を破壊した炎の根源となった火花を発生させたことを示しています。

マウイ郡当局は「HEIが強風警報下で送電を続けたために火災が起きた」として8月24日電力会社を訴えましたが、会社側は火災が発生する数時間前の時点で送電を停止していたと反論しています。

2023年8月上旬は高気圧がハワイ諸島の北に停滞していました。この高気圧はハワイ諸島全域で安定した気圧配置を維持し、暖かい晴天をもたらしていました。ハリケーン・ドーラがカテゴリー4まで勢力を増し、高気圧と低気圧の間に大きな気圧差を生じる一因となった可能性があり、この気圧差は大きな貿易風が南西に移動するのを助け、島の上空に強い勾配風を形成したと思われます。

山火事自体にハリケーン・ドーラがどのような影響を与えたかは不明ですが、気象学者は暴風雨の中心が島々から1,100km以上離れたままであったこと、火災の発生時刻にマウイ島上空の低層の流れがわずかに増強しても比較的小さなサイズのままであったことから、8月7日から9日にかけての火災の発火にハリケーン・ドーラが大きく影響した説には反論しています。

国立気象局は8月6日までに東太平洋からやってくる非常に乾燥した空気を承知していました。8月7日から8日にかけては突風が強まり、非常に乾燥した状態になったと思われ、気圧の尾根は既存の気圧勾配と組み合わさって、日が進むにつれて非常に強い突風を発生させ、湿度は平年を大きく下回り、島々の地形の特徴が風の加速を強める効果があったと想定されます。

8月8日午前0時を過ぎたころ内陸部のマカワオ付近で最初の火災が発生しました。午前11時前に40km離れた西岸の町ラハイナで火災が発生、市街地だったため多くの犠牲者が出ました。正午には再び内陸部のクラで火災が発生、さらに午後6時になって別の場所でも火災が起きています。

マウイ島地図

ハワイ諸島では8月の最初の数日間に多数の小規模な山火事が発生していて、ホノルルの国立気象局はハワイ全島の風下地区に対し、8月7日午前0時に9日朝までの警報を発し「非常に乾燥した燃料と強い突風のような東風と低湿度が組み合わさると、火曜日の夜までは重大な火災気象状況が発生することになる」と強調していました。事実、マウイ島アップカントリー地区では、最高時速130kmの突風が吹いています。

8月4日6時1分マウイ島で最初の小規模火災が発生し、カフルイ空港に隣接する畑の30エーカーの山火事は、午後4時までに90%鎮圧されたと報告されましたが、フライトは8月11日まで延期されています。

8月8日マウイ島では強烈な風で、午後11時55分までに約30本の電柱が倒れたと報告され、少なくとも15の個別の停電が12,400人以上の人々に影響を与えました。マウイ西部のいくつかの地域で午後11時50分以後は電力が供給されておらず、切れた電線がビデオに撮影されていて、火災の発生要因とされています。

最初の大きな火災となった火事は8月8日午後7時22分にマウイ島北部クラのオリンダ・ロード近辺で報告され、近辺の住民への避難指示は午後10時43分に出されました。8月9日の時点で約544ヘクタールを焼き、544棟の建造物が被害を受け、その96%が住宅でした。

最も重大な火災は8日朝マウイ島西部のラハイナ付近で発火した山火事で始まりました。8月8日ラハイナの町に大きな直進風が来たことが影響を及ぼし始め、最速で時速130kmになった突風がラハイナの住宅や建物に被害をもたらし始め、その後町の北東側に近いラハイナルナ・ロード沿いで、電柱が折れるなどの被害が出ました。

午前1時37分1.2ヘクタール規模の山火事が発生し、数分後ラハイナ中級学校周辺を対象に避難指示が出されました。マウイ郡消防局の対応で火災は完全に鎮火したと発表されましたが、突風は町を襲い続けていて、午前10時30分に火は再び燃え上がってラハイナ・バイパスの閉鎖を余儀なくされ、ラハイナ西部の住民は避難指示を受けました。

ラハイナでは55億2千万ドル以上の損害が起きたとみられ、ムーディーズ・アナリティクスは全体で70億ドル(1兆190億円)の損失額を見積もっています。

火災が発生した後ハワイ州は、観光客に対してマウイ島西部への訪問自粛を要請しましたが、この呼びかけにも拘らず同島を訪問する人は絶えず、災害にはまったく無関心に泳ぐなど娯楽を楽しんでいる観光客に対し、地元住民の不満が高まりました。

ラハイナでは焼けた土地の所有者に不動産業者が購入を持ちかけているとのうわさが広まり、現地住民の中にはラハイナが、高層建物と高級ブランド店が海沿いに並ぶホノルルのワイキキになってしまうのを心配する人もいます。

2023年の世界の森林火災は、従来の人里離れた山林の火災では収まらず、近隣の都市を巻き込んだ大火災になったのが特徴です。この事実が世界的な気温の上昇と強い関係のあることは間違いなさそうですが、地球全体の気温の上昇は人類の生存を危うくするところまで進行するのでしょうか。

 

 

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