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歳を取らないと分からないことが人生には沢山あります。若い方にも知っていただきたいことを書いています。

NATO

2016-10-05 06:37:43 | 日記

北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization、NATO)の前身は、イギリス、フランスにベルギールクセンブルクオランダが参加した1948年のブリュッセル条約で、この条約の主な目的は第二次世界大戦後のドイツの再軍備に対する防衛体制の構築でした。

ところが東西冷戦が起こりヨーロッパが東西2つの陣営に分断されると、ドイツの復興の脅威よりもソビエトと東側諸国の脅威の方が大きくなって、強大な軍事力をもつアメリカを引き込んで新たな防衛策を模索することになりました。

ソビエトの脅威を感じていたアメリカもこれに応じ、この構想はアメリカ、カナダ、イギリスの間で急速に進められ、1949年4月4日ワシントンD.C.で締結された「北大西洋条約」によりNATOが発足しました。

NATOはソ連を中心とする共産圏に対抗する西側陣営の多国間軍事同盟で、加盟国は集団的安全保障体制構築に加えて、域内いずれかの国が攻撃された場合の集団的自衛権発動の義務を負いました。

第二次世界大戦後の西欧諸国では、徹底したドイツの脱工業化・非ナチ化が構想されていましたが、冷戦のはじまりとともに西ドイツの復興が求められ、1950年には新たな「ドイツ連邦軍」の創設とNATO加盟の準備が始まったのです。

フランスはドイツの再軍備とNATOへの加盟に反対しましたが、ドイツ連邦軍は1955年11月12日に誕生し、西ドイツはNATOに加盟しました。それに対抗してソ連を中心とする東側8か国は「ワルシャワ条約機構」を発足させ、ヨーロッパは2つの異なる軍事同盟によって完全に分れることになりました。

西欧諸国はアメリカの強い影響下に置かれることになりましたが、二度の世界大戦で国土が甚大な被害を受け植民地を失って弱体化したため、アメリカの強大な軍事力と核の抑止力のもとに、安定した経済成長を遂げる道を選んだのです。

アメリカは核兵器搭載可能の中距離弾道ミサイルを西欧諸国に配備し、アメリカ製兵器が各国に供給されました。アメリカやイギリスと外交歩調が合わないフランスは、1966年に軍事機構から離脱します。 

東西冷戦期間中を通じて西欧諸国は東欧の軍事的脅威から国を守ることに成功し、欧州を舞台とした第三次世界大戦は阻止されNATOが実戦を経験することはありませんでした。 

1989年米ソの「マルタ会談」で冷戦の終結が宣言され、それに続く東欧諸国の動乱と1991年ソ連崩壊で、NATOは創設時の目的を失いました。1991年に新たな戦略概念として周辺地域における紛争を対象にし、域外地域における紛争予防および危機管理に重点を移しました。

 また域外紛争に対応する「全欧州安保協力機構(OSCE)」、東欧諸国と軍事・安全保障について協議する「北大西洋協力評議会(NACC)」を発足させ、加盟国外でもNATOの軍事的抑止力を享受できることを確認しました。

1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナの内戦では、初めてこの項目が適用されて1995年に軍事介入し、国連による停戦監視に参加しました。続いて1999年コソボ紛争では、セルビアに対しNATO初の空爆を行いました。

ソ連の崩壊後東欧諸国が相次いでNATO加盟を申請し、1994年平和のためのパートナーシップ」によって東欧諸国との軍事協力が進展、1999年に3カ国、2004年に7カ国、2009年に2カ国が加盟するに至ります。バルト三国を除くと、ロシアベラルーシウクライナモルドバのほかの旧ワルシャワ条約機構加盟国はすべて西欧圏に引き込まれました。

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件は、テロの首謀者がアルカーイダだとアメリカが断定し、国連安保理決議でビン=ラーディンとアルカーイダの引渡しをアフガニスタンに要求しました。タリバン政権は引き渡しを拒否し、NATOは10月2日に北大西洋条約第5条を発動、アメリカ・イギリスフランスカナダドイツ等の諸国がタリバン攻撃を行いました。

アフガンに派遣された国際治安支援部隊(ISAF)はNATOの活動を国連が承認したもので、国連憲章第1章に基づく国連の平和維持軍ではなく、国連憲章第7章に基づき国連安保理が派遣を承認した有志国連合軍です。

2003年イラク戦争では、イラクが大量破壊兵器を所有しているとアメリカが主張しましたが、フランス、ドイツの強硬な反対で新たな安保理決議はなされないまま、アメリカとイギリス・オーストラリア・ポーランドなどの有志国連合軍がイラクへ侵攻しました。イラク攻撃の理由とされた大量破壊兵器をイラクは所有していませんでした。

アフガンへの軍事介入、イラクへの軍事介入は、ともにアメリカ主導の一方的なものとして様々な反対の意思が表明されています。現在もまだ両国内とも戦乱は収まっていませんが、各国の拠出兵力には限界がありNATOは新たな戦略の練り直しが必要とされています。

