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建築設計者の日々是好日

建築家として感謝をもって生きる日々の記録

建築基本法;基準法ではありません...その上にあるべきものは

2009年04月02日 | 建築
建築基本法なるものが策定に向けて動き出しているらしい。おおざっぱに言えば、建築基準法があまりに細かく技術基準を規定しすぎて混乱状態になってしまっている状況に対し、もっと建築や建設行為にたいする基本的考え方、関係者の責務、理念等を明確にして、設計時の細かい技術基準は建築学会基準等によればいいという考え方のようだ。
これもいいと思うけれど、建築やその集積である都市が社会の文化資産であることを強く打ち出した方がいいと思う。
今の状況は利己主義が行き過ぎていると思う。経済自由主義というべきものが、長い歴史の中でつちかわれてきた都市文化を駆逐しているというのが私の感想だ。
世界遺産や名だたる観光地は長い歴史と文化を感じさせることで人々を魅了している。今の社会が作り出す都市は後世の世界遺産として残っているのかはなはだ疑問だ。
これは、政治や教育の問題として取り上げられていいと思うのだが、専門家のご意見はいかが?

真のプロフェッショナルの受難

2008年04月24日 | 建築
先日、長年設備の設計を担当していただいている事務所の所長と話をした
建築士法改正で、設備一級建築士が新設される
これに受からないと事実上仕事ができないか、どこかの下請けをするしかない
出身が電気であることと熟年なのでこれから勉強したとしても受かる見込みはないという

構造設計者もそうだが、資格だけでなく今までの実務を見てきてお任せできる人物かどうかで判断している
資格や所属だけではその人の力は判断できないのはどこの世界も同じだろう
設計は組織であるべきだと考えているが、最後は個人の力の結集が組織力となるのであり、力のない人間がいくら集まっても組織力は発揮されないことは明白だ

それにしても、耐震偽造事件以降の法改正の動きは何か変だ
現時点で頼りになる老練なプロフェッショナルを切り捨てるような結果になっている
実力のない資格だけの稚拙なえせプロフェッショナルばかりになっては、誰をたよりに設備設計をすればいいのかとまどうばかりだ
問題が社会に重大な影響を与えないうちに見直しを希望してやまない

さくらガーデン

2008年03月01日 | 建築
今日はある住宅雑誌の取材を受けた
特集でコミュニティ形成をテーマとした事例の紹介をするという
さくらガーデンの企画から竣工後の運営までをお話しした
ここで振り返ってみたい

きっかけ
新宿にあるリビングデザインセンターで私の主宰している「人間性豊かな集住体」研究会が、いろいろな集合住宅を調査研究していた
月島と多摩のコミュニティの比較検討などしていた
コミュニティを形成する手法としてコーポラティブハウスのワークショップ等をしていたが、実際につくりたいねと話をしていた
そのとき、H会員の義理の父上の畑にアパートを作る話があるという
メンバーの何人かが集まり検討が始まった

企画段階
はじめのころの計画は一棟の集合住宅の中に賃貸部分と分譲部分があり、売れなかったら全部賃貸でもという話をしていた
いろいろ事業収支をシュミレーションしたりしながら計画を進めてゆくうちに、定期借地権方式でやりたいということになった
そこで分譲部分と賃貸部分で敷地を分けることになり、測量して分筆した
これで地主側は純粋な賃貸住宅事業となり、分譲側は定期借地権方式のコーポラティブハウスとなった
コーポラティブハウスのコンセプトとして畑を生かした「農ある暮らし」を掲げ参加者を募集することになった

参加者募集へ
参加者の募集といっても、完全に孤立無援の組織だから広報手段もないし、お金もないので頭を使うしかなかった
メンバーにいろいろな分野の人間がいて、マスコミに取材してもらうことにしたり、リストラで廃止するという社宅でビラ配りをしたりした
参加者説明会は、はじめは150名くらい集まった
ここでは、コンセプトの「農ある暮らし」をテーマとしたコミュニティ形成、資金調達、定期借地契約、自由設計などについて説明、希望ヒアリングなどを行った
出入りはあったが、結局4家族が決まった
偶然だが研究会で話し合っていた「多世代が集まるコミュニティ」ができた

