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歳を取らないと分からないことが人生には沢山あります。若い方にも知っていただきたいことを書いています。

食料自給率

2016-01-20 06:37:01 | 日記

 食料自給率は、国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産かを表す指標です。品目別自給率は、などの品目別の自給率のことで、品目の重量を使います。国内の生産量割ることの国内の消費量になります。

カロリーベース自給率は、国民1人1日当たりの国内生産カロリーを国民1人1日当たりの供給カロリーで割ったものです。国民1人1日当たりの供給カロリーは国産供給カロリー、輸入供給カロリー、ロス廃棄カロリーの合計です。

生産額ベース自給率は、価格×生産量で個別の品目の生産額を算出し、合計して一国の食料生産額を求め、国内で消費する食料の総生産額で割ったものです。

農林水産省が推計した1965年から2007年までの主要国の食料自給率は、生産額ベースでオーストラリア128%、カナダ121%が高く、アメリカ92%、ドイツ、スイス、日本が70%です。カロリーベースでは、オーストラリア205%、カナダ258%、アメリカ127%、ドイツ92%、スイス57%、日本39%となります。

日本の2010年の品目別自給率は、穀類27%、いも類75%、豆類8%、野菜類81%、果実類38%、肉類56%、卵類96%、牛乳・乳製品67%、魚介類54%、砂糖類26%、油脂類13%でした。

2010年度の米、麦、とうもろこし等の穀類の国内の総需要は、3,476万トンで、国内生産は932万トンでした。総需要の内訳は飼料用が1,516万トンと非常に多く、加工用514万トン、純食料1,196万トンとなっています。大豆などの豆類では総需要404万トンに対し国内生産32万トン、需要の内訳は飼料用12万トン、加工用270万トン、純食料108万トンとなっていました。

魚介類の総合自給率は54%と報告されていますが、国産漁獲は531万トンでその内訳は沿岸漁業129万トン、沖合漁業236万トン、遠洋漁業48万トン、海面養殖111万トン、内水面漁業8万トンとなっており、自給率の1割弱は遠洋漁業によるものです。

各都道府県のカロリーベース自給率では、100%を超えるのは北海道と青森県、岩手県、秋田県、山形県のみです。北海道は192%と全国一を誇り、一番低い東京都は1%となります。

穀物自給率は28%で、米・小麦・トウモロコシ・大豆の4大穀物のうち、米以外はほぼ全量を輸入に頼っています。我が国のコメは生産過剰で輸入の必要はまったくありませんが、778%というコメの高関税を維持する代わりに、これまで毎年一定量の外米を無税で輸入するのを余儀なくされてきました。

コメは生産調整で減反政策がとられて休耕田が増え、小麦・大豆・トウモロコシには連作障害の問題があり、飼料用のコメの生産が勧められていますが、休耕田の利用はままなりません。  

肉類や卵などの国内自給は必ずしも低くないものの、畜産のために大量の穀物を輸入していて、油脂を生産する原料の輸入も大量です。国土が狭いための飼料自給率の低さが、畜産製品の自給率の低さに影響しています。畜産物・油脂のほかに、輸入に依存している割合が多い食料は小麦や砂糖です。 

一般の国民に知られていないのは、日本の農産物のうち高関税品目は1割に過ぎず、9割の品目は極めて低い関税のため高い対外開放度になっていて、カロリーベースの日本の食料市場の海外依存度が6割を占める理由になっていることです。また日本は低関税率のほかに、輸出補助金ゼロ、価格支持政策廃止と農産物の保護水準が低いことです。 

これに対し欧米諸国は、高関税、農家への直接支払い、輸出補助金など、価格支持政策の組み合わせによる政府からの保護で高自給率となっています。ちなみに、農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、フランスでは8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家は5割前後であるのに、日本では16% 前後(稲作は2割強)です。このことも知られていません。

食料自給率の計算の分母となる供給カロリーは2,573kcal(2005年)ですが、日本人が一日に摂取する平均カロリーは1,805kcalで、768kcalは食べることなく廃棄されたカロリー数です。日本の食料自給率が、国際的に本当に低いのかどうかには疑問の余地があります。

食料自給率の向上を求める主張では、カロリーベース自給率の39%が根拠に挙げられますが、生産額ベースではドイツ、スイスと並んで日本も70%の自給率があるのです。海外から安く手に入るのに、わざわざ、割高な農産物をつくるのはナンセンスだと云う意見もあります。