ロシアは2002年に設置されたNATOロシア理事会で準加盟国的存在になりましたが、2008年8月にグルジア紛争が勃発してNATOとロシアの関係は険悪化し、「新冷戦」と呼ばれるようになりました。ロシアは2008年8月の時点でNATOとの関係断絶を示唆し、2009年3月に関係を修復しています。

プーチン大統領は2008年のNATOとの会談で、旧ソ連領のウクライナのNATO参加に警告を発していました。親露派政権が崩壊し親欧米政権が誕生した2014年3月1日ロシア上院が、ウクライナの極右民族主義勢力からロシア系住民を保護する名目でクリミアへの軍事介入を承認、プーチン大統領は3月18日クリミアをロシア領に編入しました。ウクライナ東部のロシア系住民もロシアの庇護の下にウクライナからの分離独立を主張、ウクライナ政府と対立しています。

NATOがこれまでに直接軍事介入したのはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争コソボ紛争アフガニスタン紛争、リビア内戦です。リビア内戦では2011年3月17日にリビア上空の飛行禁止区域を設定した国連安保理決議1973を受けて、3月19日よりNATOが空爆を開始して反体制派のリビア国民評議会を支援、カダフィ政権打倒の要因の一つとなりました。

東西冷戦時代の日本のNATOとの関わりは比較的薄いものでしたが、在日米軍が使用する武器弾薬との互換性を確保するために、自衛隊ではNATO弾を使用しているほか、さまざまなNATO規格を採用しています。

2005年にNATO事務総長が訪日、2007年には安倍首相がNATO本部を訪問しており、NATO加盟主要国が日本との緊密な協力関係を構築することに賛意を表しました。これ以降自衛隊との非公式な協議が開催され、NATO国防大学の上級コースへ自衛官が留学したり、NATOの災害派遣演習へ自衛官がオブザーバーとして参加するなど、実務レベルでの提携が行われるようになりました。 

日本政府はアフガニスタンで国際治安支援部隊を展開するNATOに対し財政支援を行っていて、日本の財政支援は2008年10月2日現在、総額260万ドルに及んでいます。

2014年5月6日安倍首相の欧州歴訪の際NATO事務総長と会談、海賊対策のためのNATOの訓練に自衛隊が参加することや、国際平和協力活動に参加した経験を持つ日本政府の女性職員をNATO本部に派遣することなどを合意し、さらに日本とNATOとの間で具体的な協力項目を掲げた「国別パートナーシップ協力計画」に署名しました。

NATOには超国家的な中央機構は存在せず、各国政府の権利は平等とされています。加盟国の政府代表が参加する「北大西洋理事会」では、あらゆる議案が全会一致によって承認・決定されています。

NATOでは各加盟国の代表によって週一回行われる常設理事会と、年2回行われる外相・国防相などの閣僚クラスの理事会、さらに臨時で行われる首脳会合によって意思決定が行われます。この席上でNATO事務総長は理事会の実施する各種会議の議長を担い、事務総局が補佐します。

軍事関係の意思決定は理事会ではなく、各国の国防担当大臣により構成される「防衛計画委員会」によって行われます。また核問題に関しては専門の「核計画グループ」があり、核に関連する項目に関しては理事会と同等の権限が付与されています。

2016年5月12日NATOのミサイル防衛の一環として、ルーマニアで地上配備型の迎撃ミサイルの運用が始まったとロイター通信が伝えました。ミサイルは米国が配備し、イランのミサイル攻撃に対する欧州防衛のためとされていますが仮想敵国はロシアです。

米国は将来的に、中東をNATOの監視下に置く計画をもっているようで、オバマ大統領は4月20日サウジアラビアを訪問し、「湾岸協力議会」によるNATOとの連携を提案したと云います。ロシアからの軍事協力を得て勢力を拡大中のイランを抑え込むことと、またその背後のロシアを牽制するためです。オバマ大統領のこの提案には、キャメロン英首相、オランド仏大統領が賛成、メルケル独首相、レンツィ伊首相は検討が必要と回答したと云われます。

オバマ大統領は中東への軍隊の単独派遺は今後しない姿勢でいます。プーチン大統領もシリアに派遺していたロシア軍を撤退させました。今後米軍とロシア軍がそれぞれ単独で中東に軍を派遺する可能性は非常に少なく、その代わりに米国はNATO軍の派遺、ロシアはイランへの最新兵器の提供で対抗する構えです。

プーチン大統領はイランへの80億ドル(9,200億円)相当の武器の提供を決めたと云います。戦闘機スホイSu-30SMをはじめヘリコプターMiとMi-17、戦車T-90がロシアからイランに供給されることに決まった兵器です。米国はイスラエルの壊滅を狙うイランの脅威が増大するとして、年間31億ドル(3,565億円の)の軍事支援金をイスラエルに提供していましたが、37億ドル(4,255億円)へと上積みすると云います。 

一旦は解消したかに見えた東西冷戦は、完全復活を遂げたようです。第二次世界大戦後の世界各地での局地的な戦争は、これまですべてアメリカ、ロシアの両大国が絡んでいます。現在、ISISのテロが世界中でもっとも強い脅威となっていますが、復活した東西冷戦下ではシリア内戦でも米ソ間の非難の応酬で、和平へのはかばかしい進展を見ないようです。

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