生駒のアラ還の独り言

医療業界のあることないことを独断と偏見で綴る

コンビニ受診をめぐる低次元の議論

2010-06-15 17:46:29 | 日記

 時々拝見しているブログがあります。ブログ主は小児科開業医さんのようで、記事内容はなかなか洗練されており敬意を表しつつ拝見していました。
 しかし先だっての小児コンビニ受診記事や医師仲間のコメントだけは、少し違うんじゃないの と思いました。

 その議論の内容は大体次のようなものです。
・昼間は医療機関が込んでおり待ち時間が長いため、親は空いた夜間に受診したがる。こうした手前勝手な親には、啓蒙というよりも「調教」が必要
・医療機関の対策としては、啓蒙や調教のほかに、時間外診療として高額な自己負担を求める
・軽症患者が大半。軽症の場合はその場では一切処置をせず、明日診療時間内に再来するよう説得する。処置しないので次は来ないだろう
・小児科以外の医師が診ることにより、夜間に受診しても専門の小児科医に診てもらえないなら意味ない と思わせる
 こうした対応をすることにより、親はコンビニ受診を諦めるはず という議論が続いていました。
 確かに、医療の現場を理解することもなく、手前勝手なコンビニ受診やタクシー代わりの救急車利用を繰り返す患者が多いことも事実です。こうした患者に対しての医療現場のやりきれない怒りも理解できます。で、それらを踏まえたうえでの私の意見です。

 「夜間に特化した小児科診療所」の開設です。

 突飛な意見かもしれませんが、軽症・重症問わず患者は24時間発生するのですから、そうした医療ニーズに応えるのが筋なのではないでしょうか。夜間はやりたくない医師が多い現状を打開するためにも、透き間のニッチかもしれませんが成功間違いない夜間特化の開業はどうでしょうか。
 コンビニという表現が、どうでもよい大したことではない医療ニーズだと切って捨てるような意味合いになっていますが、それは違うと思います。
 嫌な客も変な客も、客は客です。どの業界にもこうした客は存在します。コンビニ受診患者も客の一人と認識すると俯瞰図も様相を異にします。
 いずれにしろ、サービスを提供する側が、上記のような「上から目線」で議論が盛り上がってもらっては困ります。「客商売」という原点が完璧に抜け落ちています。だからこうした低次元の議論に終始してしまったのでしょう。関係者は猛省を!。

 医師不足の現状からすればこんな話は突飛な話として無視されるわけですが、医療業界関係者は先入観にとらわれることなく、患者の目線で新境地を開拓して欲しいと思います。
 医師会や行政の縛りとかもあるようですが、特にしがらみの無い若い医師にはフロンティアスピリットをもって挑戦をお願いしたいものです。

 


3 コメント

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Unknown (dokokanoafo)
2010-06-16 19:03:32
夜の診療をする医師が多数出ることはそれ自体はいいことかもしれません。しかし、それは、昼間の医師をさらに減らすことになります。現状の医師数は昼間の医療を提供するだけのマンパワーしかないのです。
人間は毎日夜型の生活を続けることは生理学的にできません。不定期とか1週間だけとかいうなら可能かもしれませんが、医師にも家族がいます。子供もいるでしょう。また、医師一人で診療所を運営することはできません。
そういうわけで、せっかくの“ご提案”ではありますが、あまりに非現実的と思います。
なお、医療はサービス業であるべきではないと思います。もしサービス業であるならば、国民皆保険制度は直ちに廃止し、医療費は各医療施設・各医師が自由に決めることが出来るべきであります。そうであるならば、対価にみあう医療サービスを受けることができるでしょう(お金がないところには提供されないのがサービスです)。
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立ち位置で (生駒のアラ還)
2010-06-16 21:55:32
dokokanoafo様
 コメントありがとうございます。
仰ることはよく理解できます。ただ、立ち位置や視点が異なっているが故に、自ずと結論も異なってくるのだと思います。
 私は、医療はサービスを提供するビジネスだという大前提に立っています。サービス業でなければ一体何なのでしょう。役所や警察や自衛隊や裁判所ではありません。お互いに良い意味で切磋琢磨競い合い、サービスのレベルを上げてゆき、結果 患者・国民に満足してもらい、それに見合ったリターンも得ることができる。これこそサービス業の真髄ではないでしょうか。
 私が医師会批判を続けるのは、彼らが、ある時はビジネスと言い、ある時は非ビジネスと言う。その意図的な使い分けをする姑息さなのです。
 ご指摘の主旨は理解しますが、医療業界全体としては他業界に比してまだまだやれることが多くあると考えます。医師会中心に怠慢な部分が多かったと思います。
 今の医療業界を見ますと、自分たちこそ被害者だという論調が目立ちます。違うと思います。修羅場の勤務医はともかく、医師会が被害者意識を協調するのは何としても納得できません。
 こうした医師会の意向は放っといて、患者目線の開業医が一次救急を担って欲しい というのが私の願いです。
 すみません。コメントへの答えにはなっていませんが…。
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医療は「限られた資源」 (都筑てんが)
2010-06-23 23:20:02
ホテルより安い入院基本料、ラーメンより安い再診料。

水道トラブル5000円、トイレのトラブル8000円、命を救うための心臓マッサージの対価が1時間で2900円。

風俗の性感マッサージだったら、1時間で数万円ですよね?

そんな、赤字になって潰れて当然な診療報酬(値段は国が決めてる。医療者側は値段を決められない)で、高級ホテル並のサービスを要求される医療職。

圧倒的にマンパワー・リソース・キャパシティが足りないのに無茶な要求をされ、出来なければ「命を何だと思ってるんだ!」「仁術はどこへ行った!」「ヒポクラテスの誓いはどうした!」「ナイチンゲールの誓いはどうした!」「赤ひげ精神はどうした!」なとと根性論・精神論で罵られる。

ほとんど「奴隷」でしょ?

医療職になりたいと思う人間がいなくなっても不思議じゃないですよ。


>サービス業でなければ一体何なのでしょう。

社会的インフラですよ。

もっと言えば「限られた資源」です。

今の日本「嫌なら辞めろ、代わりはいくらでもいる」と言えるほどの医療従事者はいません。

トイレ以下、ラーメン以下の診療報酬で無理難題を要求されてる時点で、サービス業として成り立ってません。

「医師を増やせ、看護師を増やせ」といって、すぐに沸いてくるものでもありません。

今の医療は「限られた資源」ですよ。
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