我が国の食料自給率に、今後、最も大きな影響を与えるものとして現在騒がれているのが、昨年秋大筋合意されたTPPです。TPP交渉は秘密交渉であるとして初めから終わりまで、その経過を国民に知らされることはありませんでした。その内容がまったく漏れて来なかったのですから、政府関係者ですら知らない人ばかりだった筈です。

農水省はTPPの大筋合意を受けて、多くの品目で影響は限定的だとしました。農林水産物の中でも特に影響が懸念されているのが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の5項目です。わが国ではこの5項目を重要項目と位置付け、将来にわたって生産が維持できるよう、交渉段階では関税撤廃の対象から除外するよう求めていたことだけは知らされています。

安倍総理は大筋合意を受けた記者会見で、5項目の重要品目を関税撤廃の例外とすることができたとした上で、国内農業への影響を最小限に抑えるため、政府内にすべての閣僚をメンバーとするTPP総合対策本部を設置する考えを示しました。

TPP協定は英語、スペイン語、フランス語を正文とし、日本語の正文はありません。TPPの大筋合意は2015年10月5日ですが、TPP協定全文の英語版は11月5日ニュージーランド政府のウェブサイトに公開されました。日本政府のTPP対策本部からTPP協定の暫定仮訳が公表されたのは、遅まきながら年を超えた平成28年1月7日付です。 

農水省や安倍首相のTPPの説明を通じて明らかになったたことは、日本の農業の現状維持にしか関心がないことです。敗戦直後の日本では復員軍人、引き揚げ者、疎開した人達などが一斉に農業に加入して、1947 年の農業就業者の割合は53.4%になり、戦後経済が復興すると1980年代の初期には10%台に低下しました。 

2009年の林業・水産業を除く日本の農業の国内総生産は、5兆3,490億円で全産業の1.13%です。就業人口は236万人で、建設業に次ぐ国内産業二位の3.7%ですが、農業従事者の平均年齢は65.8歳で,35歳未満が5%の数字が示すように後継者不足が明らかです。 

食の多様化が進んでコメの消費量は1963年の1,300万トンをピークに年々減少し、今や、800万トンほどになっています。大幅なコメの生産過剰により1971年度に始まった減反政策で、減反政策に参加した農家には10アール当たり15,000円の補助金を一律に支払ってきました。 

老齢化して自給自足の農業しかやっていない農家は、土地の税金が安く相続税がかからない農地を所有し続け、実際には耕作放棄された農地が年々増えています。一方で新規に農業への参入を目指す人々は、農業の実績がないと農地を取得できず、企業が効率化を目指して農地を集約しようとしても進みません。農家1戸当たりの農地面積は2007年でEUの9分の1,アメリカの99分の1,オーストラリアの1,862分の1で,耕作面積の極端な狭さが生産性を引き下げているのは明らかです。 

TPP協定の中で最も問題が深刻だと云われているのがISDS条項ですが、政府は農業以外の問題には触れません。農業だけを問題にするにしても、現状維持ができるかどうかだけが課題ではないでしょう。我が国の農業の仕組みを根本的に変えなければならない必要性は、農家でなくても切実に感じています。 

補助金をばらまくことでしか票田を確保できない政治家が、国に頼らない強い農家や食品事業者が増えるのを妨げていると云われるようでは困るのです。昔ながらの人手による、規模の小さい、重労働、低収入のイメージの農業では、若者が参入するのをためらうのは当たり前です。 

日本の農産業、食産業に足りないのは関税なしで買う自由、政府の指示なく作る自由、誰でも農業をする自由(新規参入の自由)の3つの自由だと云う指摘もあります。 

一般社会にITがこれだけ浸透しているのに、農業界にだけは導入されていません。これからの時代は人の職場が、ロボットに奪われると云われるほどITの活用は進んでいますが、農業のやり方が従来のままではIT を活用する余地も限られます。 

露地栽培を行うにしても耕作地を集約して耕作機械の導入を容易にするとか、ITを活用して気象変動に左右されず、台風の被害も受けない大規模な植物工場を稼働するとか、まったく新しい農業に変えていかなければ、日本の農業に未来はありません。 

農業を高収入のやり甲斐のある、余暇の楽しめる農業に変えてはじめて、若者の参入も望めます。日本の農業が根本から変われば、結果として食品自給率の向上も、国産農作物を世界へ安定供給する輸出産業の確立も望みうるでしょう。

 

 

 

 

 

 


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