関西の小さな町の小学校です。1学年1クラスしかありません。5年生のクラスは生徒数24名。
1ヶ月前から、放課後毎日3時間、全員でハンドベルの練習を積み重ねてきました。24日クリスマスイブに、公民館で開催されるクリスマスコンサートに参加します。ハンドベルで3曲演奏する予定です。
ところがです。この2~3日前から、インフルエンザで6人が相次いで入院してしまいました。重症のようで、コンサート当日の参加は絶望的です。残りの18人の生徒達は混乱しました。6人も欠けては音楽が成り立ちません。
「どないしょ。けど、どないしょうもないわな」
「そやな。24人で練習してきたんや。1人でもおらんようになったら無理やで」
「音が6つも出んようになるんやで。音楽として成りたたんやないか」
「客席からブーイングやで。恰好わるいで。俺 降りるわ」
「そやな。うちもギブアップや。出演断ろう。な、そうしよ。そのほうがええと思う」
そんな諦めムードが支配的になっていたとき、一人の女子生徒が言いました。
「なんでそんな話になるねん。うちは嫌やで。今まで24人全員で毎日毎日必死で練習してきたんやで。こないあっさり諦めてしもてええんか。うちは嫌やで。うち一人でも参加する」
長い沈黙が続きました………
「ほんま言うとな、俺もやりたいねん。6人抜けて格好悪い演奏になるかもしれんけど、諦めて逃げるよりはよっぽど格好ええと思う」
「うちもそう思う。ほんで入院してる6人にも顔立つしな。演奏会やめたゆうたら、連中の病気が悪化するかもしれへんし」
「言うとおりやな。うちもやる」 「俺も」 「うちも」 「おれも」 ………
「よっしゃ、おれに任せとけ。6人分を俺が引き取ったる。任せとけ」
「おまえな、そりゃ無理ゆうもんや。一人で7人分のベルは不可能ちゅうもんや。スーパーマンでも無理や。ドラえもんやったら可能かもしれんけどな」
「一人二役ゆう言葉を習うたわな。あれや あれで行こう。上手いのん6人で二役頼むわ。これは適材適所やな。ええ言葉やな」
それからは、半徹夜の猛稽古が続きました。
そして24日当日、クリスマスイブのコンサート。立ち見席の出るほどの大盛況。そのなかで、病室の6人の気持を背に18人は、細かいミスはあったもののほぼ完璧な演奏を終えました。盛大な拍手が鳴り止みませんでした。
客席へのお礼も兼ねて、担任の先生が挨拶に立ちました。
「病気の生徒が6人出ました。18人だけでは無理と思い生徒達は混乱しました。本日のコンサートを辞退しようとしたこともありました。私は何も言いませんでしたが、生徒達自身で切り開いてくれました。入院中の6人分をカバーしてくれました。入院中の6人も喜んでいると思います。一人二役を見事にやり遂げました。
生徒達みんな立派でした。本日はありがとうございました」
どこかの市議会さん。見習いたいものですね。
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