見積もりの苦労
見積もりでは施工会社の方々にずいぶんとご苦労をおかけした
募集の段階で分譲価格が不明では説明できないということで、概略設計をして数社に概算見積もりをお願いした
ここで、建築工事費のアウトラインを把握し、土地価格とあわせて分譲価格を設定した
次に概算見積もりで安くて工事内容にも定評のある会社を3社選定して、標準設計の見積もりをお願いした
そこで一番安かったM社に施工をお願いすることとした
参加者の方々はこれを基準に工事費を予定し、各自の希望を入れた詳細設計で再見積もりをしてもらい差額を精算する方式とした
この段階での見積もりは、スケルトンとインフィルに分類、さらに共用部分と専有部分、外構などに仕分けして数量を整理していただいた
これは、定期借地契約が建物譲渡特約付きでさらにコーポラティブハウスだからだ
詳しい説明は省くが、本当に大変だった

やっと工事着手
工事契約後は時間との闘いだった
そして、融資先の交渉
これは定期借地権のため市中銀行は融資してくれないことによる
困って大学のM先輩に相談したところ、コープ協議会のメンバーを紹介してくれ、その方が住宅金融公庫の調査役の方を紹介してくれて、その方のお知恵を拝借してコーポラティブ融資(15戸以上が条件だった)でなく一般のファミリー融資の重ね建てということで、融資のめどがついた
このとき、実ははじめて事業の見通しがついたのだった

工事開始
工事が始まっても、コーポラティブハウスの内装設計が決まっておらず、何度も参加者の方々のお宅に通ったり、4家族で集まっていただいたり
それでも、それぞれの方にインテリア設計担当が付き、全体像が固まってきた
この時点で、前に書いた変更見積もりをしてもらった
また、建築確認の申請上は軽微な変更ということで、出し直しはしなかった
横浜市の担当者の方にもいろいろご理解、ご協力をいただき感謝している
耐震偽造事件後の今だったらこんなスケジュールでは不可能だ!

竣工へ
賃貸棟との外観デザイン擦り合わせに、コーディネーターのフィーの一部を供出して材料の差額に当てたりしてなんとか格好がついてきた
コーポなので外観は不揃いだが、満足いただいた結果なのでよしとしたい
竣工パーティーは地主のご家族、賃貸の方々、近隣の方々もおいでいただき盛大にやった
われわれ、コーディネータ、設計者も感無量だった

自主管理へ
うれしい誤算は、完成後の環境の変化だ
コーポラティブハウスの参加者4家族だけでなく、賃貸棟の方々、地域の方々も巻き込んだコミュニティ形成が進められている
コーポラティブハウスの成功は「コンセプトの勝利」と喜んだが、それ以上にうれしい誤算だった
コーポの長老格のHさんや地主の方々のおかげと感謝している
今は地主の方がコーポの畑部分の隣に賃貸の方も使える畑を提供してくれていて、コーポと賃貸の方が参加するクラブを作っている
こんな展開になるとは誰が予想しただろう
一生懸命やったかいがあった
感謝感謝!


耐震補強研究

2008年02月22日 | 建築
昨日、耐震補強の研究発表会に参加した
今回で2回目だ
設計者が自分の設計事例について発表し、質疑応答する形式だ
今回は、小学校の耐震補強を構造と意匠のほどよいバランス感覚で美しくまとめた事例が中心だった

発表者の一人に、大学の後輩で家内と同じ会社の女性がいた
構造設計を専門とし、大学を卒業するとき賞をもらった秀才だ
話も簡潔で的確、要点をわかりやすくまとめていた

終わってから話しかけるとすぐにわかったらしく、いろいろ話をした
耐震補強は施主側でコスト指向が強く、デザイン的にいいものを実現するのはごくわずかとのこと
かくいう私も現在工場の耐震補強の計画中だ
工場は極端にコストオンリーの世界だ
それに操業を止めるわけにはいかないし、設備があるために理想的な補強もできないことがおおい
いろいろな意味で非常に難しい分野だ

後輩の設計した補強後の小学校の写真はとても美しく、大学のOB展に出品したらどうかとお誘いしたがご無沙汰してしまっているので申し訳ないとのこと
目立たない才能はそこここにあるものだ
世間はそのような才能に社会が支えられていることを忘れてはならない
マスコミの諸君、有名建築家ばかり追いかけないで、こんな才能の発掘も心がけてほしい

私の好きな街;イタリア編01

2008年01月26日 | 建築
私は、イタリアの山岳都市で見られる中世の都市国家の周密した街並が好きだ
そこは、都市形成の手法の宝庫
なかでも、サンジミニャーノは街並の美しさで群を抜いていると感じる
また、ベネチアのそこかしこにある路地も好き
もちろん、大運河の街並も好き
そして、ドウォオモの屋根に沈む太陽がかなでる光のセレナードに再訪の誓いをした